「発言点」が評価されるMBAのクラス
MBAのクラス「発言点」が評価の対象になるって聞いたことあるでしょうか?
そもそもの前提は、授業が一方通行のレクチャー形式ではなく、参加者からの発言が求められる「対話型」であるってこと。ただ、一口に「発言」と言っても、何でも良いから言えばいいわけではなく、他の学生にとって学びになるような「いいこと」を言うことが求められます。すなわち、いいクラスというのは講師のみでできるものではなく、学生の協力があって初めて成立するのだ、という思想がその背景にはあります。
実際、ハーバード・ビジネススクール(HBS)の講師養成(Faculty Development)部門である「C. Roland Christensen Center for Teaching and Learning」では、
Students and instructors are co-creators of class participation
と謳っています。
ちなみにHBSだと、この発言点が全評価の50%をしめる科目もあるそうで、それはそれで良し悪しがありそう。口が達者な人が、内容はないのに良いこと言ったフリをしてしまいそうで。
オンラインMBAでは書いたもので判断される
さて、一方で私が担当するマサチューセッツ大学のMBAクラス。こちらはオンラインで受講している方もいるため、発言点での評価はしていません。むしろ紙で書いたものが評価の対象になり、
- 「アサインメント」と呼ばれる毎週1回提出するA4用紙1枚の文書
- 「Exam」(テスト)と呼ばれる、科目の最後に提出するA4用紙4-5枚の文書
の二つ。評価のポイントも決まっていて、
- 学習性:予習やクラスへの参加から、自分なりの学びのポイントを抽出しているか
- 批評性:学びのポイントを抽出する際に、テキストやスライドの情報をうのみにすることなく、建設的な批判意識を持って精査しているか
- 整合性:学習した理論を実際の状況(ケースの中の状況)に当てはめる際に、状況にマッチした理論を選択しているか
- 実効性:学習体験を、自分自身のより良い行動に結び付けようとしているか
の4つの側面から10点満点でスコアをつけることになります。
意外とピンとこない実効性
ただね。この「実効性」というのがピンと来る人もいればピンとこない人もいるみたいなんですよ。たとえば、先週のアサインメントのお題は「社内政治」でした。
政治的な行動をとるかどうか、ジレンマを感じた状況を説明してください。実際には、どのように対処しましたか?振り返ってみて、同じ状況におかれたら同じ行動をとりますか?
というのが設問ですが、その「同じ状況におかれたら同じ行動をとりますか?」ってところで、
もし同じ状況におかれたら、今度はもっと周りの人としっかりとコミュニケーションをとるようにします
的なことを書いてくれる人がいるのですが、これって私にとっては「何も言っていない」って聞こえてしまうんですよね。
だって、「しっかりとコミュニケーションをとる」って、具体的な行動が思い浮かばないじゃないですか。そうすると、「結局この人は行動が変わらないだろうな」という判断になってしまって、「実効性」という観点からは評価が低くなってしまうんです。
頭でっかちでなく行動を意識したMBA
かつて哲学者の林竹二先生は、
学んだことのたった一つの証は変わることである
と言ったわけですが、まさにそれ。とくにMBAを学んでいると、「競争優位がどうで」、「コアコンピテンスは」みたいな専門用語で頭でっかちになってしまいがち。そうではなく、様々な理論をしっかりと行動に結び付けるのが重要なので、このような評価ポイントを設けているのです。
Photo by Baltic Development Forum
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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