先日の研修で、「建設的対立」(constructive confrontation)という話をさせていただきました。これ、アメリカでも重要視されているようで…
米国でも重視される建設的対立
まずは研修の流れから。
ファシリテーターは中立の立場ではなく当事者型であるべき
と言う解説をしたところ、
そうすると、社内で当事者同士の意見がぶつかることがあるのでは?
と言うご質問をいただいて、
むしろ、意見がぶつかることが健全。それが建設的対立
と言う流れであったと記憶しています。
研修の際には、個人のスキルとしてのファシリテーション、もしくはファシリテーター型リーダーシップが主なテーマでしたが、組織の文化として取り組もうというのがこちらの米国発の記事です。「職場で建設的な意見の相違を許容する文化を築く (Building a Culture of Constructive Disagreement in the Workplace)」。
ちなみに、記事中で「TD」という用語が盛んに使われていますが、これはTalent Development (タレント育成)のことです。タレントはテレビに出てくる芸能人ではなく、「能力」のことですから、日本語の人材育成と同義であると考えてください。
職場で建設的な意見の相違を許容する文化を築く
では、記事の内容を見ていきましょう。まずは、建設的な意見の相違のメリットから。
- 問題解決とイノベーションの強化
- 意思決定の精度の向上
- 従業員のエンゲージメントとオーナーシップの向上
という点が挙げられています。
エンゲージメントの向上は、ちょっと微妙な気がしますけれどもね。記事中では、
意見の相違があったときに自分の意見が聞き入れられていると感じられる従業員は、エンゲージメントを維持
すると述べられていますが、じゃあ、自分の意見が通らなかった従業員はどう感じるんだろう?と疑問に思ってしまいました。逆にエンゲージメントが下がるのかな?
では、どうやって建設的な意見の相違を生み出すのかというのが、下記の諸点。
- オープンなコミュニケーション チャネル
- 積極的かつ共感的な傾聴を重視
- 人格ではなくアイデアに焦点を当てる
- 敬意を持って議論するための基本ルールを確立する
これは、納得。とくに、「基本ルールを確立する」のあたりは、グラウンドルールとも共通することで、ファシリテーター型リーダーの役割でしょう。
建設的な意見の相違のために人事部ができる、もしくはやるべき事
さらに同記事では、人事部の役割についても述べられています。というのは、この記事を掲載しているのはATD(Association for Talent Development)という世界最大の人材育成に関する業界団体なのです。メンバーの多くは人事部門の人なので、記事もこのような構成になっています。私も2019年にはワシントンで開かれたATDの年次総会に参加してきました。
では、建設的な意見の相違を許容する文化を生み足すために人事部ができることも見てみましょう。
- 解決策の議論を促進する
- 共感を表現する
- 効果的でオープンエンド型の質問をする
というものです。最後の「オープンエンド」を補足します。質問は大きくは「オープンエンド」と「クローズドエンド」に分かれて、後者はイエス・ノーで答えられる質問を指します。たとえば、「あなたは今日朝ご飯を食べましたか?」というものですね。
一方のオープンエンドはイエスノーでは答えられない質問を指し、たとえば「今日の朝食には何を食べましたか?」や「朝食を食べると仕事のパフォーマンスは上がりそうですか?」などの質問を指します。
記事中では、このオープンエンド型の質問により、対立している人々に考えを促すことで議論を解決に道部けることが示唆されています。
このように、人事部のサポートの下でファシリテーター型リーダーが生まれ、そのリーダーたちが現場での対立を恐れないというのが、アメリカ企業の強さを生み出す秘密の一つなのだと思いました。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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