上司にとって、部下の指導は悩ましいものです。何をどう指導すれば良いかも悩むし、どのようなタイミングで話を持ち出せば良いかも正解はないものです。ここでは、職場で問題が起こった時に、ロジックツリーを使いながら「見える化」することで、効果的に部下を育成する方法を紹介します。目指すべきは、みんなハッピー。上司は自分の仕事が減ってハッピー、部下も自分の能力とやる気がアップしてハッピーです。

てんやわんやのセミナー実施

部下の育成、たいへんだと思います。でも、一石二鳥でうまく行くやり方。仕事を片付けながら育成もできるという方法です。たとえば、先日セミナーの講師をやった時、とってもたいへんでした。テーマはZoomの使い方。あるお客様の会員向けに開催しました。そこに、初級者の方から上級者の方まで、幅広いレベルの人が参加したのです。

ご存じだと思いますが、私の講義のスタイルとして、質問は随時受けつけています。そうすると、初心者の方から、「参加ネームを変える時、日本語入力に切り替えるにはどうしたら良いですか?」っていうものすごい基本的な質問が来る

それを聞いた上級者の人は、「それ、Zoomの質問じゃないよね。ここで質問すべきことじゃないじゃない」と思いますよね。一方で上級者からは、「画面共有のときに、パソコン上の音声は…」みたいな質問が来る。聞いている初心者は、「え?何それ?」となっちゃいます。

それだけでてんやわんやじゃないですか。ところがそこに別の質問が来るわけです。「iPadでは、どうやったらいいですか?」もう、たいへん。だから、終わったら反省会。何が問題で、今後どう対応したら良いんだろう?って。

反省会は育成の機会

もちろんそれは、単なる反省会ではありません。私にとっては、部下指導のまたとない機会です。だってね、うまく行かないことがあったわけじゃないですか。それに対して対策を考える。すなわち、問題解決を指導するまたとないチャンスなのです。反省会でも、最初はいろんな意見が出るわけです。「参加者のレベル感がそろっていなかった」という状況から、「今後はレベル感をそろえないと」という問題意識、さらには「そのためにはチェックテストを事前にやってもらおう」みたいな打ち手とか。

でもね、そういう風に、思いついたことをバラバラと発言するだけでは、問題解決の力は高まりません。なんでかっていうと、「本当は何が問題なのか」を見つけてないから。表面上の「困ったこと」にいちいち手を打っても、またどこかに問題が発生します。

あるいは、打ち手も、「とりあえず思いついたもの」しか考えていないから。よく考えれば他にもいろいろな打ち手があるはず。それを考えずに、パッと頭の中に浮かんだアイデアをやってしまうというのは、無駄です。後でこんなことが起こるんですよ。ある打ち手をやってみました、でも、そのせいで失敗しちゃいました。

たとえば、参加者のレベル感をそろえるための事前チェックテストなんて、うまく行くはずありません。そもそもやらないし、仮にやることを強調したら、セミナー参加者がいなくなっちゃいますからね。

部下の指導は議論の「見える化」

そこで上司として部下を指導するために何をやるかというと、「議論の見える化」です。ゴチャゴチャした話を整理して、「こういう状況だよね」、あるいは「こういう打ち手もあるよね」を目に見える形で示すんです。

そして、そのためのツールがロジックツリーです。こう、図でいうと、左から右に論点を広げながらまとめていくものですね。幹があって、枝葉があってと言う形にも見えるので、「樹形図」ともいわれています。だから「ツリー」と呼ばれます。

反省会をしながら、これを書いていくわけです。「てことは、今回の問題の原因は、受講者の要因と、講師の要因と、オペレーターの要因に分かれるよね」みたいな感じで。もちろん、その下を細分化です。たとえば、「講師の要因」の下はどういう風に分かれるか?「説明の要因」と「質問受けつけの要因」に分かれます。今回は質問受付がたいへんになっちゃったから、じゃあ次回から質問を受けつけないようにしましょうか、なんて対策につながりそうですよね

そして、受講者の要因も細分化。「Zoom習熟度の要因」、「パソコン習熟度の要因」、そして実は、「接続端末の要因」というのに分かれます。これも、「じゃあ、習熟度をある程度同じレベルにするか」、「iPadの人が混じるとたいへんなので、パソコンだけに絞っては?」という案につながりそうです。

そして、ここからが大事ですが、この「見える化」、最初は上司が行うんですが、だんだんと部下自身にやってもらいましょう。つまり、「じゃあ、○○さん、状況を整理するためのロジックツリーを作ってもらえますか?それを見ながら打合せをしましょう」って。だってそうじゃないですか?「見える化」をいつまでも上司自身がやっていたら、とても仕事が回りません。あるいは、部下の力が上がりませんし、いつまでも上司に依存体質になっちゃいます。

むしろ大事なのは、まずは上司がやってみせて、それを部下自身ができるようにしてあげることなんです。ちょっと想像して欲しいのですが、部下がロジックツリーを創ってきてくれて、「こういう状況なんです。だから、こういう手を打ったら良いのではないかと思うんですけど」と提案してくれたら、上司にとってはうれしいですよね。思わず、「あぁ、あなた、ようやく仕事が出来るようになったんだね」と言いたくなります。

はい、ここで微妙に毒を入れてますけどね。毒ってのは、上司のホンネね。なにかあったときに、「どうしたら良いでしょう」って聞いてくる部下は、困るよな~って世の中の上司は思ってますからね。「あぁ、またこれだ。なんでこの人は自分で考えないんだろう」。それが変わったら、上司にとってはハッピーです。

そして、大事なのは、部下にとってもハッピーです。だって、そんな風に部下自身が提案して、それを実行に移すのであればやる気が上がるじゃないですか。上司からの一方的な指示に従うんじゃなくて、自律的にできます。加えて自分の能力が上がるわけですからね。部下もハッピーです。

ということで、ここまで、部下育成のための「見える化」の話をしてきました。まとめると、職場で問題が起こった時は部下育成のチャンスです。そして、その際には「見える化」することでしっかりとした問題解決をしていきましょう。ゆくゆくは部下にやってもらうようにして、部下自身の問題解決力を上げると、みんなハッピーですよ。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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