部下育成に悩む管理職にお勧めしたいのが、部下の「強み」にフォーカスするというアプローチです。部下指導の際、ついつい、「ここはダメ」、「こういう風に改善するように」とダメ出しをしてしまう上司の方も多いのですが、これでは部下を萎縮させてしまい、結果として正しい行動が身につかないのです。…と言うのを聞いて、「ホントか?」と疑問に思う方は、朝の情報番組をご覧下さい。お天気キャスターの言動から、この「萎縮すると身につかない」が分かります。

部下育成で思いだす、「あの」お天気キャスター

今日のテーマは、部下の育成では、その部下の強みにフォーカスしましょう、という話。この話をするとき、いつも私の頭の中にあるのは、あるお天気キャスターなんです。仮にその方を、Mさんとしましょう。

で、このMさん、何を言ってるか分からないんです。典型的な、職場にいるイケてない部下のイメージ。朝の情報番組に出ているんですけど、そのMC、メインの司会ね、こちらは仮にKさんとしますけど、話を振られるんですけど、もう、回答がグダグダ。

たとえばこんな感じです。MCのKさん:「Mさん、台風が近づいているようですけれど、今週は雨が多くなるんでしょうか?」。Mさんが答えます。「え~、台風というのはですね、東側の方が雨が多くなって…。そして、今回の台風は、ゆっくりと進んでいますので…」。

テレビを見ている私は、イライラしちゃいます。質問は、雨が多くなるかどうかでしょ?なんで質問にちゃんと答えないの?まず結論から言うように指導してやらなきゃダメだよな。まるで職場にいる部下みたい

ところが。このMさん、別の人と話すときは、まともなんです。ここでもう一人出てきて、それがIさん。若い女性のアナウンサーです。Mさんは、Iさんと話すときは、普通。ちゃんと筋の通った話し方ができます。

私にしてみると、ビックリ。え?この人、あのイケてない話し方するMさんだよね?ものすごくまともじゃない?って。

で、ここで気づくわけです。人の話し方って、相手によって変わるんだなって。これは想像ですけど、Mさんから見ると、MCのKさんは、ちょっとこう、威圧感があるんでしょうね。ヘンなことを言ったら叱られる、みたいな。まあ、Kさん自体が芸人としては「狂犬」みたいな売り出し方をしていたせいもあるんでしょうけど。

そういう威圧感のある人の前に出ると、Mさんは話し方がしどろもどろになっちゃう。とってもロジカルじゃなくなっちゃうわけです。

厳しく指導する上司の落とし穴

これ、上司と部下の関係で考えてみましょう。部下に対して厳しく指導する上司がいたとします。当然、部下はその上司に威圧感を感じてしまうじゃないですか。そうすると、その上司の前に出ると、話すことがしどろもどろ。

それを聞いた上司は指導します。「いや、報告するときは結論から話すようにして下さい。それで結論は?」。部下。「はい。結論としては、先日のご指示に基づいて私もいろいろと調べた結果なんですが、情報が十分に集めることが難しくて…」。上司。「いや、だから、結論は?け・つ・ろ・ん。分かる?」

もう、悪循環ですよね。上司にとっても部下にとっても良い事は一つもありません。

だとしたら、まずは部下との関係性を良くしましょうよ。そのためには、その部下の強み、長所、得意分野にフォーカスするのが良いですよ、となります。

部下に得意な仕事を任せる

仕事の割り振りもそうです。部下が得意、あるいは好きな仕事をできるだけ割り振ってあげる。で、「どう?あの仕事、進んでる?」と聞いてあげる。部下は答えます。「先日のご指示に基づいて私もいろいろと調べた結果なんですが…」。上司。「あ、と言うことはうまく進んでるんですね?」。「ハイッ」。

まあね、最後の方の会話は冗談っぽいですけど、そういう風にいい関係を創った方が仕事もうまくいくんです。もちろん、これは私が勝手に妄想したことではなくて、研究によっても証明されています。キャメロン先生とクイン先生がまとめた本に記載されているそうですね。私は元の本は当たってないんですが、日本語では松尾先生の「部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ」というのを読みました。

ただ、マネージャーの方にとっては、部下の強みを見つけるのって、けっこう難しい場合がありますけどね。その部下に対するネガティブな評価が自分の中にできていると、ついつい「アイツはダメだ」って思っちゃうじゃないですか。こう、思い込みにとらわれて、その部下が本来持っている良い部分が見えない、みたいな。

そんなときは、チェックリストを使うといいと思います。たとえば、ストレングスファインダー。本にもなっているので、ご存じの方もいるかもしれません。アンケート形式の質問に答えていくと、あなたの強みは○○と□□ですよ、みたいに出してくれるものです。

べつに、そのストレングスファインダーのアンケートを部下にやってもらう必要はありません。そうではなく、強みの一覧をチェックリストとして使うんです。全部で34の強みがあると言われていますけど、着想、未来志向、分析思考…などなど。さすがに34個もあったら、どれか一つぐらいはその部下の強みとして当てはまりそうじゃないですか。

あえて言葉を飾らずに言うと、上司にとっては自分で自分を洗脳すると言ってもいいと思います。何とか部下の強みを見つけて、そこにフォーカスする。これが部下育成の大事な大事なこつの一つです。

ときには「時責」であきらめる

ただ、最後に追加。教科書的にはここで終わりなんですけど、実務的な話をしましょう。というのは、どれだけ上司が頑張って自分を洗脳して、強みにフォーカスして対応しようと心がけても、それが響かない部下というのは、います。

そんなときは、あきらめるというのもひとつの方法論だと私は思っています。上司だって人間ですからね。「これ以上は無理」というラインを引いておいた方が、いろんな意味でいいでしょう。

ただ、そのあきらめるときにコツがあって、自責にしない。「あぁ、自分の指導力がないんだなぁ」というのは、健全な考えじゃありません。

じゃあ、他責?これもダメ。「アイツはそういう人間だから」とレッテルを貼って決めつけるのも良くないです。

私がオススメしたいのは、タイミング。「いまは、彼にとっても変わるタイミングではないんだな」という割り切りです。時間の責任と書いて時責って言っていますけど、その方がより悔いを残さないあきらめ方です。

だって、将来、変わる余地を残しているじゃないですか。「今は変わるタイミングではない」。つまり、何かキッカケがあれば変わるかもしれない、と言うことですからね。

そんな時間の責任も含めて、部下への対応を考えていただけるとよいかと思っています。

 

前ページ
ハイテク展示会CEATEC(シーテック)に行って分かった、メタバースが研修には「ナシ」と言い切れるわけを読む
1DayMBAのページに戻る 次ページ
ボス・マネジメントという幻想にはリスクがあった~特異性信用でひもとくホンモノの上司の動かし方を読む

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中