部下から上司に影響を与え、行動や考えを変えてもらうのがボス・マネジメント。様々な手法が世の中に出回っていますが、実際のところはリスクが大きいものです。研究によると、上司に意見を出したり問題点を指摘すればするほど、その人が2年以内に昇給、昇進する可能性が低くなるのだとか。この現実<リアリティ>を「特異性信用」というキーワードで理解するとともに、それを乗り越えるボス・マネジメントの10大チェックリストを紹介します。

ボス・マネジメントの真実

ボス・マネジメントと言う言葉があります。つまり、部下の立場に立って、どうやって上司に影響力を発揮するかというものです。上司って、必ずしも現場が分かっているわけではありません。プレイングマネージャーならともかく、管理業務ばっかりだと、現場やお客さんのことが分からずに、ちょっとトンチンカンなことをしてしまう。そんな上司に正しい判断をしてもらうために、ボス・マネジメントが必要になります。

このボス・マネジメントで一番大事なことは、今の仕事で成果を上げることです。それも、圧倒的成果を。

え?どういうこと?今の仕事で成果って、ボス・マネジメントとはちがくない?って思うかもしれませんが、ボスの立場になって考えると分かります。仮にですけど、あんまり仕事をしない部下がいたとしましょう。その部下が、自分に対して進言をしてくるわけです。「現場はこうなっているんで、こうしてください」。聞いたボスはどう思うでしょう?普通だったら、「お前が言うな」って思いますよね。エラそうなこという前に、まずは自分の仕事をしろよ。何か進言するならそれからだろ?

これは、その部下が言っていることが正しいかどうかに関係ありません。仮に言っていることが正しくても、「言ってることは正しいけれど、お前が言うのは正しくない」と上司は思います。

ボス・マネジメントに必要な特異性信用

もちろん、これは私が考えているだけじゃなくて、心理学の研究によっても検証されています。ノースカロライナ大学のアリソン・フラゲイルによると、上司に意見を出す、問題点を指摘すればするほど、その人が2年以内に昇給、昇進する可能性が低くなるんですって。ものすごくリアルですね。これが現実です。

これを元に、アリソン先生は「特異性信用」という概念を提唱しました。いやね、もちろん上司から信用を勝ち得るのは大事なんですが、同じ信用でも「あいつは仲間だ」という信用では、ボス・マネジメントには役立たないんですって。

そうではなく、「あいつはモノが違う」という信用、日本語にすると一目置く、みたいなニュアンスだと思いますけど、この特異性信用がないと、上司は部下の言うことを聞いてくれないわけです。

と言うことで元に戻って、特異性信用を獲得するためにも、今の仕事で圧倒的な成果を上げるのが大事、となります。もうね、ものすごくリアル。現実的過ぎて、身も蓋もない話ですけどね。

ボス・マネジメントの10か条

ただ、そうは言っても、いま、何とかしたいという人もいるでしょう。だって、仕事で成果を上げるためには時間がかかりますからね。その前に、何とかならないの?と言う人が。

そんな方のために、10個のチェックリストを作りました。ボス・マネジメントチェックリストと言っていますが、これを実践するだけでも上司を動かしやすくなります。

一つ目、上司の悩みを知っている (痛み)、二つ目、上司の要望を知っている (喜び)、三つ目、その悩みの解決、要望の実現に貢献している。はい、ということで、ここまでは上司をよく知ろう、そして、痛みの解消、喜びの実現に貢献しよう、となります。

ところが、多くの方は、ボスのことを意外と知らないんです。「上司の片貝守っている最大の悩みって何だと思いますか?」って聞いたとき、「○○ですかね」って答えられる人は少数派です。ボス・マネジメント、まずはそこからはじめてもいいと思います。上司をよく知ろう、と。

では、チェックリストに戻ってボス・マネジメントの4つ目。上司が知らない社内外の情報を教えてあげている(他部署の活動や、競合の動きなど)。5つ目、自身の専門性を高め、上司の苦手分野のサポートをしている。はい、ここら辺は、社内政治力に関係しますね。ご興味ある方は別の動画で詳しく解説しているので、チェックください。

では、チェックリストに戻って6つ目。上司に意見進言するときは、「肯定接続詞」を多くしている。つまり、×「でも」、「しかし」、「現状では無理です」じゃなくて、○「では」、「それなら」、「現状ではここまでできます」と言いましょう、となります。同じことでも言い方一つで相手の受け取り方は違ってきますからね。

では、チェックリストに戻って7つ目。上司の提案に反対するときは対案を出している。これは、重要。上司の提案に反対する部下がいて、まあ、それそれでしょうがないと上司も思います。じゃあ、どうやったらいい?え?対案がないの?単なる反対?そんなの高校生だってできるだろ。上司にしてみたら、怒りすら覚えますね。あ、また始まったよ、コイツの評論癖がって思います。

チェックリストに戻って8つ目。上司の提案に関して、同僚と意見交換をしている。これも社内政治的ですけど、自分ひとりでそのボスの行動を止められないとしたら、周りの力も借りましょう。次、9つ目。上司に全社視点を持つように促している。これは、正論で対抗しましょう、と考えてもよいです。上司がトンチンカンなことを言い出したら、「いやね、おっしゃることは分かるんですけど、全社的な視点で見ると違うと思います」。あるいは、逆に話を大きくすることで、ボスに思いとどまらせる、と言う効果もあります。「すごくいいアイデアですね。いっそ全社的に導入するために、役員会に諮りませんか?」なんて。ボスはちょっとためらいますよね。い、いや、そこまででは…、みたいに。

そしてチェックリストの10個目が、今の仕事で圧倒的成果を上げている、です。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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