マーケティングとは「物やサービスが売れるためのしくみづくり」。代表的なフレームワークとして3Cで分析して、4Pで実行段階のプランニングをするという話を聞いたことがある方も多いでしょう。ところが、いまや3C、4Pは時代遅れになっている可能性があります。その理由がネットマーケティング。データによる検証が簡単にできるので、「とりあえず広告を出してみて、データを見ながらPDCAのサイクルを回す」というアジャイルなアプローチが重要になってきています。この大きなトレンドを解説します。

昔は気づかなかったマーケティング

MBAに行く前、一消費者として生活している分には、ものを売るためにそんな工夫がなされているとは気づかなかったんです。もちろん、営業活動なら分かります。会社に営業マンが来て、いろいろと説明するんでしょ?でも、マーケティングは、「売れるためのしくみ作り」ですからね。営業ほど一般消費者に目立たないんです。

…というと、ときどきこんな反論を下さるか違います。いやいや、テレビのコマーシャルって目にしてるでしょ?それなのにマーケティングに気づかなかったの?って。いや、そうじゃないんです。コマーシャルはあくまでもマーケティングの一部で、その背後には整合性を意識した緻密なプランニングがあると言うことに気づいたのがビックリだったんです。

具体的に言うと、マーケティングの4Pというもの。テレビのコマーシャルはPromotionに含まれますが、他の3つのP、つまりPrice、値付け。Product、製品そのものの設計、そしてPlace、つまり販売経路、それらを整合性を持って組み合わせる、すなわちマーケティングミックスが大事であるというのがビックリだったんです。

しかも、その4Pは実行段階じゃないですか。その前、分析段階においては、STP、セグメンテーション、市場を細分化した上で、ターゲティング、どのセグメントを狙うかを決めて、ポジショニング、自社製品の差別化をするわけです。

MBAのマーケティングで教わった名言

MBAの授業で、先生はこんなセリフを言っていました。Everybody’s business is nobody’s business。お客様の絞り込みが重要だよ、と。ビックリしました。そっかー、ヒット商品というのは偶然ではなく、こういう考え方が背後にあったんだな、って。それ以降、いろんな商品を見るときにもマーケティング的な視点です。この製品は誰をターゲットにしているんだろう?そうすると、値付けは?プロモーションは?って。それこそ、ものの見え方が変わってきました。

ところが。自分でマーケティングを実行する段階になると、また違う感覚になるんですけどね。その理由が、ネットマーケティング。実は、ネットマーケティングでは、それほど精緻な分析をしません。だってね、さっき言ってたSTPプロセス。セグメンテーション、ターゲティングって、しょせん仮説に過ぎないわけです。もちろんデータを使って仮説を検証するという流れになるわけですが、それでも本当に売り出さない限り、売れるかどうか分からないわけです。

ネットによるマーケティングのアジャイル化

でも、ネットマーケティングは違います。インターネット上に広告を出すじゃないですか。そうすると、「こういう広告はクリックされる」、「こういう広告はクリックされない」というのがデータで分かります。それはもう、リアルな消費者の動きです。しかも、購買データまで分かるわけです。こういう広告をクリックした人が、このホームページに来て、買った、買わなかったって。

いやね、そこまで分かるんだったら、事前の精緻な分析がいらないんですよ。とりあえず広告出しちゃえって。そこから購買者の動線をデータで検証した方がよっぽど早いんです。しかも人工知能がありますからね。膨大なデータを人工知能で解析して、「こんな広告を出した方がよいのでは?」っていうレコメンデーションもされるので、ますます効果的です。

もちろん、それで全てがうまくいくとは言ってないです。でも、昔ながらのマーケティングのプロセス。ウォーターフォールモデルって言いますけれど、それこそウォーター、水が高いところから低いところに流れるように、まず3Cで分析、次にSTPでターゲティング、その上で4Pでマーケティングミックスを練り込んで、ようやく市場に上梓、という一連の流れが時代遅れになっていることは間違いないです。

むしろ時代は、アジャイル。つまり、とりあえず広告を出してみて、そのデータに基づいてPDCAを回して微調整をかけていく、となっています。これからマーケティングの仕事に携わる方は、このような変化を念頭におくと、より効果的な仕事の仕方ができるのではないでしょうか。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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