「イノベーション」という言葉、最近ビジネスの現場でよく聞かれます。日本企業が再度成長の軌道に乗るためには必要だと言われていて、実際に大企業内でイノベーションに取り組んでいる方もいるでしょう。難易度が高いと思われがちですが、実はそこには「成功法則」があります。それが、異業種から学ぶこと。具体的には、次の5つの観点で考えます。1. 顧客セグメントを変える、2. 価格/収入構造を変える、3. 顧客への提供価値を変える、4. 外部とのコラボレーション、5. バリューチェーンで考える。下記の会社の実際の事例をもとにこの方法論を分析します。ベネッセ、ワークマン、紳士服のAoki、西松屋、マイクロソフト。

顧客セグメントを変えることでイノベーション

まず、イノベーションの代表事例としてはベネッセさん。そう、あのチャレンジ、あるいはしまじろうのベネッセさんです。え?どういうこと?と思ったかもしれませんが、実は昔は「福武書店」という名前で、学校向けの生徒手帳を作っていたんです。

ただ、そのビジネスだけだとここまで大きな企業には慣れなかったですよね。少子高齢化でマーケットは小さくなるわけだし。

ところが。ところが、あるとき福武書店の人は考えたわけですね。生徒手帳を作っている関係で、学校によく出入りして、問題集とかをよく見ている。そうすると、良問と悪問、つまり姓との学習につながるいい問題と、ダメな問題が分かってきた。自分たちで問題集を作って販売したら、売れるのではなかろうか?と

そしたらドカンとあたって、大企業にまで成長したんです。まさにイノベーションを体現しています。

これ、結局何かって言ったら、顧客セグメントを変えたわけです。それまでB2B、つまり法人、というか学校だからB2スクールみたいだったビジネスを、消費者向け、つまりB2Cに変えたのです。そこからイノベーションが生まれた、と。

しかも、こういう顧客セグメントの変更は、他の業界でも応用可能です。最近の例でいえば、WORKMANさんとかそうかもしれません。もともとは作業着を販売していたわけです。そうすると、一般消費者は買わないですよね。工事業者さんが買いに行くわけで。

でも、あるときこれもワークマンの方が考えたんでしょうね。ウチの商品、B2Cにも売れるんじゃないか?って。それがあたって、ドカンと業績アップです。

ということは?ということは、イノベーションには勝ちパターンがあるわけです。他業界でうまく一体ノベーションの例を自業界に持ち込む。ちなみに、「他業界で」というところがポイントです。自業界だったら、「あ、あの会社、あんなことやっているな」っていうのは見えているし、当たり前の発想しか出てきません。そうではなく他業界。「へぇ~、あんなやり方があるんだ」というのを真似るんです。

イノベーションのための5つの視点

その真似をする際の観点を、ここでは5つに絞って説明をしていきます。先ほどの顧客セグメントを変える、に続いて二番目は、2. 価格/収入構造を変える。これは分かりやすくいうとサブスク。これまで売りきりだったサービスを定額課金にすることによってお客様は買いやすくなる。企業の側から見ると、顧客獲得コストが下がるし、継続的に課金できるのでライフタイムバリュー、つまりお客様の生涯価値も高くなって、うまく行けばいいことづくめです。

もちろん、うまくいかない場合もあります。例えば、紳士服のアオキさん。スーツのサブスクを始めたけれど、うまくいかなくてあっという間に撤退しました。女性向けのアパレルではサブスクがうまくいっているんで、それを「他業界」の成功事例とみて、イノベーションに取り組んだんでしょうね。

ちなみにこれ、世の中の評論家の中には失敗事例ととらえている人いますが、私はイノベーションの成功事例だと思っていますけどね。だって、撤退の意志決定のスピードが素晴らしいじゃないですか。たしか、サービスを始めて半年ぐらいで撤退したんじゃないかな。パッと始めて、うまくいかないと思ったらパッとやめるという、イノベーションの素晴らしい事例です。

では、イノベーションの観点3番目に行ってみましょう。それが、「顧客への提供価値を変える」です。有名なところでは、格安航空会社。機内でのおもてなしサービスをなくして、代わりに価格も下げたんです。そういうのを求めていないお客様もいるわけですからね。ということは、提供価値を少なくする延べもイノベーションは成り立つわけです。

これを真似たかどうか分からないんですが、ベビー用品販売の西松屋さんでは、あえて接客を「しない」んですってね。つまりお店に行っても店員さんが話しかけてこない。いいじゃないですか。こっちも気楽に選べて。店員さんだって、お客様に声をかけてイヤな顔されるより、もっと有意義なことに時間を使えるでしょう。これまたウィン-ウィンなイノベーションの気がします。似たようなところでは、保険業界もそう見えるかな。ネット生命って、説明の手間を省いていますからね。従来型のビジネスモデルだと、生命保険の販売員の方がお客様のところに足を運んで詳しい説明をするというのが主流でした。それを省いて、その分保険料も安くしますよ、というイノベーションです。

最大手の日本生命さんも「はなさく生命」というブランドでネットに参入してますからね。2019年からだそうですけど、

では、イノベーションの観点の4つ目。「外部とのコラボレーション」。たとえばこれは、外部のアフィリエイターを上手に使っている例としてアマゾンさんとかがあたりますかね。アマゾン本社とはまったく関係ない外部の人間が、勝手にamazon上の商品を紹介します。この本、いいですよ、って。もし売れたらそのアフィリエイターさんにamazonから手数料が支払われる。モノが売れてアマ村もハッピー、手数料をもらえてアフィリエイターもハッピーです。

こういう外部とのコラボレーションをもっと上手やっているのが、google。というか、youtube。そう、外部のyoutuberに動画をたくさん掲載させて、そこで視聴者を惹きつける。結果として自分たちの広告プラットフォームとしての価値が上がる、というのを本当によく作り込んでいます。やっぱりこれも、win-win。少なくともこれまでは。

バリューチェーンで考えるイノベーション

では、5つ目。「バリューチェーンで考える」です。まずバリューチェーンですが、ひとつの製品が最終消費者に届くまでに、どの様なビジネスが存在するかを表したものです。例えばパソコン業界で考えてみましょう。パソコンが消費者に届くまでには、当然その販売業者さんがいます。ビックカメラさんとかですかね。

でも、その背後には、パソコンメーカーさんもいます。HPさんとか。そしてその背後にはパソコンのパーツを作っているメーカーさんがいます。インテルさんとかNvidiaさんとか。さらにその背後には、ソフトを作っているマイクロソフトさんがいて…そうやって、順繰りに業界の関連をたどっていくのがバリューチェーン。チェーンは鎖のチェーンです。まるで鎖のように連結して、ひとつの業界をなしていることを表すわけです。

このバリューチェーンで考えると、イノベーションが思いつけるんですって。例えば、先ほどのパソコン業界。ビックカメラ、HP、マイクロソフト…と挙げてきましたけど、あるときマイクロソフトさんが考えたわけです。「ウチだったら、ソフトだけじゃなくてパソコン本体も作れるんじゃない?しかも、それを直販で販売できるよね?」って。

それでできたのが、サーフェスです。あれ、ソフト、つまりWindowsは当然マイクロソフト製ですが、ハードウェアもマイクロソフト製ですからね。バリューチェーンを統合することによってヒット商品を生み出した、という事例です。

ということで、まとめてみましょう。まず、イノベーションを起こすには勝ちパターンがある。それは、異業種での成功事例を自分の業界に持ち込むこと。その際の観点は5つ。1. 顧客セグメントを変える、2. 価格/収入構造を変える、3. 顧客への提供価値を変える、4. 外部とのコラボレーション、5. バリューチェーンで考える。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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