面接って人生にはつきものですが、面接官によって不公平ってありますよね、ぶっちゃけ。
たまたま厳しい人にあたってしまって評価が低くなって、なんだかなぁ、という経験は誰もが一度はあるのではないでしょうか。そんな悩みをデータが解決してくれる、という話を聞いてきました。
採用担当者による視点のぶれが会社にもたらす損失
面接官による不公平は、面接を受ける側にも困ったものですが、「面接をする側」にも損失をもたらします。たとえば採用面接で考えてみましょう。とくに新卒の採用のように大量の人を複数の面接官が判断する場合です。損失は大きくは二つあって、「本来とるべき人を面接で落としてしまった」(下図ブルー)というものと、「本来とるべきではない人を採用してしまった」(下図ピンク)というもの。
前者はたとえば、ちょっと「とんがった」感じの学生が保守的な面接官にあたってしまった場合に起こります。ひょっとしたら将来イノベーションを起こしてくれる人材かもしれないのに、頭の固い面接官から見ると「なんか生意気、ダメ」となってしまいます。後者は、体育会系の学生がイケイケの面接官にあたったイメージでしょうか。面接の場では話が盛り上がって即採用。でも、蓋を開けたら自分の頭で考えない「指示待ち君」と分かったけれど、後の祭り…。
入社がしばらく経って、二人の面接官が顔を合わせたら、「オレたち、もっと採用の視点をすりあわせないとまずいよなぁ…」となるのは間違いないでしょう(厳密には、とんがった学生は入社しないので、パフォーマンスは見えないのですが)。
これを解決するのが、データ。よくあるSPIによる性格情報以外にも、経歴やスキル、はたまた中学生の時の行動様式などから、「おそらくこの学生は将来パフォーマンスが高いですよ」、「おそらくこの学生は早く辞めちゃいますよ」などがスコアリングできるそうです。
これを見ながら面接官同士が、「なるほど、そういう風に見えるとデータは言っているんだ」と話し合えば、採用の視点もそろってきて、大きなメリットをもたらします。
採用だけではないピープル・アナリティクス
このような、人材マネジメント上の判断をデータで支援するのを「ピープルアナリティクス」と呼ぶそうで、その第一人者のPwCコンサルティングのディレクター、北崎茂さんにお話を伺ってきました。
ちなみに、ピープルアナリティクスは昔はHRアナリティクスと呼ばれていたのですが、適用領域が企業における人事制度を超えて広がっているので、いまではピープルアナリティクスと呼ばれているそうです。
実はスポーツの世界にも取り上げられていて、サッカー日本代表の本田圭佑選手がACミランに移籍する際にも、ピープルアナリティクスによる本田選手の「怪我の少なさ」が一つの決め手になったのだとか。野球では従来からセイバーメトリクスによるデータに基づいた意志決定がされていましたが、今やサッカーもそうなんですね。
北崎さん曰く、外資系はもちろん、日本の先端的な企業でも導入されていて、その分野も採用のみならず、
- 配置 (上司との相性、組織風土合致度、スキルの一致度、モチベーションなど踏まえて最適に配置する)
- ワークスタイル (メール、会議、外出など時間の使い方からハイパフォーマーの特徴を見つける)
- 退職リスク (辞めそうな人を早期に発見してアラートを出す)
などで活用されているとか。
機械が人を判断する近未来
この流れ、今後ますます加速していくのは間違いありません。
というのは、そもそもとしてピープルアナリティクスが重要視されてきた背景には、従業員や働き方の多様化、そして事業環境の変化(いわゆるVUCAワールド)があるから。
結果として従来の勘と経験に頼っていた人材マネジメントに限界が出てきましたが、この流れは不可逆ですから、むしろピープルアナリティクスの重要性はますます増していくはず(というか、もう人工知能が採用する時代が来ているかも)。
動的データ(その人がどのような言動をしているか)も取り込んで、より判断の精度が上がれば、ピープルアナリティクスを使っている企業、使っていない企業では業績にも差がつくはず。
そうなると雪崩を打つように「導入して当たり前」の時代が来ると予想します。もちろん、ヨーロッパを中心に、「採用には人間の判断が入るべきだ」との論調もありますが、経済的合理性の前にはなし崩しになりそうですね。ラッダイト運動をもっても産業革命は止められないわけで、むしろピープルアナリティクスが当たり前の世界に自分をどうなじませるかという方が、建設的な気がします。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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