「イノベーション」って言葉、ITなどの技術分野だけでなくビジネスの変革でも使われます。「誰に」、「何を」、「いくらで」売るのかの仕組みを変えることで、これまでにはない「儲けのしくみ」を作ろうというもの。
当社も、「イノベーション」と言うほど大げさではないのですが、ビジネスの拡張に取組中。
そんなときに参考になるのが、フランケンバーガー先生などのご著書、ビジネスモデル・ナビゲーターです。
イノベーションにフォーカスをあてたビジネスモデルの類型化
ビジネスモデルを扱った書籍は多数あれど、本書の特徴は「イノベーション」にフォーカスをあてているところにあります。
具体的には、様々な(後述するとおり、55類型も!)ビジネスモデルを「転用」、「組み合わせ」、「再利用」することで、ビジネスにイノベーションを起こせる、との発想です。
例えば、ネスプレッソ。
カプセル型の容器に入ったコーヒーをセットすれば、アッという間にエスプレッソができるというものですが、これは「ジレットモデル」(カミソリの替え刃で儲ける)の転用だとか。たしかに、本体を安く提供してカプセルの方で儲けるというのはその通り。しかも、一度ネスプレッソ本体を買った人は、それと互換性があるネスプレッソ専用カプセルを買うことになるわけで、「ロックイン」との組み合わせもされています。これこそが、ビジネスモデルのイノベーションである、と著者は説きます(42p)。
このような、ビジネスモデルのイノベーションを立体的に(時間軸と上述の組み合わせなどで整理)まとめたのが「路線図」と呼ばれる図で、出版社の照影者さんのHPからダウンロードもできるので、ご興味がある方はチェックしてはいかがでしょうか?
大企業の中でイノベーションを起こすための10の鉄則
さらに本書が親切なのは、大企業の中でイノベーションを起こすためのヒントをまとめてくれているところ。というのは、イノベーションの元になるアイデアって、最初は「何それ?」と否定的な反応を引きおこし、最終的なプロダクトにいたらないこともあるとか。これを乗り越えるための方法を「ビジネスモデルイノベーション10の鉄則」としてまとめてくれています。
- 経営トップの支援を得ること
- 組織横断チームで臨むこと
- 変化を受け入れ、他人の指摘を真摯に受け止めるべく、心の準備をしておくこと
- 55枚のビジネスモデルのパターンカードを使って社内の常識や業界の常識を乗り越えること
- オープンな文化を作ること
- 繰り返しの手法を使い、何度も何度もやり直すこと
- 自分たちのビジネスモデルの仮説にのめり込まないこと
- プロトタイプ手法でリスクを限定すること
- 新たなビジネスモデルがうまく成長するように必要な肉付けをしてやること
- 先頭に立て変革のプロセスを進めること
ビジネスモデル55類型
ビジネスモデル | 企業/商品/サービス例 |
1. Add On アドオン | ラインエアー、SAP、セガ |
2. Affiliate アフィリエイト | Cybererotica, CDナウ、アマゾン、ピンタレスト |
3. Aikido 合気道 | シックス・フラッグス、ザ・ボディショップ、スウォッチ、シルク・ドゥ・ソレイユ、任天堂 |
4. Auction オークション | イーベイ、ワインビッド、プライスライン、グーグル、ゾーパ、マイハンマー、イーランス |
5. Barter バーター | P&G、ペプシコ、ルフトハンザ航空、マグノリア・ホテルズ、ペイウィズアツイート |
6. Cash Machine キャッシュマシーン | アメリカン・エキスプレス、デル、アマゾン、ペイパル、ブラックソックス、グルーポン、マイファブ |
7. Cross-selling クロスセル | シェル、イケア、チボー、アルディ、サニフェア |
8. Crowdfunding クラウドファンディング | マリリオン、キャッサバ・フィルムズ、ディアスポラ、ブレインプール、ペブル・テクノロジー |
9. Crowdsourcing クラウドソーシング | スレッドレス、P&G、イノセンティブ、シスコシステムズ、マイファブ |
10. Customer Loyalty カスタマーロイヤルティ | スペリー&ハッチンソン、アメリカン航空、セーフウェイクラブカード、ペイバック |
11. Digitalization デジタル化 | シュピーゲル・オンライン等 |
12. Direct Selling 直販モデル | フォアベルク等 |
13. E-commerce Eコマース | デル、アマゾン等 |
14. Experience Selling 体験の販売 | ハーレーダビッドソン、イケア、トレーダージョーズ、スターバックス、スウォッチ、ネスレ・ネスプレッソ、レッドブル、バーンズ&ノーブル、ネスレ・スペシャル.T |
15. Flat Rate フラット料金 | スイス連邦鉄道、バッカルー・ビュッフェ、サンダルス・リゾーツ、ネットフリックス、ネクスト・イシュー・メディア |
16. Fractional Ownership 部分所有 | ハピマグ、ネットジェッツ等 |
17. Franching フランチャイズ | シンガー等 |
18. Freemium フリーミアム | ホットメール、サーベイモンスター等 |
19. From Push to Pull プル戦略への移行 | ザラ、トヨタ、デル、ゲベリット |
20. Guaranteed Availabity 稼働保証 | ネットジェッツ、PHHコーポレーション、IBM、ヒルティ等 |
21. Hidden Revenue 隠れた収益源 ※広告モデル |
ジェーシードゥコー等 |
22. Ingredient Branding 素材ブランディング | デュポン等 |
23. Integrator インテグレーター | カーネギー・スチール等 |
24. Layer Player 専門特化プレイヤー | デンネマイヤー |
25. Leverage Customer Data 顧客データ活用 | アマゾン、グーグル等 |
26. Licensing ライセンシング | アンハイザー・ブッシュ、IBM |
27. Lock-in ロックイン | ジレット、レゴ |
28. Long Tail ロングテール | アマゾン、イーベイ |
29. Make More of It 保有能力の活用 ※自社のノウハウやリソースを外部企業にも提供することで、本業に上乗せした売上を得る |
ポルシェ、フエスト・ダイダクティック |
30. Mass Customization マス・カスタマイゼーション | デル、リーバイス等 |
31. No Frills 格安製品 | フォード、アルディ等 |
32. Open Business オープンビジネス | バルブ、ABRIL Moda |
33. Open Source オープンソース | IBM、モジラ |
34. Orchestrator オーケストレーター バリューチェーンの中で自社の得意分野以外は専門サービス業者にアウトソースする。 |
P&G、利豊グループ |
35. Pay Per Use 従量課金 | ホットチョイス、アリー・ファイナンシャル等 |
36. Pay What You Want 賽銭方式 | One World Everybody Eats、ノイズトレード |
37. Peer to Peer 個人間取引 | イーベイ、クレイグリスト |
38. Performance Contracting 成果報酬型契約 | ロールス・ロイス、BASFコーティングス |
39. Razor and Blade サプライ品モデル | スタンダード石油、ジレット |
40. Rent Instead of Buy レンタルモデル | サンダース・システムカーレンタル、ゼロックス |
41. Revenue Sharing レベニューシェア | CDナウ、ハブページズ |
42. Reverse Engineering リバースエンジニアリング | バイエル、ペリカン |
43. Reverse Innovation リバースイノベーション | ロジテック、ハイアール |
44. Robin Hood ロビンフッド | アラビンド眼科病院、OLPC |
45. Self-searvice セルフサービス | マクドナルド、イケア |
46. Shop in Shop 店舗内出店 | ティム・ハートンズ、チボー |
47. Solution Provider ソリューションプロバイダー | ランタル・テキスタイル、ハイデルベルグ・プリンティング・マシーンズ |
48. Subscription サブスクリプション | ネットフリックス、ブラックソックス |
49. Supermarket スーパーマーケット | キング・カレン、メリルリンチ |
50. Target the Poor 低所得層ターゲット | グラミン銀行 |
51. Trash to Cash 廃品サイクル | デュアル・システム、フライターグ |
52. Two-sided Market 両面マーケット プラットフォームとして補完関係にある二つのグループが相互メリットのためにやりとりできるようにする |
ダイナースクラブ、ジェーシードゥコー |
53. Ultimate Luxury 究極の一品 | ランボルギーニ、ジュメイラグループ |
54. User Design プロシューマー | スプレッドシャツ、ルル |
55. White Label OEM商品 |
鴻海精密工業、リシュリュー・フーズ |
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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