DXという言葉は「デジタル・トランスフォーメーション」の略。なぜ「トランスフォーメーション」がXなんだ?と疑問に思う方も多いでしょう。実はその答は、「それっぽく見せたいから」。実はDXという言葉は、コンサルタントが商売をするために使われているという側面があり、それがXにつながります。とはいえ、本質的にはビジネスのデジタル化が重要なのは間違いありません。DXを読み解くためのテクノロジーの注目ポイントも紹介します。

DXにXがつくわけ

今日のテーマはDXです。デジタル・トランスフォーメーションの略です。Dはデジタルだからいいとして、トランスフォーメーションがXなのはなぜ?実は英語圏では、「トランスなんちゃら」をXで表す習慣があるんです。電話の転送のことを英語ではトランスファーといいます。電話機の端末に転送ボタン、つまりトランスファーボタンがあるんですけれども、そこの標記、英単語でトランスファーと全部書いてしまうと長すぎておさまらないんです。そこで、Xferrと書いてあるんですね。だからネイティブはトランスファーがXに置き換わるのは、なんとなくピンとくるわけです。

ただ実際には、DXという言葉、これはコンサルタント商売に使う言葉だと私は思っています。単なるデジタル化ではなく、そこにさも素晴らしい何かがあるように見せておいて、「御社もDXを実践しませんか?」と商売を持ちかけるという手法です。

コンサルの商売手法だったエクセレント・カンパニー

実はこのようなやり方はコンサルタントは昔から使ってきました。有名な話でいうと「エクセレント・カンパニー」。1980年代前半に出た本ですけれども一世を風靡しました。世の中の好業績企業を、つまりエクセレントな会社を集めて分析したんです。そして共通するのは、「強い企業文化を持つことである」なんて結論づけました。

ところが後日、著者の一人がこんなことを言い出したのです。ごめんごめん実はあの本のデータは結構いい加減だったんだ。ウチのコンサルティング会社のサービスを売るために考え出したことなんだよね。だから強い文化っていうのは必ずしも重要じゃないかもしれない。実際に、その本、エクセレント・カンパニーで取り上げられた企業は、その後どんどん業績が悪くなって言うなんて言われています。

驚きです。なんだよ、それ、ですよね。本を素晴らしいといった人たちは困ってしまいますね。もっともそのせいで企業文化に注目が集まったというのは、怪我の功名って言うんですかね、良かった側面もあるわけですが。1980年代は、経営学の世界では企業文化の時代などとも呼ばれています。そしてその後の研究によって企業文化において本当に大事なのは何かという考察も進んでいるので、悪いことばかりではありません。しかしこの手のコンサルタントの方にはうんざりするというのが正直なところです。

DXを食い物にするコンサルタント

DXにも同じ匂いを感じます。単なる「デジタル化」でもいいわけじゃないですか。それを、あえてDXということによって、IT系のコンサルティング会社が商売にしようとしているんだろうな、と思ってしまいます。もっとも、デジタル化が必要なのは言うまでもないんですけどね。コロナ禍でも、デジタル化が進んでいないことによる様々な弊害が明らかになったじゃないですか。いまだにファックスを使ってデータのやりとりをしているなんて、あり得ません。

だから、DXという言葉が広まることによって、単なるコンサル会社の商売を超えた、本当の変革がもたらされるといいな、と思いますね。ちょうど、エクセレント・カンパニーという本によって、企業文化への理解が進んだように

DXで注目すべきテクノロジー

では、ここからDXにおいて注目するテクノロジーの紹介です。アルファベット順に並べるので、わかりやすいと思います。まずはA。これは、人工知能のAI、そして、アプリのAでもあります。

アプリというのはもちろんスマホの。実は今、アプリ界で大戦争が起こっていて、ひとつのアプリで全ての機能ができるようなスーパーアプリの地位を得るのはどこか、みたいになっています。LINEなんか、もともとはSNSだったのが、明らかにスーパーアプリの方に舵を切ってますね。LINEペイとか、LINEミュージックとか。

では次のB。これは、ビッグデータのBです。デジタル化された大量のデータを分析することによって新たな発見をしようというもの。コロナ禍の人出情報なんかにも一躍買いました。そしてBで忘れてならないのがブロックチェーン。単にビットコインだけでない可能性を秘めています。

お次のCはキャッシュレスのCです。何とかペイとか、一気に広まりました。この決済分野においても、いろんな企業がしのぎを削っています。そしてCでは「クラウド」もあります。ソフトも、従来のようにパソコンにインストールするのではない、クラウド上でサービスとして使うという流れです。

次。アルファベットはIまで飛びますが、IoTです。もののネット化。現実に進んでいます。次のアルファベットはRです。ロボティクスです。工場とかの組み立てロボットもありますし、プログラミング的な、パソコン上の作業を自動でやるRPAも要注目です。

次のアルファベットはVまで飛んで、VRです。バーチャル・リアリティ。最近よく聞く「メタバース」なんてのもここに含めていいでしょう。AR、ポケモンgoに代表されるオーグメンティッド・リアリティもこの範囲です。そしてVで忘れてならないのは、ボイス、音声技術です。googleのスマートスピーカーとか、私は注目しています。

では、最後、数字の5。これは5Gですね。次世代のネット接続の規格です。まとめてみましょう、AI、スーパーアプリ、ビッグデータ、ブロックチェーン、キャッシュレス化、クラウド、IoT、ロボティクス、VR・AR、Voice 音声コンテンツ、5G。

最初にも言いましたが、コンサルの商売上のテクニックに踊らされることなく、本質を見極めて取り組むことがDXに置いては重要です。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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