ハイテクからほど遠かった産業に襲来するイノベーションの波
最近、「イノベーション」という言葉がバズワード化していますが、その背景には大企業の危機感があるそうです。
というのは、「イノベーション」が、いわゆるハイテク分野にとどまらないから。
たとえばホテル業界。
「ハイテク」とは程遠くって、イノベーションなんて起こらないと思ってたら、エアービーアンドビーなんてのが来ちゃったわけじゃないですか。これ、私もロンドンで使いましたけど、想像以上に便利で、おそらくホテルの利用は減っていくと思います。
あるいはタクシー業界もUberなんてのがあって、日本ではたぶんそれほど大きな潮流にはならないけれど、世界的に見ると既存のタクシー産業はかなり危機感を覚えるレベルだと思います。
で、冒頭に戻りますが、そんなハイテクからほど遠かった業界も、「ビジネスモデルを変えなくちゃまずいんじゃないか?」ということで、イノベーションに興味を持っているというのが昨今の事情だそうです。
カードが起こすイノベーション
じゃあ、どうやってイノベーションを起こすの?と言うときに参考になるのが、先日(2016年12月22日:木)に、当社のセミナールームで開催された、「ビジネスモデルナビゲーターセミナー」です。
当セミナーでは、書籍「ビジネスモデル・ナビゲーター」を理論的バックボーンとして使いながら、保守的な企業の中でイノベーションを起こす方法が議論されました。ちなみに、「保守的な」とは主催者は言っていなかったような気がして、むしろ私の解釈です。こういう「目に見える」手法ならば、たとえ保守的なカルチャーを持つ企業でも受け入れやすいんではないかな、と思った次第です。
1枚1枚には、過去にイノベーションを成し遂げてきた企業の着眼点が表示されています。たとえば、デルコンピュータが確立した「キャッシュマシーン」というイノベーション。これは、仕入業者にパーツ代を支払う前に、パソコン購入者からお金をもらうというもので、手許資金に余裕を生み出すところから名付けられたものです。
これによって、ある意味「リスクゼロ」で新たな投資をすることがデルコンピュータの初期の成長を支えた、なんて言われています。
もしもこれを、自社のビジネスに適用したら?という観点で考えるために上述のカードを使うのです。
55枚あるので、その分だけヒントがありますし、もしくは主催者は「類似法」と「対極法」言っていたかと思いますが、自社と似た業界のカードをピックアップする、逆にまったくちがう業界のカードを使うというのもアリだそうです。
たとえば、会社の中の何人かでワークショップをやれば、それだけでイノベーションのアイデアが出てきそうですよね。カードを使うなんて、一見ベタなアプローチですけど、保守的な会社では、このような目に見えるアプローチの方が安心感もあるし、多くの人を巻き込みやすいのではないかと思いました。
他のイノベーション手法との棲み分けも
ちなみに、若干マニアックな話ながら、このビジネスモデルナビゲーターという手法は、他のイノベーションを起こす手法とも併用可能だそうです。
- デザイン思考
- ビジネスモデル・キャンバス
- 顧客開発
などの諸分野ですね。おそらくは、会社のカルチャーやビジネスのステージにあわせてこれらを使い分けると、社内でも継続的にイノベーションが起こせるのではないかと思いました。
ただ、上記の手法はすべて欧米発なのが、個人的にはちょっと口惜しいですけどね。日本発のイノベーションってのもあり得るんじゃないかなぁ、と。
もっとも、日本人が得意なのはプロセスのイノベーションであって、ビジネスモデルのイノベーションは比較的苦手なのかも知れません。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中。