「仕事が出来ない部下」の育成は上司にとっては難しいもの。ところが、「ハイパフォーマーの行動をマネする」という考え方で、この難しさを一気に乗り越えられるのです。そのための第一歩は、ハイパフォーマーが行っている、「些細だけど違いを生み出す行動」を発見することです。コンピテンシーという考え方で、この方法論を紹介します。
仕事が出来る人の共通点がコンピテンシー
職場で「できる人」っているじゃないですか?エース級の人材ってやつですね。あれ、他の人とは何が違うと思いますか?これを解く鍵が、コンピテンシーです。というのはですね、社内のエース級の人材を一堂に集めて分析してみるじゃないですか。そうすると、「共通する行動」をとっているんです。
つまり、「あの人も、この人も、そっちの人も、エース級の人材はみんな同じことをやっている」という行動があるんですね。と言うことは?と言うことは、その行動を身に付ければ、凡人でもエース級の人材になれるわけじゃないですか。実はこれが、コンピテンシー。そうですね。前回もお伝えした、能力を行動面から観察可能な形で整理したもの、です。そして、それを測定する手法としてのコンピテンシー・インタビューも紹介しました。
今回は、コンピテンシーのもうひとつのアプローチです。それが、先ほども言った、ハイパフォーマーに共通する行動です。ただ、厳密に言えば、職種はそろえた方が良いですけどね。つまり、営業なら営業、カスタマー・サポートならカスタマー・サポートと、同じ職種の方が成果につながる共通する行動が見つかりやすいです。•ただ、行動といっても、ものすごく突飛な行動というわけではないです。「他の人にはとてもマネできないようなリスクをとる」、「天才的なヒラメキで新たなアイデアを思いつく」というのではないです。だって、それだとマネできないじゃないですか。凡人が、ハイパフォーマーの行動を真似るというところにコンピテンシーを使った人材育成のキモがあるわけですからね。マネできない行動を見つけてもしょうがないです。•そうではなく、些細で見過ごされがちだけど、実はハイパフォーマンスにつながる行動をマネしたいわけです。
上手な講師のコンピテンシーは?
ここでは分かりやすく、講師のコンピテンシーの話をしましょう。私たちは講師の養成を手がけているわけですが、実はそこでもコンピテンシーの考えを採り入れています。たとえば、ハイパフォーマー講師に共通する、些細な、でも違いを生み出す行動といえば、アイコントロールです。これは、その名の通り、受講者のアイ、つまり視線をコントロールして、どこを見るかを指定するというものです。
たとえば、講義の初めはこんなセリフになります。「では、時間になったので本日の講義を開始いたします。一度こちらをご覧下さい」って。もちろん講義中も、アイコントロールを効かせながら進めていきます。「では、テキスト○ページをご覧下さい」、「では、ホワイトボードをご覧下さい」みたいな感じで。これ、何をやっているかというと、受講者の視線が向いている先をコントロールすることで、集中力をコントロールしているんですね。講師の話に集中させるコツです。
ところがね。考えてみて欲しいんですけど、ヘタな講師というのは、アイコントロールしていないんですよ。なんとなく話して、そうすると受講者もなんとなく聞いているのだか、聞いていないのだか分からない。でもね。そんなヘタな講師でも、アイコントロールを身に付けるだけで、上手な講師に一歩近づけるわけです。はい。ここまで来ると、些細だけど違いを生み出す行動を見つけて、それをマネすることでハイパフォーマーにつながるというイメージをお分かりいただけたのではないでしょうか。
コンピテンシー的観点で部下を育成する
で、ここからは上司の方へアドバイスです。今、ご自身が率いる部署で、成果をあげるために必要な行動はなんでしょう?というのは、部下が何人かいて、出来がいい人もいれば悪い人もいるじゃないですか。そういうとき、ついついその人の能力とかやる気のせいにしがちです。できる人は、「彼は元々地頭がいいから」とか、できない人は「そもそもやる気がないんだろうね~」とか。
でも、能力もやる気も目に見えません。本当にそれが高い成果につながっているかは分かりません。そこで、コンピテンシーです。自分の部署において、些細だけど違いを生み出す行動を見つけて、それをローパフォーマーにマネしてもらえれば、育成がグッと進む可能性はありますよね。明日からぜひ、そんな目で部下を見ていただくと、発見があるんじゃないかと思います
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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