ハーバード・ビジネス・レビューの「企業の人材開発に『リーン学習方式』を導入せよ」という記事には、反対かつ賛成。その理由は…
リーン学習方式とは「必要なことを学ぶ」
こんにちは。MBAの三冠王ことシンメトリー・ジャパン代表の木田知廣です。「リーン学習方式」とは、次のようなものだそうです。
- 学ぶ必要のあることの核心を学ぶ
- 実際の現場でただちに使う
- 迅速なフィードバックを受け、自分の理解をさらに向上させる
- このサイクルを繰り返す
このやり方は、基本的には賛成。研修って、別にそれ自体が目的ではなくて、あくまでも何かが「できる」ようになってナンボですからね。
ちなみに、「リーン」は、もともとは生産現場で使われた概念で、「ムダのない」という意味です。トヨタの生産現場とかがその代表例でしょう。それが今では様々な分野に転用されて、ムダのない起業が「リーンスタートアップ」などとも言われています。
このリーン学習のコアになるのが、マイクロラーニングやアダプティブラーニングになるのでしょう。
リーン「だけ」が正解ではない
一方で、最近の潮流として、「リベラルアーツを学ぶべきだ」みたいのもありますね。本物のリベラルアーツを日本人は知らないという記事の中で、著者の山田順さんは、
日本で日本人の両親から生まれ、日本の教育を受けて育つと、真の日本人にならない。
と述べていて、「なんだ、オレ、真の日本人じゃなかったんだ」と愕然としました。てか真の日本人てなんだ?
子育てのみならずビジネスの文脈でも、山口周さんが
リベラルアーツはまた、専門領域の分断化が進む現代社会の中で、それらの領域をつないで全体性を回復させるための武器ともなります。
と述べていて、その重要性を指摘しています。
このリベラルアーツって冒頭のリーン学習方式と対象にあるような気がします。この二つの流れ、
- リーン方式によるクイック学習
- リベラルアーツによるスロー学習
の二つをバランスよく組み合わせることが、これからの人材育成には必要になってくるのでしょう。
人材育成への不満は妥当か?
ちなみに、元になったハーバード・ビジネスレビューの記事では、
2016年に世界の企業組織が研修に投じた費用は、3590億ドルにのぼった。
という事実とともに、既存の人材育成に対して下記の通り不満があるとの調査か結果が引用されています。
- 50の企業組織のマネジャー1500人を対象に行った調査では、そのうちの75%が自社の人材開発(L&D)に不満を持っている。
- 従業員の70%が、自分の仕事に必要なスキルについて熟達できていないと回答している。
- L&Dプログラムで学んだ新しいスキルを仕事に活かしているのは、従業員の12%でしかない。
- 最近のマッキンゼーの調査によれば、研修のおかげで業績が明らかに向上したと思っているのは、回答者のうちわずか25%だった。
ただ、これをもって「これからはリーン学習方式だ」と言うには、やや強引な気がします。上述のとおり、クイック学習とスロー学習を組み合わせないと、意外と大事なものを見逃すのではないでしょうか。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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