未来が予測できたらビジネスに役立つのは言うまでもありません。そのための方法論として今話題になっているのがSF(サイエンス・フィクション)を使うことです。「え~、ホント?」と思った方も、イギリスの国防省が予算を使って取り組んだと聞くと興味を持たれるのではないでしょうか。「ストーリーズ・フロム・トゥモロー」と題された作品の紹介と、その背後にある社会の変化を解説します。

イギリス国防省のストーリーズ・フロム・トゥモロー

まずはイギリス国防省の取り組みから。2人のSF作家に、短編8編書いてくれって依頼したそうです。未来の戦場?あるいは戦争をテーマにしたものです。出来上がったものが、ストーリーズ・フロム・トゥモローと言うタイトルでネット上で公開されています。

短編の中の1つは、こんな感じです。ある兵隊さんが戦場から離脱する際、海に落っこちちゃった。そこに敵の小型潜水艦が迫る。何とか潜水艦の動きを止めようと、ハッチに手を突っ込んで潜水艦の頭脳である量子コンピューターのユニットを引き抜いた。そう、実は潜水艦は無人で、人工知能によって操作されていた。でもその兵隊さんのおかげで敵は無力化。名誉を讃えられて勲章が贈られた。ストーリーとして成立していて面白いです。

ちょっと、斜め読みですし、google翻訳だから間違っているところもあるかもしれません。ま、でも、だいたいそんな感じ。

他にも、人造人間。能力強化された兵士が、コンタクトレンズで色んな情報を読み取るとか、無人の自動爆撃機がロンドンを攻撃して300人以上の死者が出る、なんてのがあるそうです。

まぁ、たしかになあ。未来の戦場を予測するには役立つかもなぁ、と思いました。なにせスポンサーは国防省ですからね。面白半分ではないでしょう。フィクショナル・インテリジェンスっていうらしいですけどね。

戦争の概念が変わる世界

正直、未来を予測する方法としてSFを使うと聞いて、ちょっとシラけました。ホントかよ。あ~、はいはい、よくある話題づくりねって。以前このライブ配信でも、「超予測」って言う方法論を紹介して、例の「歴史に学ぶ」ってやつね。あれは納得。でも、SFか~、と思っていたんです。

でも、考えてみると、そのくらい戦争のあり方が変わってきたってことかもしれません。たとえば。たとえば、ウクライナ。

圧倒的国力・兵力を持つロシアに対抗しているじゃないですか。もちろんそれは、祖国防衛戦という士気の高さもあるんだろうけど、戦術、もしくは戦い方が違ってきているんでしょうね。データ分析で敵の位置を把握して、一撃で無力化してすぐ離脱、みたいな行動に。こう、情報に基づいたゲリラ戦、スマートゲリラ戦、みたいな。

しかも、そのデータ収集とウクライナ兵同士の通信のために、イーロン・マスクさんの会社のスターリンクっていう衛星電話サービスが使われているってのは、もうなんか、SFの世界っぽい。これ、映画だとマスクさんが闇堕ちして、スターリンクをロシアだけに使われるようになる、なんてストーリーがいかにもありそうです。

あるいは、米国主導の「テロとの戦争」。アフガニスタンやイラクでは、米軍は相当苦労したみたいです。司令部からの指示命令で動くのではなく、現場の人間の判断がより重視されるようになってきた、みたいな話は聞いたことがあります。

私たちがイメージする軍隊制度って、ナポレオン時代に完成されたって言われてますね。今から200年前ぐらい。フランス革命後の国民軍の成立ですよね。いずれにしても、かなり昔。それが今の情勢にあわなくなって、未来を予見するためには、SFぐらい突飛な発想が必要になってくるんだなって言うのは納得しました。

人々の願望を表す「ホミニッド」

じゃあ、自分でも読んでみよう、というか、最近読んだSF小説を思い返すと、印象に残ったのが「ホミニッド」って作品。いわゆるパラレルワールドものですが、もうひとつの世界はネアンデルタール人が進化して文明を築いている。逆に私たちホモサピエンスは存在しないって言う設定。

なんだか、ネアンデルタール人は平和主義者だったらしくて、我々よりもよっぽどいい、それこそ戦争がないという観点で素晴らしい社会を作っているという設定でした。

これ、ダイレクトに未来予測ではないけれど、いま、多くの人々が持っている社会への不満、あるいは欲求が詰まっているように見えますね。これをビジネスに役立てるとしたら、これから求められるのは「癒やし」である、なんて方向に行きそう。そういえば、以前のライブ配信で紹介したQuiet Quitting、「静かなる退職」ってのも関係ありそうですね。ひょっとしたら、あくせく働くのは時代遅れになるのかもしれません。

ちなみに元のホミニッドに戻ると、ストーリー的にはちょっとね。こう、破綻しているっていうか、「そりゃないだろ」って言うところもありますが、ご興味がある方はチェックしてみてください。私も、今後意識的にSF作品を読んでみたいと思います。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中