「ぎゅうぎゅう焼き」って料理をご存じでしょうか?なんでも、

これは肉や野菜をトレーや耐熱容器にぎっしり敷き詰めあとはオーブンで焼くだけのとてもシンプルな料理。作り方はいたって簡単なのにごちそうに見えるからおもてなしにもぴったり!

とのことで、人気料理だそうです。ところがこれ、今パクリ疑惑が持ち上がっているんですってね。

いろんな情報が飛び交ってますがワタクシなりに整理すると、

  • 翻訳家の村井理子さんがレシピを考案
  • 「ぎゅうぎゅう焼き」とネーミング
  • SNSで投稿したところ「村井さんちのぎゅうぎゅう焼き」と話題になる
  • 料理研究家の若山曜子さんが本を出すにあたり無断で「ぎゅうぎゅう焼き」というネーミングを利用し問題に発展

という流れらしいです。

この手の話って研修にもよくあるんですよね。たとえば、私が考案した「ストーリーテリングのPARLの法則」。まあ、本にも書いたしセミナーでも話しているんでいいっちゃいいんですが、ブログとかで紹介するときには出典を示してくれよ、と言いたくなります。

ただね、この手のパクリに対する対抗措置ってほとんどないんですよね。悪くいえば、「やったもん勝ち」。著作権というのは「表現したもの」を守るためのルールであって、アイデア自体は守られません。つまり、「どこそこのブログが私のネタをパクっている」と言っても、ちょっとでも表現が変わっていれば著作権を主張することはできません。

別の方法論としては、商標登録という手段があって、これならばネーミングそのものは守られます。たとえば上記の「ぎゅうぎゅう焼き」も、もしも村井さんが商標登録をしておけば、若山さんなり出版社なりに対して、「『ぎゅうぎゅう焼き』というネーミングの使用はまかりならん」と主張できるわけです。最悪裁判までいってもこれなら勝てますな。

でも実際のところは商標もいろいろとむずかしいところはあって、まず「登録できるのかどうか」という問題があります。あまりにも一般的な名前だと、識別性がないので誰かに属する商標と認められないという判断です。ま、そりゃそうですね。たとえば「企業研修」を誰かが商標登録して他の人が使えないなんてのはナンセンスだし。たとえば、当社のブランドの「マネー・カレッジ」もそのままだと商標登録できないだろうということで、加藤先生にお知恵を借りてちょっと工夫したことで無事商標がとれました。

ちなみに、ある会社さんはウェブサイトで「マネーカレッジ」と使われていますが、大丈夫なんでしょうかね?ビジネスが大きくなってブランドができた後で、当社が「マネーカレッジというのはうちの商標。利用はまかりならん」とクレームしたらダメージじゃないかと思うんですが、今から変更することを検討された方が良いんじゃないでしょうか。

ちなみに、くだんの「ぎゅうぎゅう焼き」は、識別性という観点ではいけそうな気がします。ただ、今度はコストの問題が出てきます。ザックリ言うと、出願料が12,000円。登録料が10年分で37,600円。けっして安い金額ではないですよね。あと、けっこうな手間と時間がかかるというのも問題で、慣れていないと出願書類は書き方が分からないものです。たとえば、出願時の12,000円は書類に印紙を貼ることで収めるわけですが、「特許印紙」を添付する必要があります。でも、これ知らなくって「収入印紙」を買ってしまったら、当然ダメ。改めて特許印紙を買い直しましたが、宙に浮いた12,000円の収入印紙をどう使うんだよ、とえらく往生した記憶があります。

なので、落としどころとしては、本当に大事なネーミングは商標登録しておいて、他の者に関しては「使ってもらってオッケー。ただ、出典標記だけはしてね」というスタンスになるかと思います。その上で自社のブランドを高めていって、「PARLの法則といえばあそこが本家本元だよね」という地位を獲得する、と。その意味では、パクリと共存するというラグジュアリー・ブランドの戦略もアリですね。

crib  photoPhoto by Jo@net

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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