「マジメだけど、成果が上がらない部下」がときどきいます。そのような方が陥りがちなのが、「手段の目的化」。つまり、上司から指示されたことを、「何のためにやっているか」を考えずがむしゃらにやるというパターン。このような方への指導は、2段階に分けること。第1段階は、もちろん仕事の目的を考えてもらうことです。そして、より重要な第2段階は、その方に「考えさせる」こと。このために上司必須の対話による指導法を紹介します。

手段が目的化する部下は成果が上がらない

マジメなんだけど、成果が上がらない部下っていませんか?実はそういう人には共通点があって、それが、「手段の目的化」。つまり、「何のため?」を忘れて、目の前のことに追われてしまっているんです。

たとえば、営業のお仕事。部下に指示するわけです。テレアポして。ド新規のお客様に電話をして、商談を設定して。1日50件目標ねって。

真面目な部下は、一生懸命電話をかけてくれます。「○○という会社の□□です。御社でマーケティングを担当している方につないでいただけますか?」。断られても、何回も何回もかけてくれる。

いやいや、これでは成果でないですよね。そんなときは、そもそもの目的を考えさせてあげましょう。いやね、目の前の電話をかけることに一生懸命みたいだけど、目的考えて。あくまでも、商談を設定するためだよね?

しかも、商談設定って最終的なゴールじゃないじゃない?最終的なゴールは、受注をいただくこと。つまり、ニーズがありそうなお客様との商談を設定しないと意味ないわけ。

だとしたら、テレアポも工夫できる?話す内容、話す口調、電話をかけるタイミング、電話をかける相手、いろいろ工夫の余地はあるんじゃない?

上司にとっては当たり前の、電話をかける→商談を設定する→受注をいただくという目的と手段の流れが、この部下の頭の中では整理できてなかったわけです。結果として、手段が目的化して成果があがらないという例でした。

「考えない方が楽」

ただ、これ、もうちょっと掘り下げていきましょう。なんでそういう風に手段が目的化しちゃうの?実は、部下は頭の中でこういう風に考えているかもしれません。「ウチの会社では、考え無い方が楽なんだ。言われたことをそのままやるのが、部下には求められているんだ」

本来であれば、目的を押さえて、そのための手段をあれこれ考える。その中から、これをやってみようというのを決めて、上司に進言する。「いやね、テレアポよりも、最近流行のLINEを使ったプロモーションやりませんか?」。スマホアプリのね。LINEの公式アカウント使って、クーポンを配って…みたいに。

ところが、過去の上司は、それを一切否定。「そういうのはいいんだよ。まずは言われたことをしっかりやりなさい」。

結果として、この人はどんどん考え無くなってします。先ほどの、手段が目的化しちゃう人材のできあがりです。

じゃあ、どうしたらよいか?そういう手段が目的化しがちな部下に対して。答は当然、さっきの逆です。部下から意見を聞いて、それを採り入れてあげることです。「よし、じゃあ、それでうまくいくか、検証してみてくれ」って部下に指示するわけです。

なんて言ってると、上司の方からクレームが来そうですよね。「いやね、言ってることは分かるけど、ウチの部下はそういうレベルじゃないんだよ。アイデア出せって言うと、わけの分からないアイデアを出してくるんだよ」って。

いったん部下の考えを受け止める

たとえばさっきのLINEを使ったプロモーションだって、使える業界、使えない業界ってありますからね。法人向けビジネスだったら、LINEなんて意味がないでしょう。

もちろん、そういう上司の意見も分かります。でもね、例えそうであっても、いきなり否定せずに聞いてあげましょう。「あぁ、LINEね。確かに最近流行だもんな」。

そう、いったん受け止める。その上で、違うと言うことを伝えます。

「でもさ、ウチの業界って、法人向けビジネスじゃない?そういう場合でもLINEって使えるかな?」

部下は気づきますよね。あ、たしかに、ウチではLINEはムリだな。

そしたら上司は、さらに考えを促します。「うん。でも、そういう風に考えるのはとてもいいと思う。ぜひ、他のアイデアも考えてみて。ただ、そうは言っても目の前の商談設定があるから、テレアポにも力を入れてね」

まとめると、いきなり否定するのではなく、一度受け止める、その上で、違うと言うことを伝える、そして、さらなる考えを促す。

もちろん、一度きりではないです。何回も続けていきます。そうすると、部下もだんだん気づいていくわけです。「あ、ここでは自分が意見を言ってもいいんだな。自分も考えることが求められているんだな」って。

そうですね。勘のいい人は気づいていると思いますが、「心理的安全性」が生まれるわけです。そうすると、何が起こるか。もちろんこの目の前の部下も成果が上がるんだけど、他のメンバーの行動も変わってきます。それこそ、「自分も考えることが求められているんだ」って気づくことは、今の時代重要ですからね。テレアポだけじゃなく、いろいろと試行錯誤する必要があるので。

ということで、上司の方であれば、今回紹介した一連のやりとりをマスターしてください。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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