2020年6月8日 10:30からオンラインで行われた、米Zoom社の創業者でCEOのエリック・ユアン(Eric Yuan)氏のビデオカンファレンスの様子をレポートします。
もっと踏み込んだ質問が欲しかったZoom社創業者へのインタビュー
まずは、所感から。「セキュリティに関してもっと聞きたかった」というのが率直な感想です。もちろん、米Zoom社は、90日プランとしてセキュリティを高めるための取り組みをしていることは分かっています。ただ、問題は、「どうやってユーザーの信頼を取り戻すのか」ということだと思うんですよね。
少なくとも日本人ユーザーの中では、Zoomのセキュリティに関する懸念が多かれ少なかれあります。それに対して、Zoom社が「セキュリティを高めましたよ」、というだけでは不十分。むしろ、ユーザーが、「なるほど、Zoomは安心だ」と思えてはじめてZoom社の役割は全うできるのではないでしょうか。
せっかくその企業のトップと、インタラクティブに対話ができるわけですから、「ユーザーの信頼を回復するために、どのような取り組みをするか」が聞けると、実りの多いものだったと感じます。もちろん、相手は上場企業の役員ですし、いろいろと大人の事情もあるかと思うのですが、モデレーターの方の踏み込んだ質問が欲しかったところです。
Zoom社は競合を気にしていない?
別の切り口で振り返ってみると、面白かったのが競合に対する取り組み。ここ数ヶ月、MicrosoftのTeams、シスコのWebexだけでなく、googleやfaceboomもビデオカンファレンスシステムに力を入れているのは明らかです。これにどう対抗するのか?という質問に対してEric Yuan氏は、「競合のことは気にしない」と明言していました。むしろ、「大事なのはカスタマーであり、エンドユーザーのニーズに応えることである」とのことです。
これはこれで、「あり」だと思いました。マーケット自体がすごい勢いで伸びている中では、「競合から顧客を奪い取る」必要はなく、ユーザーを獲得することの方が重要との判断なのでしょう。しかも、Zoomのようなコミュニケーションツールでは、ネットワーク効果がはたらきます。誰かがZoomを使い始めると、それを使ってコミュニケーションする相手もZoomを使い、そうするとまた別の人もZoomを使い始めて、とねずみ算式にユーザーが増える可能性があります。この観点で、ユーザー数の爆発的増加の入り口に立ったとき、考えるべきはいかにユーザーのニーズに応えるか、なのでしょう。
リモートワークが「当たり前」になる時代
もう一つ面白い話題が、今後のリモートワークの広がりです。Eric Yuan氏曰く、
もし今ビジネスをはじめるとしたら、オフィスは設けないだろう
とのこと。米Zoom社では2020年3月上旬から社内でリモートワークを全面導入したそうですが、「生産性はまったく落ちていない」とのことなのです。「1日に19本もオンラインミーティングがある日もあって、忙しくなったけどね」とのことで、コミュニケーションを密にすることで物理的なオフィスは必要ないとの立場です。
Zoomのようなテクノロジーカンパニーだからこそなのかもしれませんが、それでも日本企業も、この方向に進んでいく(べき)であると感じました。
なお、今回のビデオカンファレンスは、日本経済新聞社が主催するオンラインイベント「世界デジタルサミット2020 ~5G and NEXT~」の一環で行われました。Eric Yuan氏の登壇は、「講演」と言うよりも、モデレーターである田中暁人氏の質問に答える形で進められました。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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