「リーダーシップ」は研究対象になっている
「リーダーシップ」と聞くと様々なイメージが頭の中を駆けめぐるかと思いますが、MBAを始めとする経営学の分野ではこれが一つの学問体系として整理されています。もともとは、「リーダーとはこんなタイプの人!」という、リーダーが持って生まれた要素を研究するところから始まりましたが、時代の変遷とともにリーダーシップ論も進化してきて、「リーダーシップをとる人は、必ずしも持って生まれた要素だけではない」との考え方が現在は主流になっています。
また、一つのリーダーシップ論が生まれる際には、ビジネスを取り巻く環境に変化があることも見逃せません。たとえば、ジョン・コッター教授の「変革的リーダーシップ論」が提唱されたのは1988年。当時は日本企業が絶好調で、これに対する危機意識が米国内では深刻に議論されていました。産業界のみならず米国社会のあり方を包括的に批判した「ヤング・レポート」と呼ばれるものが発行されたのは1985年です。
そんな状況下、「リーダーは、これまでのビジネスを根底からひっくり返す(変革する)ことが求められるのではないか」との問題意識に基づいて、変革的リーダーシップ論が生まれてきたのです。この観点で言うと、コッター教授が後に企業変革をテーマとした「変革の8段階」を提唱したのは偶然ではありません。
リーダーシップ理論の発展
分類 | 前提 | 結論と代表的な理論 | 評価 |
---|---|---|---|
特性論 |
リーダーには、固有の性質(特性)があるはずだ |
下記の5つで説明できる。1.動機と意欲、2.他者を導き影響を与えようとする欲求、3.正直さと誠実さ、4.自信・知性、5.責任分野に関する深い専門知識 ・レヴィンのリーダーシップの3類型 (1939年) |
・状況要因を無視している。ある状況における「適切な行動」が他の状況においても適切とは限らない ・リーダーを後天的に育成することは出来ない、と言う結論になる |
行動論 |
・有能なリーダーには特有の共通する行動があるはずだ ・それをマスターすれば、リーダーは育成できる |
人間関係志向-タスク志向の2軸で整理。両方とも高いスコアを示すのが成果につながる ・オハイオ州立大の「配慮」と「構造作り」 (1950年) ・マネジリアル・グリッド (1964年) ・三隅二不二のPM理論 (1966年) |
・リーダーの行動パターンとパフォーマンスの間に一貫した関係を見いだせなかった ・リーダーシップを受け入れるフォロワーの存在が受動的な存在として捉えられていたことに理論的課題が残った |
コンティンジェンシー理論 |
適切な行動は状況に依存する |
・フィードラー理論 (1964年) ・パス-ゴール理論 (1971年) ・シチュエーショナル・リーダーシップ (1分間マネージャー) (1977年) |
おおむね受け入れられている |
相互作用論 |
リーダーシップをリーダー固有のアクションではなく、リーダーとフォロワーの相互作用と捉える |
・ブルームとイェットンのリーダー参加型理論 (1973年) ・ハウスとカヌンゴのカリスマ的リーダーシップ理論 (1978年) 〈・グリーンリーフのサーバント・リーダーシップ (1970年)〉 |
現在も議論中 |
変革的リーダーシップ論 |
市場の変化が激しく、複雑性を増す中で、企業には「変革」が必要とされる |
・ベニスの変革型リーダーシップ (1985年) ・ティシーの現状変革型リーダー (1986年) ・コッターの変革型リーダーシップ (1988年) ・ナナスのビジョナリー・リーダーシップ論 (1992年) |
現在も議論中 |