ATDのICE (International Conference & Expo)、2日目の感想を共有します。ATDとはなんぞやというのはこちらから。

完全に見落としていたチャットボットの人材育成利用

今回のATDに参加して目的の1つは、テクノロジーをどのように人材育成に取り入れていくかのヒントを見つけるためです。たとえば、動画によるマイクロラーニング。日本でも最近は流行りつつありますが、米国ではどうなっているか、と。ただ、結論としてはこれは想定の範囲内です。シナリオ分岐型の動画があったり、バーチャル・リアリティ(VR)も簡素化やリッチ化などで多様性が出てきたりしていますが、まあ、だいたいそんなものだろうな、と。

一方で、日本からは完全に見えていないものがあって、それがチャットボットの活用。イメージとしては、自動化されたLINEです。人工知能が判断して、適切なメッセージをユーザーに送ってくれるというもので、日本でもLINEの「りんな」という女子高生に擬したチャットボットが話題になったことがありました。

これを人材育成に使うとしたら、フォローアップで。受講者に行動変容を起こさせるとしたら、研修やセミナーでの対面の場だけでは十分ではなく、チャットボットによるフォローアップが適しているのではないかという発想です。これは、おおいに「あり」だと思いました。

ボブ・パイクさんのチャットボット、「ボボット」

実例で紹介しましょう。ATD2019報告2日目で紹介したボブ・パイクさんも、チャットボットを使ったフォローアップに取り組まれています(末尾画像参照)。ロボットをもじって「ボボット」(Bob Bot)と名付けたそのサービス、登録するとメッセージが送られてきます。しかも、そのメッセージの最後が質問系で終わっていることに気づくでしょうか?What’s your name? (お名前は?)とか、had you heard about chatbots used in Learning before today? (チャットボットが人材育成で使われているって聞いたことありますか?)。

これに返事をすると、パーソナライズされたメッセージを次から送ってくれるのがポイント。単に学んだことを再度解説するだけでなく、心理的な親近感をわかせて学習効果を高めることができるのが、チャットボットならではのメリットなのだと思います。

様々な活用ができる人事のチャットボット

この分野を深掘りするために、4日目は「学習のためのチャットボット設計ベストプラクティス (Best Practices for Designing a Chat Bot for Learning)」と題されたセッションに参加してきました。スピーカーはMobile Coachという会社の創業者でCEOのVincent Hanさん。ユーモアも交えながら、チャットボットのさまざまな利用法を解説してくれました。

ちなみにVincentさんが言うには、チャットボットは必ずしもスマホには限らないとのこと。それこそ、ウェブ上のホームページで問合せ窓口をチャットでやっているのも、チャットボットの一例だとか。

ただ、こと学習、あるいは受講者の行動変容と言うことになると、やはり「プッシュ型」で「パーソナライズ」された内容を送れるモバイルのテキストが優れているのではないかとの見解です。

なお、チャットボットの活用場面は研修後のフォローアップだけではないそうです。新入社員の迎え入れ(オンボーディング、on boardingという表現をしていました)にも使えて、実際に離職率を下げる実績もあるそうですから、かなり応用範囲が広いサービスなのだと思います。

当社でも研修やセミナー受講後のフォローアップにステップメールを使っていますが、ひょっとしたらチャットボットを採り入れることによってより効果が上がるのかもしれません。

chat bot photoPhoto by Chat IRC Hispano

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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