ビジネスパーソンにとっては「必須科目」とでも言うべき会計は苦手に思う人が多いものです。これを乗り越えるのが「海賊式」の学び方です。多少の厳密さを犠牲にしても、まずはざっくりと物事を理解するこのやり方ならば、会計が「面白い」と思えること間違い無し。そして、「海賊式」にはもう一つ意味合いがあり、それが会計の「成り立ち」を知ることなのです。実は会計は海賊が分捕品を山分けするところから生まれたという説があるのです。

厳密さを犠牲にしても分かりやすく伝えるのが海賊式

会計はビジネスパーソンにとって圧倒的に重要だ、というのは以前のライブ配信でもお話しました。海外のビジネススクールに留学して、真っ先に学ぶのがアカウンティング、つまり会計ですからね。ところが、日本人のビジネスパーソンには苦手な方が多いものです。これを乗り越えるのが海賊式です。よくね、「海賊版」ってことばがあります。正式じゃない、みたいなニュアンス。同じように、多少正確じゃなくても。細かい正確性は犠牲にしても、ざっくりと物事を学ぼうという方法です。

たとえば、損益計算書のチェックポイント。これを、ずばり、利益率ですよ。しかも、営業利益÷売上ですよ、と言い切っちゃうわけです。これ、厳密には色々ありえます。インタレスト・カバレッジだって大事だよね、とか、いや、利益率と言っても粗利率のほうが重要だよね、とか。でも、それを言い出すと初学者はわからなくなっちゃいます。だからズバリと、「営業利益÷売上高」の利益率ですよ、と言い切っちゃうわけなのです。

ちなみに、こういうふうに言い切るためには、講師としてのセンスと覚悟が問われますね。色々ある中から、「これが重要だ」と絞り込むには。ある意味、それこそが講師の役割です。

会計のなり立ちは海賊から

さて、では「海賊式」のもう一つの意味合いです。これは、ほんとに海賊。大航海時代にいた、ジョニー・デップ扮するパイレーツ・オブ・カビリアンの世界みたいなのです。じつは、会計の発生は海賊という説があります。まぁ、実際には海賊というより交易商人みたいなイメージかもしれません。それこそ、コロンブスがスペイン王家の後援を受けて、インドに交易に行った、みたいなイメージ。そして、その交易で得た利益をどうやって公平に山分けしようか、というところからです。

なにせ海賊ですから、船長も悩みますよね。ちょっとでも不公平だと、「なんだと!」って怒り出す部下がいそうで。どうやったら説明してちゃんと納得してくれるかを、考えるわけです。そう、実は会計というのは説明責任だって考えてもいいですね。

そして、カンのいい人は、気づいたでしょう。あ、なるほどって。説明責任は英語でいうとアカウンタビリティって言います。会計は?英語では、アカウンティングですね。言葉の意味からも、会計とは説明責任である、と分かります。

では、利益を山分けする船長に戻りましょう。まずは、部下にこう言うわけです。「利益はこれだけある。しかし、まずは、交易品を仕入れた分を仕入れ業者に払わなければならない。その分は、別途取り分けることとする」

交易品を積んでインドに行って、現地の一つ物々交換で胡椒を持ち帰る、みたいな商売ですから、部下も納得です。まあ、理屈は通っているよな、と。ということで、その仕入れ業者に払うのをとりわけ多分の残りを、みんなで山分けだ、となります。

ただ…。と船長は続けます。「この海賊船、航海の間にだいぶ傷んだ。それを補修する分だけ、俺の取り分はちょっと多くもらいたい」、と。これにも部下は納得でしょう。逆に、もし海賊船を購入した金額全部よこせ、と言われたら、「おいおい、海賊船は船長の財産になったんだから、理屈に合わないだろ」となります。そうではなくて、「今回の航海で傷んだ分を補修したいんだ」となれば、部下は納得です。「まぁ、そうだよな。次回の航海のとき、傷んだままの船じゃあ危なっかしいもんな」と。

では、今の話を現代の会計用語で説明します。会計というのは説明責任ですよ。すなわち、お客様からいただいた売上をどう配分するかを表したのが損益計算書です。まずは、仕入れ業者に払う分は売上原価です。残ったのが粗利。この粗利をみんなで山分け、つまり販管費(販売費及び一般管理費)として従業員の給与に支払いましょうね。

ただし、船が傷んで価値が下がった、減価した分は償却しましょう。減価償却ですよ。はい、一見するとややこしそうに見える会計がわかりやすく学べるという感覚、おわかりいただけたのではないでしょうか。

銀行への支払利息は営業利益から差し引く

実はこのあと、ストーリーは進んでいきます。船長が言うわけです。「いや、実はな。航海の前に、ジェノバの銀行家からお金を借りていたんだよ」。「え?あのがめついバンコ野郎からですか?」

銀行って、もともとは両替のための台を置いておいたところが起源らしくって、イタリア語では台のことを「バンコ」って呼ぶらしいです。それがなまってバンクになるんですけどね。そして、船長。ただ、バンコからお金を借りたのは俺の判断だ。お前らに迷惑はかけない。俺の取り分の中から利息を払う。そう、銀行からの借り入れは経営者の判断なので、販管費、つまり従業員の給与を支払ったあとにのこった営業利益から差し引かれます。そして、最終的には、スペイン女王への上納金、つまり配当という流れです。

で、いまのが損益計算書編。次の貸借対照表編は、例の、「貸し方、借り方の謎」が解けるという話題もあります。もしご要望があればストーリー化しますので、ぜひコメント欄にご記載ください。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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