会議の場で意見をまとめて合意を形成するファシリテーションは、ビジネスパーソンに必須のスキルです。これを実現するのが「メタ思考」。一歩引いた視点から考えて判断軸を明らかにすることで、「心理的なしこり」を残さずに納得の合意形成ができます。このメタ思考は汎用性が高く、受験や就活のグループ討議でも使えるすぐれもの。それこそ家族ぐるみで使える方法論を紹介します。

会議の参加者の判断軸を確認する

会議の場で意見をまとめるのに苦労するときがあります。やたらと時間がかかる割には全然物事が進まない、のような。それを解決するのがファシリテーションです。しかも中立の立場ではなく当事者型のファシリテーションというのは以前もこのライブ配信でお届けしました。今回は、ファシリテーションの中でも特に「意見をまとめて合意を形成する」というところに絞ってそのノウハウをお届けします。

たとえば、ある会社で、社内の勤怠管理システムを導入するとしましょう。最近流行りのリモートワークにも対応しているシステムが欲しい、のようなイメージです。システムの候補が色々と上がってきたとしましょう。A社、B社、C社、など。その中から1社に絞らなければいけないんだけど、まとまらない状況です。

システム部門はA社を推して、人事部門はB社を、経理部はC社を推している。このようなとき、「A社だ!B社だ!」と言い合いになっても決まるものではありません。仮に決まったとしても、心理的なしこりが残ってしまいます。

実はそういうときに決めるのはコツがあって、それが「判断軸」を明らかにすることなんです。それぞれの部門でその会社を推すというのは、理由があるはずです。たとえば、システム部門がA社を推しているのはシステムの安定性が高いから、人事がB社を推すのは入力が簡単だから、経理がC社を推すのは導入費用が安いから、のような観点が判断軸です。

ここに来てようやく議論のベースができます。合意を形成できないのは判断軸が違うからだ、というのがわかって、では安定性と入力しやすさと費用のバランスをどうする?あるいはどれを重視するか?を決めることになります。

判断軸をそろえることで合意できる会議

たとえば、とにかく入力しやすさだよね、となればB社の製品に決まる、という流れですね。もちろん、3つの判断軸の中で優先順位が決まらない、という可能性はあります。ただ、多くの場合議論はそこまで行かないものです。たいてい、A社がいい、B社がいいという話に終止してしまって。なので、会議の場で意見をまとめるためには判断軸を明らかにしましょう、となります。

ちなみに、こういうふうに具体的なものではなく「判断軸」を持ち出すようなのを「メタ思考」って言います。より抽象的な大所高所の視点を持つってことです。このメタ思考、会議の場だけでなく様々なところで使えます。先日気づいたんですが、受験や就活でも使えます。というのは、グループ討議ってあるじゃないですか、あれ、メタ思考ができると活躍できるんですよね。

グループ面接でも使えるメタ思考

先日たまたま家<ウチ>の子供とそういう話をしてたんですよ。最近は高校受験とかでも、推薦の面接でグループ討議があるんだっていうことで。たとえば題材として、海外から高校生が旅行にやってきました。日本の観光地のどこを案内してあげましょうか?というもの。

普通の受験生であれば、浅草がいいと思います、渋谷新宿がいいと思います、みたいな具体名を挙げますよね。センスのいい子でも、「私は浅草を案内します、なぜならば日本の伝統を知ってほしいからです」と主張と根拠を並べるぐらいでしょう。

でも、それだけだとグループ討議の中で埋もれてしまいますよね、面接官だって、「はいはい、よくある発言ね」、みたいな感じで。評価してもらえるわけではありません。そこで、メタ思考です。浅草、渋谷という具体的な地名ではなく、一歩引いた視点を持ち出します。いやね、結局は海外の人には「伝統的な日本」と「今の日本」を知ってもらうといいと思います、と判断軸を述べるわけです。

そうすると、「やっぱりまずは伝統を知ってもらいたいから浅草だな」と結論が出ます。議論の構造としては会議の場で意思決定するのと全く同じです。聞いている面接官の方も、「おっ」って思いますよ。この子は賢いなぁって。さらに、別の判断軸も持ち出せばパーフェクトです。さっきの浅草、渋谷だけでなく発想が広がりますから。「浅草も渋谷も人工物ですよね、加えて日本の自然も案内できると良いと思います」と。

そうですね、今度は人工物と自然という判断軸が出てきました。具体名もアイデアが広がります。じゃあ、富士山も案内しようか、みたいに。もちろん、受験や就活に限りません。とにかくメタ思考は極めて色んな場面で使える方法論です。ぜひ普段から意識していただければと思います。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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