学生時代を振り返って反省することの一つに、「もっと数学を勉強しておけば良かった…」というのがあります。そんな感慨を改めて持ったのは、芳沢光雄先生のご著書、「世界のエリートに必要な「証明力」の養い方」を読んだから。
いまでも夢に見る学生時代のトラウマ
こんにちは。MBAの三冠王ことシンメトリー・ジャパン代表の木田知廣です。
学生時代に私は計量経済というのを専攻しました。様々な経済問題を、数学、もしくはコンピュータのシミュレーションを使って分析しようというものです。AI時代の先駆けのようなもので、いま思えばなかなか面白いことをやっていたな、と感じます。
ところが、学生時代はそれが分かりませんでした。てか、その必須知識である数学が苦手で苦手で。なぜかいまも、夢に見るくらいです。学校の授業に出ているのですが、
ヤバい、先生の言っていることにまったくついていけない
と言う冷や汗の出る感覚。よっぽどトラウマなんですかね。
ビジネスでも求められる数学的素養
ところがいま、数学的な素養は、ありとあらゆるビジネスに求められます。人工知能なんか典型的だし、他の分野でもデータを押さえずに意志決定するのは難しい時代です。このことを、「世界のエリートに必要な「証明力」の養い方」の著者である芳沢先生は、
- 問題の原因と対処法を見つけて解決を図ること
- 数字やデータを正しく読んだり使ったりすること
- 自らの考え方に理解を得る説明が的確にできること
- 他の意見を公平に受け入れる精神を持つこと
であるとして、「証明力」と本書では名付けています。ちなみに、芳沢先生は桜美林大学学長特別補佐で、理学博士号の持ち主です。このご経歴から世界中の教育体系への造詣も深く、上記の思考は日本人に描けているとの問題意識を持たれているとのこと。
問題解決のグローバルスタンダード
具体的には、下記の9つのステップで問題解決にアプローチをするのが、学会などでのグローバルスタンダードだとか。
- 問題を定義する
- 原因を特定する
- 可能な解決策を列挙する
- ベストな解決策を選択する
- 選択した解決策を誰が実施するか
- 予測される結果を評価する
- 行動計画を立てる
- 計画を実行する
- 振り返ってみる
なお、8番目と9番目の項目は、この手の問題解決技法の先達であるハンガリー出身の数学者ジョージ・ポリアが提唱した4ステップを意識されているとのこと。ポリアの原型では
- 問題を理解すること
- 計画を立てること
- 計画を実行すること
- 振り返ってみること
となっていたそうです。
ちなみに、ビジネスの現場でこのステップを使う際にはいくつか注意点が必要なので、補足します。
まず、2番目の「原因を特定する」というところ。ビジネスにおける問題解決では、様々な要素が複雑にからみ合って問題を形成しているので、このパートは簡単ではありません。したがって、様々な要素を列挙して、そこにある因果関係を類推し、問題の本質、すなわち「ここを変えれば全体が変わる」というポイントを見つける必要があります。逆に、本質を見つけないまま原因だけ解決しようとすると、かえって問題をこじらせてしまうこともあります。
そして、もう一つのアプローチとして、「原因を特定しない」というのもあり得ます。というのは、ビジネスだと「原因を特定する」という作業が、いつの間にか「犯人捜し」になりかねないから。それは組織に悪影響をもたらしますから、むしろ未来型のアプローチ、「原因は置いておいて、どうなったら一番いいかを考えよう」というのは、十分効果的です。
コルブの学習スタイル
本書の魅力のもう一つは、ラーニング・スタイルが取り扱われているところです。アメリカの組織行動学者であるデービッド・コルブが提唱したもので、人の学習の仕方は様々であり、下記4つの学習スタイルに分かれるというものです。
行動型 Activists | 熟考型 Reflectors | 理論型 Theorists | 実践型 Pragmatists | |
定義 | 柔軟性があり、新しいことに挑戦しながら | 物事を様々な視点から観察したり、数的推理したりして学ぶ | 観察を分析していくことから学び、合理性や論理を重視する | 概念や理論や技術が実際に使えるかどうかを試して学ぶ |
長所 | 柔軟性がある/オープンマインド/達観主義/チャレンジオー 変化にあまり抵抗がない | 思慮深い/注意深い/耳を傾けて観察する/詳細を考える | 原則論・論理的/理性的・客観的/問題を明らかにすることが得意 | 実践的・現実的/ビジネスライク/要点をつかむことが得意/知識を応用する |
短所 | 考えずに行動する/あきっぽい/リスクをとる/ 詳細に注意を払わない/他人の注目を浴びようとする | 注意深すぎる/気乗りせず参加する/意思決定が遅い | 色々なレベルで考えることが下手/ 曖昧さを許容できない(融通が利かない)/完璧主義の傾向がある | ご都合主義の解決法を使う/忍耐強くない/型にはまっている |
改善点 | 慎重さを身につける/計画性をもたせる | 創造性や行動力を身につける/デッドラインをもうける/ 積極的に考える | チャレンジする(何か違うことをする) / 心を開く/柔軟性を増す | 民主的な方法で情報を集める/様々な意見に柔軟な反応をす。 新しい考えを取り入れる |
画像はアマゾンさんからお借りしました
前ページ 中原 淳著、フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術を読む |
次ページ 荒木香織 著、リーダーシップを鍛える ラグビー日本代表「躍進」の原動力を読む |
|
---|---|---|
リーダーシップ研修のページに戻る |
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中。