管理職(マネージャー)として転職することは、プレイヤーとしての転職よりもハードルが高いものです。したがって、より手厚いオンボーディングが必要になります。具体的には、オンボーディングの3要素、業務知識、エンゲージメントUP、社内人脈に加えて「影響力の源泉」の構築を手伝うのがオススメです。なぜこの影響力の源泉が必要なのか、そして具体的な取り組みを解説します。

ハードルが高い管理職としての転職

管理職として転職する場合、プレッシャーはかなり大きいものです。「即戦力」もそうだけど、お金の面でもそうなんです。え?どういうこと?給料?うん。給料もありますけど、それ以上に採用費がかかっています。仮にその管理職を、ヘッドハンター経由で採用したとするじゃないですか?そうすると、ヘッドハンターへの謝礼っていくらかご存じでしょうか?相場は、転職者の給料の30%。たとえば、年収1,000蔓延の人が転職したとすると、300万円をヘッドハンターに払うことになります。そりゃあ、転職してすぐ活躍して欲しいと思います。

とはいえ、いきなりというのはキツいです。しかも、プレイヤーとしての転職よりもマネージャーとしての転職の方がハードルは高いです。なぜか。

なぜならば、マネージャーって言うのは、「他者に影響力を発揮すること」が仕事の中心だから。部下に対して影響力を発揮して、やる気を高める、能力を高める。あるいは他部署との調整です。あっち部部署の課長と話して、仕事の割り振りを適正にする。

逆に言うと、影響力が弱い課長の下で働く部下はかわいそうです。仮にここに営業部があって、マーケティング部があったとしましょう。マーケティング部の課長が、影響力を発揮するのがヘタで、他部署との調整とかできない人だとしましょう。このマーケティング部で働く人は苦労します。本当はこの仕事は営業にやってもらうべき。課長に言うわけです。「課長、営業部の○○課長と話して、あっちに引き取ってもらってください」。ところが、うまくいかずにやっぱりマーケティング部で仕事をやることになる。

「あ~あ」。あの課長の下では仕事がやりにくいよなぁ、と感じるのは当然です。

となると?となると、転職してきたばかりの課長にとってはハードルが高くなるわけです。例えば先ほどのマーケティング部の課長に着任。じゃあ営業部の課長と調整…って言っても、相手がどんな人かわからない。何を材料に交渉すればいいか分からない。どれだけ優秀な人でも、入社したばかりで他者に影響力を発揮するのは難しいものです。そして、ここでオンボーディング。じゃあ、この新任の課長が、仕事になじんで成果を上げるようになってもらうため、会社から積極的に取り組みをしましょうよ、となるわけです。

オンボーディング勉強会でいただいた質問

これ、実は先日のオンボーディング勉強会で話題になりました。私が講師をやっていたわけですが、当初想定していたのは、新卒で、あるいはプレイヤーとして中途入社した人。ところが参加者の方から、「管理職の転職者の場合はどうしたら良いですかね?」と質問をいただいたんです。

言われてみれば、確かに。そういうケースも増えてるし、今後ますます増えていくでしょう。で、もちろん基本は同じです。オンボーディングの3要素、業務知識とエンゲージメントと社内人脈を広げてあげましょうよ。そう回答しました。ただ、その後いろいろ研究しました。アメリカではどうなっているのかは、とかね。やっぱりオンボーディングに限らず、アメリカの事例は参考になりますからね。それで出てきたのが、先ほどの影響力の話なんです。仮にここでは、管理職向けのオンボーディングをマネジメント・オンボーディングと呼びます。このマネジメント・オンボーディングでは3つの要素では十分じゃなくて、4つ目、影響力を発揮するのを手伝ってあげましょう、となります。

では、どうやって?はい、ここで出てくるのが他者への影響力のフレームワークです。このライブは指針の別の回で、「社内政治力」として取り上げました。実は対社に影響力を発揮するためには5つの要素がある、と解説しました。1. 社内の情報通になる、2. 権威を借りる、3. リソース配分の権利を握る、4. 同意見のグループを形成する、5. 専門スキルを高める、ですね。

こうみると、改めて転職してきた管理職の難しさがわかります。1. 社内の情報通になる。これは、ムリ。そもそも情報を知りませんから。3. リソース配分の権利を握る。これも短期的には難しいですね。4. 同意見のグループを形成する。これも、誰がどんな意見を持っているかわからないとやりにくいです。

管理職向けオンボーディング、マネジメント・オンボーディング

ということで、使えるのは2番目の「権威を借りる」。管理職として転職してきた人は、その上司、つまり課長が転職者だったら部長、部長が転職者だったら本部長、その人が、権威を貸してあげるわけです。「後見人」じゃないですけど、後押ししてあげる。それも、こっそりとじゃなくて、目に見えるように、この人に権威を課しているよ、というのを周りに示していきましょう。

そして、影響力に関してももうひとつ使えるのが5. 専門スキルを高める。これは、その業界の専門知識ではないです。これだといつまでたっても部下に敵わない。ではなくて、マネジメントスキルです。部下が成果を上げるように指導・育成するスキル。これを磨いて、「あの上司の下では仕事がしやすい、成長できる」と部下が思ってもらえればしめたもの。その後は仕事がやりやすくなります。

ということで、まとめてみましょう。まず、プレイヤーとしての転職よりもマネージャーとしての転職の方がハードルは高い。だからこそ、マネジメント・オンボーディングが必要。マネジメント・オンボーディングでは、業務知識、エンゲージメント、社内人脈というオンボーディングの3要素に加え、影響力の源泉を構築するのを手伝ってあげるといい、となりました。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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