本屋に行くと様々なリーダーシップの本が並んでいる。「上司は鬼となれ」や「上司は褒めるな・叱るな」など、中には矛盾する提言もあって、「ホントのところはどうしたらいいのさ?」と迷ってしまうというのが正直なところです。この矛盾を解く鍵が、LSE (リーダーシップ・セルフ・エフィカシー:リーダーシップ自己効力感)。実は、自身の中でリーダーシップに対する確信がある方が、自信を持ってふるまい、結果として成果も上がるのです。ただ、そこには落とし穴があります。というのは、リーダーシップに対する確信がある人は、別のスタイルを試そうとしないから。結果として、異動や昇進で自身を取り巻く環境が変わったとき失速してしまいます。これを防ぎ、長期的にリーダーとして活躍するための方法論を紹介します。

諸説入り乱れるリーダーシップ

本屋さんに行くと、リーダーシップに関する本ってたくさん並んでますが、アレって不思議じゃないです?しかも、中には真逆のことを言ってるのもあって、たとえば、「上司が鬼とならねば部下は動かず」と言っていて、「なるほど、鬼かぁ」と思いきや、「リーダーは叱るな、褒めるな」みたいのもあって、おいおい、ドッチなんだよ、と。

この謎を解く鍵が、ある論文に紹介されていました。一言でいうと、「リーダーシップとは○○だ」という確信を持っている人は、そうでない人よりも効果的にリーダーシップを発揮できるとのことです。これ、リンクを後で概要欄に貼っておきますね。

http://soonang.com/wp-content/uploads/2011/04/2008-JAP.pdf

ということは、本屋さんに並んでいるリーダーシップ本の著者は、それぞれ皆さんご自身なりのリーダーシップ論を確立されているわけです。昔は自分もダメダメだった。ところが、こういう手法をとったらリーダーとして周りから認められた。やっぱりリーダーは○○だ、ってね。

で、問題はここから。本屋さんに行ってその本を買う人がいるじゃないですか。その著者のやり方を真似できるかって言ったら、たぶんマネできない。なぜならば、その著者のキャラクターがあって、その著者の仕事の状況で初めて、その時の部下があって初めて成立するわけですから。

リーダーシップは状況依存的

以前のライブ配信でも話したけど、リーダーシップは状況依存的です。つまり、仕事の内容によって、リーダーシップスタイルは変えるべき。ルーチン的な仕事だったら支援的なスタイルを多用するけど、職務内容が曖昧でやるべき事が見えないときは指示的なスタイルの方がいい、とかね。

そうすると、読者の状況が著者と似ていないと、そのリーダーシップ論は役に立たないわけです。どころか、読者は自信をなくしてしまうかもしれない。たとえばその人が、「上司が鬼とならねば部下は動かず」系の本を買ったとしましょう。ところが、ご自身のキャラのせいで「鬼」になることができない。読者はガッカリです。「せっかくいいことを書いてある本なのに、自分はできなかった。やっぱりリーダーとしての才能がないんだ…」なんて。いや、あなた、それはその著者のキャラがあってのことですから。あなたのキャラにあわせたリーダーシップスタイルを構築する方が大事ですよ、と言ってあげたい

あるいは、こんな風なこともあるかもしれない。たまたま読者の状況が著者と似ていて、本に書いてあることがすごく役立った。読者もリーダーシップとは「鬼」だという確信を深め、それがリーダー自己効力感、Larder Self Efficacyにつながって、行動が変わってきた。

ただ、今度は読者の状況が変わったとしましょう。典型的には仕事内容が変わった、昇進したなんてパターンですね。そうすると、これまでのリーダーシップスタイルが通用しなくなります。

ひとつのリーダーシップしか使わない人の末路

実際、私が以前勤めていた会社でもそういう人いました。当時、30ちょっと過ぎてたぐらいかな。まだ役職はついてなかったのですが、その部署のまとめ役として、活躍していた人。上司にもズバズバ厳しいことを言って、兄貴分として頼りがいがあるし、若手にも慕われるし。

ところが、昇進して管理職になったら「失速」するんですね。こないだまであんなに輝いていた人が、マネジメントや評価も含めて「鬼」として接すると、周りの人からは「何あいつ、ウザい」と思われてしまう。本人は迷います。あれ?「鬼」なのにダメか。ということは、「鬼」の度合いが足りないのか?よし、もっと厳しく…なんてドツボにハマります。

これまた、私が横にいたら言ってあげたいですね。リーダーシップは状況依存的ですよ。ご自身のスタイルを拡張しましょうよ。まぁ、言われた方はビックリですけどね。え?拡張?鬼じゃなければ「仏」?また私が答えます。仏も含めて、様々なスタイルがいいですよ。たとえば、参加的、つまり部下から意見を引き出して意志決定に参加させるとか、指示的、具体的に仕事のやり方を指導するとか。

これ、結局リーダーシップのパスゴール理論で言っていることですね。状況にあわせて4つのスタイルを使い分けましょう、ということで。つまり、本当に、あるいは長期的に、はたまた再現性を持ってリーダーとして活躍したければ、リーダーシップ理論を学ぶのがお勧めということになります。

まとめても兼ねて、これからリーダーとして活躍したいという方に、お勧めのやり方を紹介します。まずは本屋に行って、様々なリーダーシップの本を斜め読みします。あんなリーダーシップ、こんなリーダーシップ…。その中から「自分でもできそう」というのを1冊買って、本に書いてあることを実践しましょう。実践しながらご自身なりのリーダーシップ論を確立します。

こう、イメージで言うと、リーダーシップの深掘りですかね。そして、深掘りの次は幅を広げる。おそらく、ひとつのリーダーシップスタイルしか取っていないと、そりが合う部下、合わない部下って出てきます。つまり、そのスタイルとマッチする部下、マッチしない部下ですね。

リーダー・メンバー・エクスチェンジ(LMX)理論ってのがありますが、そこで言う内集団、外集団です。そしたら、外集団、つまり自分になじんでこない部下に対してリーダーシップを発揮するための、別のスタイルを模索しましょう。そのためにまた本屋です。様々なリーダーシップの本を斜め読みします。そして、今度は一番「ピンとこない」本を買って実践してみましょう。もちろん、その本がまんま使えるわけではないです。でも、自身のスタイルを広げるには間違いなく役立ちます。そうやって幅を広げると、職場が変わったり昇進したときにも、リーダーとして成果を出しやすいことになります。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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