「DX人材育成」が叫ばれていますが…肝心の「DX人材とはなんぞや」が置き去りにされています。それはまるで、10年前の「グローバル人材ブーム」を彷彿とさせます。当時は猫も杓子も「グローバル人材」。実態がよく分からないまま言葉だけが一人歩きし、無駄な時間とお金を使ってしまった会社も多いのではないでしょうか。その反省を踏まえ、本質を押さえたDX人材育成の方法論を紹介します。ポイントは、これまでの人材育成の延長線上であること。魔法の杖のような「何でも解決できる」というイメージを取り除くところがスタートです。

DX人材育成勉強会、開催します

まず、ご案内。今度、DX人材育成の勉強会を行うことになりました。タイトルは、「小さく始めて大きく育てる」DX人材育成勉強会」です。日付は22/12/06火、22/12/13火。時間は14:00 – 15:00の1時間です。無料ですから、ぜひご参加下さい。参加用のURLは概要欄に貼っておきます。あ、ちなみに2日程ありますが、内容はまったく同じものです。そして、講師は藤原先生です。もともとIBMに勤務されていた方ですからね。ビジネス系の研修も担当されていますが、DX分野に造詣が深いので、講師をお願いしました。

これ、人事部の方はぜひご覧いただきたいんです。なぜかというと、「DX」という言葉に踊らされないため。以前のライブ配信でも紹介しましたけど、コンサルタントが商売のネタとしてDXって言葉を便利に使っているという側面があるんです。結果として、いま日本のビジネス界はDXブームじゃないですか。そうすると、経営陣から「ウチもDX人材を育成しなきゃ」と言われてる人事部門の方が多いと想像します。

10年前にあったグローバル人材ブーム

ん?そう言えば、似たような話が合ったのでは?と思いだした方は鋭いですね。そう、一昔前、「グローバ

ル人材」のブームがありました。2010年代前半だったと思いますけれど、研修業界ではみんな、口を開けば「グローバル人材」。面白いのは、「グローバル人材」って何ですか?という質問に誰も答えられなかったこと。そういう人と話すじゃないですか。「これからはグローバル人材育成だよ」って言う人と。聞きたくなります。「グローバル人材」って何ですか?「いや、それは、あれだよ、ほら、グローバルに活躍できる人材ってことだよ」。いや、だから、そのスキル要件は?と聞いても誰も答えられません。

もちろん、真面目に考えていた会社さんはあると思います。実際、海外でのビジネスを伸ばしているところもあるし、でも、単に言葉に踊らされただけの会社は、時間とお金を無駄にしてしまったと思います。

DX人材育成の本質は?

さあ、ここまで来ると、DX人材という言葉に踊らされないという意味も分かっていただけたのではないでしょうか。人工知能やデータサイエンティスト、あるいはITリテラシーなど様々言われていますけど、本質は何なんだ?って考えたいですね。で、本質は、実はこれまでの人材育成と変わりません。自分の頭で考えて、新しいことにチャレンジして、試行錯誤を力に変えて、周りに影響力を与える人です。ただ、ことDXという観点では、最後の「周りに影響を与える」というのがより重要になってくるかもしれません。というのは、DXって言葉は別にして、デジタル化、IT化によって業務効率UPだけでなく、イノベーションを起こす必要ってあるじゃないですか?でも、このデジタル化すら進んでいないというのが日本の企業の現実だと思います。

たとえば、営業やマーケティング分野でのデジタル化。昔ながらの外回りの御用聞き営業ではなく、デジタル化しましょう、とITシステムを入れるんです。ところが、そのシステムが使われないんですね~。営業の人がデータを入力してくれない。結局それぞれの営業マンが名刺で顧客管理をしている。上司にしてみると、それぞれの案件の進捗状況も分からない、と昔のまんま。

そんな状況を変えるのがDX人材、と言ってもいいでしょう。そこで、先ほど出てきた周りに影響力を与える、が出てきます。営業マンに活用を促す、その上司に、データをもとにした意志決定を行うように働きかける、そして会社の経営陣には戦略の中心にデータ活用を据えていただくように進言する…

DX人材の人材要件

そうすると、この人材要件も見えてくるし、どうやって育成すればよいかも分かります。たとえば、ファシリテーション力。現場の人から意見を引き出しつつ、それをすりあわせて合意を形成し、実行していく…。そんな力を身に付けてもらうためにはどうしたらいいか、という議論ができます。

あるいは、そのベースになるコミュニケーション力でもいいですね。現場の人から意見を引き出すためには、実は「聞く力」、つまり受信系のコミュニケーション力が必要です。これ、弱いビジネスパーソン多いですからね。

こう考えていくと、DX人材って言っても、既存の人材育成の延長線上ではないことが分かっていただけるのではないでしょうか。なんかね、まるで魔法の杖のように、「DX人材を育成すれば、全てが解決する」みたいなニュアンスで語られることも多いですけど、現実にはそんなことはありません。幸か不幸か、私たちが生きているのはハリー・ポッターの世界ではないので。

なので、本質を踏まえて、着実に取り組んでいくことが人材育成の担当者には求められます。そんなキッカケに、今度の勉強会をしていただけたらと思うのです。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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