組織文化とは、その会社の雰囲気。のんびりした社風、個人主義な雰囲気など。これを正しく管理しないと、上司がどれだけ頑張って旗を振っても部下がついてこないという状況になりがち。経営学では「戦略は組織に従う」と言われるが、どれだけ正しいことをトップが言っても、組織文化が正しくないと戦略の実行はできない。こんな問題意識お持ちの方にお勧めの、リッツ・カールトンホテルで行われているラインナップという手法を紹介する。

組織文化にこだわるリッツ・カールトンホテル

リッツ・カールトンホテルってご存じでしょうか?高級ホテルチェーンですね。実は、リッツカールトンは、組織文化にものすごくこだわっています。何でかって言うと、ホテルの満足度を決めるのって、対応してくれた個々のスタッフによるじゃないですか。荷物を運んでくれたボーイさん、受付の人、などなど。そのような人の行動を律する。つまり、顧客満足度を最大化させる行動をとらせたい。ただ、マニュアルで縛るのは難しい。お客様の要望は様々だから、マニュアルでは対応できない。ヘタすれば、マニュアルにないんで分かりません、みたいな対応をしてしまう。

むしろ、組織文化。マニュアルじゃないんだよ、ルールじゃないんだよ。お客様の満足度を最高にするんだ、それが我々の存在意義なのだ、一人ひとりのスタッフに思わせるために、組織文化にこだわっています。具体的に言うと、ゴールドスタンダート言われる価値体系です。つまり、自分たちの価値観を言葉にすることによって、組織文化を変えることができるのです。たとえば、モットーとして、We are ladies and gentlemen, serving ladies and gentlemenと言っています。あるいは、より具体的なレベルで言うと、「誇りと喜びに満ちた職場を作るために、すべての従業員は、自分が関係する仕事のプランニングに関わる権利があります」、なんていう説明になります。

組織文化を変えるリッツ・カールトンホテルの「ラインナップ」

ただ、もちろんこういう言葉を文章にしたからと言って、組織文化が変わるわけではありません。そりゃそうですよね。キレイなお題目だけ掲げて、実際には何も変わっていない会社っていろいろあります。そうではなくて、リッツカールトンは、浸透するための方法論を採用しているんです。それが、ラインナップと呼ばれるやり方です。毎朝朝礼があるじゃないですか。そこで、話し合うんです。担当者は日ごとに変わりますけど、担当になった方が、行動規範を読み上げ、それに関連する具体的な行動を発表するんです。他のスタッフは、その発表への賞賛、あるいは「自分だったこうする」という意見交換をするんです。ちなみに、「唱和」して「暗記」しようという話ではないんです。たとえば先ほどの、「誇りと喜びに満ちた職場を作るために、すべての従業員は、自分が関係する仕事のプランニングに関わる権利があります」、みたいな話だったら、私はお客様を迎え入れるために、最寄り駅からのご案内を詳しくした方が良いと思うんです、みたいなアイデアが出てきます。

抽象的な理念を具体的な行動に置き換える

これ、何をやっているかというと、行動の具体化なんです。モットーとかって、やっぱり抽象的じゃないですか。それを、ラインナップによる意見交換で、具体的な行動レベルに落とし込むんです。そうすると、スタッフの行動が変わる。結果として、ニワトリ卵ではあるんですけど、組織文化が変わってくるんです。

これ、ぜひ御社でもやってみて下さい。とくに、組織文化に問題意識を持っている方、たとえば、のんびりした社風なんだけど、今の時代このままじゃヤバイよな、と思われる方。まずは、部署ごとでいいです。自分たちのモットーを創って、それをラインナップで話し合ってみて下さい。間違いなく組織文化は変わります。

ただ、時間はかかりますけどね。実際、私が研修を通じて組織変革の変容をお手伝いした会社では、数年かかりました。数万人規模の会社だったせいもありますけど、最初はやっぱり変わらないんです。でも、5年ぐらい経つと、アレ?と気づくんです。なんだか雰囲気変わっていない?、と。 つまり、上司が本気になって、正しいやり方を知って、継続していけば、間違いなく組織文化は変わります。

ぜひ、そんなキッカケに、このライブ配信をしていただければと思います。 ということで、今日は「リッツ・カールトンホテル躍進を支える組織文化変革ツール、「ラインナップ」。そのほんとうの意味とは?」と題してライブ配信をお届けしました。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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