楽天、使ってますよね?

私も楽天市場はもちろん、楽天トラベルや楽天証券など日常的にサービスに触れています。その成長の軌跡を聞く機会があったので、レポートします。キーワードは「組織開発」。

先を見据えて布石を打つのが組織開発

考えてみれば、一つの組織がわずか6人での創業から1万人を超えるまでになるのですから、そりゃすごいことです。しかも、とにかく頭数を揃えればいいわけじゃなく、優秀な人材を採用して、同じような考え方を共有する必要があるわけですからなおさら。

それを支えたのが「組織開発」という考え方で、要するに人材マネジメントシステムを、戦略的に作り込んでいきましょう、という意味合いです。

これ(↓)、私が米マサチューセッツ大学(UMass)のMBAのクラスで教えているときの資料ですが、一口に「人材マネジメント」といってもいろいろあって、それを統合的に、かつ「先読み」していこうというのが「組織開発」という言葉に込められたニュアンスです。

jinzai_management_zentai

要するに、「人が増えてきたから評価制度を…」、「風通しが悪くなってきたから何かイベントを…」のように「後だし」ではなく、「将来こういう組織になりたいよね」、「だとしたら、今からこれをやるべきだよね」とむしろ「攻め」の姿勢です。

もしくは、私のUMassのクラスをとってくれた方は、第3回のケースを思い浮かべてもらうと、「組織開発ってこういうものか」というのがかなりピンとくるはず。

「やりきる」ことが楽天の強み

で、楽天。冒頭述べたように6人での創業から十数年で1万人を超える組織になるまで、どのような組織開発の苦労があったんだろう?と興味津々で話を聞きました。お伺いしたのは、楽天株式会社の常務執行役員である杉原章郎さん。楽天創業時から参画されて、現在は人事・総務担当役員をされているので、組織開発の話を伺うにはベストな方。

色々と話題はありましたが、私の結論としては、「特殊なことはやっていない」に落ち着きました。

たとえば、組織の統合と分散で、時にはタテの事業ラインの意向を強めたり、時には横のファンクションに力を持たせたり。あるいは、評価制度をコンピテンシー(能力)と結果に分けて、能力には基本給で、結果にはボーナスで報いたり。きわめて王道的な施策ばっかりなんですよ。期待してただけに、ちょっと肩すかしを食らったような…。

ただね、話を聞けば聞くほど、当たり前のことを「やりきる」ってのはすごいことだな、と思い始めました。たとえば、全社的な情報共有のために「朝会」をやるのは、まあ、普通。でも、それを創業以来20年間ず~っと続けて、全社員が参加できるように場所を整えて、しかも経営者が自らの言葉で毎回話し続けるというのは、並々ならぬ努力が必要でしょう。

この継続のための仕掛けを作り、それをやることが「当然」というカルチャーをつくったことこそが、楽天の組織開発のキモなんだと思います。

考えてみれば、一頃話題になった「社内公用語英語化」なんてのもそうですよね。「ホントにできるのか?」と思う人もいたかと思うんですが、社員のTOEICの平均スコアが5年間で300点以上伸びた実績の背後には、「やりきる」姿勢があってこそです。

意思決定はトップダウン?ボトムアップ?

ちなみに、杉原さんのお話を伺ったのは、HRスクールの第2講としてです。前回お話しをうかがったGEの谷本さんからは、「リーダーシップ」という言葉が何度となく出てきましたが、今回の杉原さんのお話しの中では90分間「リーダーシップ」という単語は1回ぐらいしか出てこなかった気がします。テーマが違うといえばそれまでですが、ここら辺が、創業者が率いる会社と、既に何回も代替わりしている会社の違いなのかと、興味深く聞いていました。

このリーダーシップという観点では、ビジネスサイドの意思決定がどのように行われるかも聞いてみたかったですね。楽天のようにITビジネスだと、変化のスピードが速いので、現場に意思決定権限を下ろしているような気もします。でも、組織開発でビジネスの考え方が共有できていると、トップダウンでも機動性あるビジネス展開はできるのかもしれません。

rakuten eagles photoPhoto by ElCapitanBSC

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中