中小企業庁による人材育成の取り組み、「ビジログ」に講師として登壇させていただいたので、レポートします。

ビジログの考え抜く力とは

まず、私が担当したパート、「考え抜く力」から。これは、

  • 課題発見力
  • 創造力
  • 計画力

からなるもので、要するにロジカルシンキングを使った問題解決と似た概念で、まずは課題を発見し、それを解決するための打ち手を考え、それを計画に落とし込んで全社的に実行していく、という流れになります。

内容としては、より多くの人に必要なものを届けると言うことで、通常のロジカルシンキング研修に比べると、スキルよりも「心構え」に力点が置かれています。そもそもとして、このように考えることが重要だと認識していなければスキルの発揮しようもないわけですからね。

具体的には、課題の本質を見抜くには、「最後の藁」の罠に陥らないことが重要である、などを解説に含めました(※)。問題解決において、「その理由は○○に違いない」と考えることはありがち。あるいいは、ネガティブなことでなくても、

  • ○○社がうまくいっているのは、世界一社員を大事にしているから
  • ○○社長が優秀なのは、リスクをとる姿勢があるから
  • ○○のゲームが流行ったのは、スマホの時代にマッチしたから

など、安易に原因を求めるのはありがちなので、これを戒めましょう、となります。

他のパートにおいても、たとえば創造力に関しては「赤信号、みんなで渡れば」の罠に、計画力に関しては「武士に二言はなし」の罠に気をつけようとのメッセージをお伝えしました。

ビジログのバックボーンとしての社会人基礎力

ここまで「考え抜く力」を紹介してきましたが、今回のビジログは、実はより広い観点からビジネスパーソンに必要な力を学べる内容なのです。その問題意識としては、人生100年時代とも言われる中、社会人にも継続的にスキルアップが求められる、というものです。特に最近のようにVUCAといわれるような環境変化が激しい中、これまでと同じことしかできない人材は時代遅れになってしまうのは目に見えています。そのために、リカレント教育と呼ばれる継続的な社会人向けスキルアップの取り組みが必要で、それがビジログに結実しています。

その際に、理論的な背景になるのが「社会人基礎力」です。これは、経済産業省が2006年に提唱したもので、下記の3つの能力、12の能力要素からなるものです。

  • 前に踏み出す力 (アクション)
    • 主体性(物事に進んで取り組む力)
    • 働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)
    • 実行力(目的を設定し確実に行動する力)
  • 考え抜く力(シンキング)
    • 課題発見力(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)
    • 計画力(課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力)
    • 創造力(新しい価値を生み出す力)
  • チームで働く力(チームワーク)
    • 発信力(自分の意見をわかりやすく伝える力)
    • 傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力)
    • 柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力)
    • 情況把握力(自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力)
    • 規律性(社会のルールや人との約束を守る力)
    • ストレスコントロール力(ストレスの発生源に対応する力)

ビジログの対面型ワークショップにおいては、この3つの能力要素をまんべんなく学べるように1日の講座が設計されています。したがって、私が担当したのは1日の中の1/3ぐらいの時間帯でした。

研修の効果測定を可視化するのがビジログ

ビジログのもう一つの特徴は、研修の効果を測定できるところにあります。多くの企業の悩みとして、「人材育成が大事なのはわかる。だが、本当にそれがうまくいっているのか、どう検証したらよいものか」というものがあります。これを応えるのがビジログの測定で、アンケート形式によってその人が実際の業務において発揮している行動特性が測定できるのです。

しかも、ビジログに会員登録すると2回も測定できるそうで、つまりは受講前と受講後でどう変わったかが目で見て確認することができるのです。ちなみに、ビジログのサイトには、五角形のレーダーチャートを顔に模したイラストが描かれていますが、これは「効果測定を可視化」というのを訴えたかったのだと思われます。そもそもが「ログ」は「記録」なので、名前からしてビジネススキル+記録、が盛り込まれています。

さて、ここまで説明してきてお分かりのとおり、良い事づくめのビジログ。さらにいいのはすべてのサービスが無料ということ。人材育成になかなかリソースを割けない中小企業のためとは言え、なんともお得なしくみです。ご興味がある方は、ぜひ会員登録からはじめてはいかがでしょうか。

※最後の藁の罠

「最後の藁」の罠というのは、たまたま目についたものを真の原因と勘違いしてしまうこと。名前の由来は、昔、アラビア人の商人がラクダの背中に荷物を載せたときのエピソードから。テントを載っけて、交易品を載っけて、水を載っけて…、最後に藁束を載せたら、あまりの重みに耐えかねてラクダの背中がボキッと折れてしまったという話です。これをみて、「なに、ラクダって、藁束のような軽いものでも背中が折れるんだ」と言ったらそれは勘違い。他のものも含めてトータルの重みが問題で、藁は最後に載せてたまたま目についたというだけですからね。

seminar photo

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中