スマントラ・ゴシャールって、知ってます?
日本でも名著「個を活かす企業―自己変革を続ける組織の条件」で知られていますが、欧米ではマイケル・ポーターやヘンリー・ミンツバーグと肩を並べるほどの経営戦略の大家。
私のビジネススクール時代の恩師で、そんな「大物」に親しく指導を受けられたのは、とてもラッキー…というよりも、実はタネを明かせば、ちょうどその頃スマントラはソニーのCEOの出井氏とCOOの安東氏をインタビューすることになっていたため、その事前調査もできる日本人を探していたのです(※)。
実際にそのインタビューの場にも同席させてもらいましたが、なにせ相手は世界に名だたる名経営者。緊張でガッチガチになっていました。
ところが、スマントラがインタビューを始めると、その場の空気が一変します。インタビューされるほうもリラックスして、思いもかけなかった経営者としての素顔をかいま見ることができました。
(これが「質問力」ってやつか…?)
と痛感した私は、帰り道にスマントラに聞かずにいられませんでした。一体どのようにしたら、あのように場の空気を変えることができるのか、と。
スマントラの答はシンプルです。「Tomo、それは『好奇心とリスペクト』だよ」。
当時の私は、正直、その意味が分かりませんでした。「ふーん、そうなんだ…」と半ば聞き流していた言葉がだったのですが、不思議と自分がビジネスで苦境に立った時に、心の支えになっていたりします。
それが実は、新著「ほんとうに使える論理思考の技術」を書いた動機でもあるんですよね。
私自身も昔はどっちかって言うとロジック重視。
「論理的に突き詰めれば問題は解決できるはずだ」、なんて考えて、ディベートにはまったりもしました。
ただ、それだけじゃ仕事がうまくいくわけないですよね。いま考えるとハズカシイですが、当時はけっこうトンチンカンなことやってたんだろうなぁ…ううっ。
で、スマントラに話を戻すと、もともと彼はロジックに基づく「戦略論」の大家。でも、同時にその戦略の背後に横たわる経営者の心理にも踏み込んだ話をしていたのが、彼を他の戦略の研究家から一歩抜きんでた存在にさせていたと思うんですよね。
※このインタビューにもとづいたスマントラの研究の成果は、その後の著書「意志力革命 目的達成への行動プログラム」でも引用されて、私の名前もクレジットされています。ただ、この本を上梓した直後に、スマントラは脳梗塞により帰らぬ人となってしまったのは、返す返すも残念なことです。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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