先日の中原先生のご著書「フィードバック入門」を読んで、「こんなの、できるかなぁ…」と悩んでいるとき、たまたま違うアプローチの本を見つけました。それが、松尾睦先生のご著書「部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ」です。
成功するマネージャーは部下の強みに着目する
本書における松尾先生の主張は明快です。
育て上手のマネジャーたちは、弱みを克服させるのではなく「部下の強みを探り、成長ゴールで仕事を意味づけている」
と。背後にあるのは、ポジティブ心理学などの発見で、
ギャラップ社の調査によれば、部下の強みを伸ばす指導をしているマネージャーは、そうでないマネージャーよりも、約2倍の成功を収めて
いるとの報告が紹介されています。ちなみに、「2倍の成功」と言うのは何を意味するかが気になったのですが、本書には説明されていませんでした。ソースはCameron, Quinn他編、Investing in Strength, Positive organizational scholarship: foundation of a new disciplineと言うことなので、時間があるときにでも当たってみたいと思います。
部下育成のリフレクション・サイクル
では、実際にどのように部下を指導するのか、の基本が、
失敗だけでなく成功も振り返らせ、強みを引き出す
ことです。具体的には、コルブの経験学習モデルを参考にした下記のプロセスが提唱されています。
経験する(ストレッチ:成長ゴールによる経験の意味づけ)
↓振り返る(リフレクション:失敗と成功の振り返り)
↓
教訓を引き出す (エンジョイメント:強みの認識)
↓
応用する (ストレッチ&エンジョイメント:強みの活用、強化)
ただ、このフレームワークを使う際には注意が必要と個人的には思います。というのは、「教訓を引き出す」というのは、意外と難しいから。
私は米マサチューセッツ大学のMBAで教えているじゃないですか。そこに来る受講者の方は優秀な方が多い印象です。でも、そんな人たちですら、「振り返り」をしてもらうと具体的な過去の事例「だけ」を振り返り、結果として汎用性のない教訓しか思いつかないことが多いのです。
これを乗り越えるため、自身の具体的な経験を抽象化して考えるのが「ラーニング・マトリックス」ですが、これをイキナリできる人はまれでしょう。これをサポートするために、上司の適切なアドバイスが必要でしょう。
部下のパフォーマンスが上がらないのは仕事の与え方が悪いから
ここまで、「ふむふむ、なるほど」と読んできましたが、「そうは言っても、弱みも克服させないと」と思いますよね。だって、部下の中には、当たり前のことを当たり前にできない人もいるじゃないですか。
しかし、本書において松尾先生は、
弱み中心のアプローチは、部下の防衛的反応を引き起こしたり、改善意欲を低下させやすい
として弱み克服のアプローチは否定しています。むしろ、仕事のパフォーマンスが上がらないのは、その部下の強みを発揮できるような仕事を与えてないからではないか、との考え方です。したがって、本書の後半は、いかにして成長を促すような仕事を作るかが説明されています。
とくに185p掲載の「中堅社員の成長を促す53の課題」はこの観点で参考になるものです。
画像はアマゾンさんからお借りしました。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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