ビジネスでのコミュニケーションに苦労はつきません。報連相の際、「部下が何を言っているか分からない」、会議で、「なんでこの人は分かってくれないんだろう」、そのような体験をお持ちの方も多いでしょう。この動画では、これを解決するための「スキーマ構築」という手法を解説します。ちなみに、ロジカルなアプローチではありません。むしろ感覚的なもので、「なんとなく」と言う感覚すらも相手と共有できるアプローチです。コミュニケーションをよくしたい方は必見です。

コミュニケーションがうまくいかない社内会議

ビジネスでコミュニケーションがうまくいかずもどかしいことってありますよね。たとえば先日、当社の社内会議でこんな一幕がありました。テーマは、ショート動画。そう、ご存じの方はご存じですけど、当社内ではTikTokなどのショート動画に取り組むプロジェクトが進行中なんです。

まずはテスト的に私がショート動画を作ったわけです。で、それを社内の人に見てもらってコメントをもらう、と。そうやって改善して、良い動画ができたら公開しようという流れですね。

で、部下の一人がこんなコメントをくれたんです。「もっとテンポが速くてもいいんじゃないですか?」って。テンポね。

私はそれ、当然聞き返します。具体的にはどういうこと?話すスピード?いや、けっこう速いペースで話してると思うんだけど。

部下が言います。たとえば、天皇陛下とか皇室の方はゆっくり話されるじゃないですか。ああ言うのとは逆に、テンポ良く。掛け合いって言うか…。

私はまた聞きます。いや、具体的にはどこをどう変えたらいいですかね?

もうね、コミュニケーションが成立してないわけですよ。なんとなく部下の言いたいことも分からないではないんだけど、具体的にどうしたらいいか言ってくれないと、アクションのとりようがないわけです。

で、ここから。もしロジカルにコミュニケーションをとるとこうなります。じゃあ、テンポ良くって言うのを、要素に分解してみよう。話すペース、WPMと、間合いの取り方と、あと動画の場合は画面の、ビジュアルの見せ方、どのくらいの頻度でカット割りが変わっているかもあるかな。その中でどれが重要かって言うと…

スキーマを共有することで「なんとなく」も伝わる

でも、こういう会話をしても、なかなかうまくいきません。もしくは、完成形にたどり着くまで時間がかかっちゃいます。じゃあ、どうするか。その答が、スキーマなんです。

スキーマとは心理学用語で、「判断軸」のことです。専門的に言うと、「外界の知覚や言語の使用、思考などの認知的な活動を支える、構造化された知識」なんですけど、これじゃ全然分からないですね。もう、ざっくり判断軸。何をもって「テンポがいい」とするかの基準です。

このスキーマが頭の中にない、もしくはコミュニケーションする相手同士で共有できてないのが、先ほどのショート動画の会話例で、うまくいかなかった原因なんです。

じゃあ、どうやってスキーマを構築するの?答は簡単で、短期間に大量の動画を見ることなんです。それも、一人の人の動画でなく、あの人の動画、この人の動画、こっちの人の動画、などなど。

そうすると、ごく自然に感じるわけです。こっちの動画は好きだけど、こっちはなんとも言えず居心地が悪いな。あ、それってテンポが良いかどうかの違いなんだ。

しかもですよ。ショート動画に関わる全員で、それを共有するわけです。「この動画見てみて。私はテンポいいって感じた」。「そうか、ピンとこないけど」。「じゃあ、あっちの動画と比較してみて。あっちの動画よりテンポいいって分かるでしょ」。「あ~、たしかに」。

こういう会話を続けていくことで、スキーマを共有できます。ここまで来ると、じゃあさ、自分たちの動画もテンポを良くするには、こっちの動画を真似したらいいんだなっていう会話も自然にできるようになります。

さっきの、ロジカルなアプローチとはまったく違いますよね。論理的と言うより感覚的なものです。

制服が可愛いというスキーマ

これ、実はショート動画だけでなく、世の中の様々な場所で起こっています。たとえば、私が最近体験した例でいえば、女子高生の制服。うちの娘がちょっと前、高校受験だったんですよ。志望校を選ぶ時、「ここの制服は可愛い。あっちの制服はダサい」っていう会話をしているわけです。

ところが、私はぜんぜんピンときません。「制服が可愛いとは…?」。でも、母親は分かるんですよね。「ここの制服可愛い~」、「あ~、そうだね」って。これは、志望校の書類を見る中で、短期間で大量の制服の写真を一緒に見ているからですよね。結果として、母娘の間ではスキーマが共有できているわけです。

逆に言うと、スキーマを共有できていない私とは会話がかみ合わないことになります。まぁ、しょうがない。

スティーブ・ジョブズは「あえて」やらなかった?スキーマ構築

他のスキーマの例としては、これ。この黒いタートルネック。ご存じの方はご存じでしょう、スティーブ・ジョブズが愛用していたというものです。まあ、スティーブの場合はイッセイミヤケの高級品だったらしいですけどね。私の場合はユニクロの1,500円です。

ま、金額はともかく、スティーブがなぜ黒タートルにこだわったかというと、服装に迷う時間がもったいないと感じたから。毎日着るわけですから、もう自動的にです。

これも、黒タートルがなかった場合を考えてみましょう。毎朝何を着るかを考え無ければならないのは当然として、それなりにオシャレなカッコをするためには、頭の中にオシャレのスキーマを作る必要があります。

実際、スティーブも若かりし頃の写真を見ると、スーツとか蝶ネクタイとかしてますからね。ただ、想像ですけど、ある時考えたんじゃないでしょうか。「会社のトップとして人前で出る時には、パリッとしたカッコをしなきゃいけない。そのためにはファッションのスキーマが必要だ。でも、そんなことに時間を使いたくない。そうだ!毎日同じ服にしちゃえ」。

さっきの、スキーマ構築の話、おぼえてますでしょうか?短期間に大量の画像を見る必要があります。そして、それはスティーブのような忙しい人には、無駄な時間に思えてしまうというのは説得力があるのではないでしょうか。

と言うことでまとめに入りましょう。ビジネスでコミュニケーションがうまくいかない時、ロジカルなアプローチだけでなく、スキーマを構築する、もしくは共有することによっても解決できます。感覚的にコミュニケーションを成り立たせるアプローチです。そして、スキーマ構築のためには短期間で大量の動画や画像を見る、そしてそれに関する意見交換をすることでスキーマの共有ができる、そんなノウハウを紹介しました。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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