マーケターとしての勘を研ぎ澄ますための「トレンドたまご」チェック。今回は「食品中のビタミンDを増やす機器」です。

KDWさんの食品中のビタミンを生成する機器「サンティエ(Scin:tiller)」

先日講師を務めた土佐MBA講座のテーマはマーケティング。ある受講者の方からご質問をいただきました。

セグメンテーション・ターゲティングにしてもポジショニングにしても、軸を考えるのって難しいですよね?どうやったら上手になれますか?

と。答は簡単で、自社製品でなくてもよいので「場数」を踏むこと。ということで、今回の「トレンドたまご」チェックでは、実際に軸を考えたいと思います。題材になるのは、KDW(KYOTO DEVELOPMENT WORKS)さんの、食品中のビタミンを生成する機器、「サンティエ(Scin:tiller)」です。一見するとオーブントースターですが、温める機能はなし。代わりに、中に入れた食材の中のビタミンD含有量を増やしてくれるというものです。

売価は8万9,800円とのことなので、ちょっとお高めに感じます(何と比較するかにもよりますが)。なので、セグメンテーションの軸としては「年収」を考えました。そしてもう一つの軸は、「健康不安」。わざわざビタミンDを補給しようと言うことですから、普段何らかの悩みを抱えているのでは?

ただ、二つの軸の直交性があまりないかもしれません。年齢というファクターを通して、年収と健康不安は相関性が高そう。その意味では、まだ工夫の余地がある軸の取り方だと思います。

サンティエの差別化のポイントは?

では、ポジショニング。これを考える際、競合は何かを想定しました。直接のライバルはなさそうですから、広く「ビタミンDを接種する」という観点で言うと、サプリメントが一番の競合かな、と。差別化を図るとすれば、サプリメントに伴うリスク。小林製薬の紅麹が象徴的ですが、余計な成分が混じる(コンタミ)のリスクが消費者としては怖いところです。別の競合としては、ビタミンDを元から多く含む食材、魚やキノコ。それらに対しては、手軽さという観点で差別化できると考えました。

ちなみに、私自身もビタミンDは欠乏していて、ちょっとこのサンティエさんが気になります。

サンティエは売れるか?

では、いつものフレームワークも使って、このサンティエが売れるかどうか考えてみます。

Pain:痛みはあるか?(明確なニーズはあるか): 消費者にとっては、「ビタミンDが足りない」ことによる痛みは感じにくいものです。私のように自身の栄養素チェックでもやらない限り、「よーし、ビタミンDをとるぞ」とはなりにくいでしょう

Competitor:その痛みがこれまで解決されなかった理由は?:上記の痛み、感じる人はサプリをとるのが通常の流れ。実際に私もビタミンAとDの混合サプリをとっています。もちろん上述の通りコンタミリスクは気になりますが、そうはいっても競合が強いと考えました

Now: 今回は痛みが解決できる根拠は?:サンティエさん、解決の仕組みとしては面白いんですけどね。ただ、使用前使用後の違いが分かりにくいのも気になるところ。

Promotion: プロモーション上の工夫はあるか?:商品の差別化が難しいだけに、プロモーションも難しそうです。

ということで、仮に結論を出すとしたら、サンティエさんは「なし」というのが私の判断です。

vitamin photo

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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