会社で、「人の問題」が起こると、ついつい「犯人捜し」になりがちですが、これはダメ。実は事業の成長ステージごとに起こる問題は決まり切っていて、しかもそれに対する打ち手もあります。このような、「組織の成長痛」を乗り切る方法を紹介します。

会社の成長ステージ

会社で、「人の問題」って起こりますよね。「組織の問題」と言い換えてもいいです。なんだか職場がギスギスしている、疲弊感が強い、ベクトルがそろっていない、ついには退職者が出てしまう…。

そうすると、思うわけです。「この会社、なんかおかしい」って。果ては、「経営陣がダメなんじゃないか」なんて。ところが。実は、その手の人の問題というのは、どの会社も共通しているんです。しかも、起こるタイミングまで一緒。ビジネスの成長ステージに合わせて、同じような問題が起こるんです。いわば「組織の成長痛」とでもいうべきものです。

人間もありますよね。思春期に背がグッと伸びる。その時、関節とかに痛みが出る。アレの組織版です。逆に言えば、成長していることの証ですから、前向きに捉えてもいいくらい。

では、ビジネスの場合の成長を表すS字カーブを考えてみましょう。最初は導入期。売上もボチボチ上がっていくかなー、という状況。次が成長期。軌道に乗って売上が急カーブで上がる。そして成熟期。だんだんと頭打ちになって、成長カーブが鈍化する。最後は衰退期で、まったく同じビジネスのままだと苦しくなる。これがS字カーブです。

成長ステージごとの人にまつわる問題

そして、人の問題。まずは導入期から成長期の入り口に入るところ。ここは、人手不足、社員の能力不足が課題になります。次、成長期においては、ミスとか出てくるんです。お客様からの見積もり依頼に誰も応えていない。納品したら要望と別なものでクレームになる、そんなのが続いて疲弊感が漂ってくる。

次、成長期から成熟期に入るとき。ここでは、行き当たりばったり経営が目につきます。「ウチの会社さ、どういう方向に進んでいるか分からないよね」、「そうそう、社員のベクトルがあってないし」。みたいな感じです。ここでもまた能力不足が目立ってきて、今度は社員のではなく経営陣の。昔っからその組織にいて、成長期は陣頭指揮をして引っ張ってきたみたいな人が役員になっている。ところが、その人には経営能力が今イチ。「あの人、役員としてはダメなんだよなー」とみんな分かっているけど、誰も口に出せない、なんてことが起こります。

そうすると、離職率が上がります。とくに、中核になるような課長級/部長級社員の離反。それはそうですよね。実力がある人ほど、「あの役員の下ではやってられない」って思っちゃいます。

そして、衰退期に入ると、事業の頭打ちによる閉塞感。仕事はある。昔っからのお客様から定期的に受注が入る。でも、じり貧。徐々にではあるけれど、業績が落ちていくんだけど、誰も真剣に手を打とうとしない、そんな状況です。

成長の痛みの対策は組織開発

でも、大丈夫です。それぞれの問題状況には打ち手があります。というかね、「どんな問題が起こりそうか」って予測できるわけじゃないですか。たとえば、「最近なんだか売上が上がってるぞ。これは成長期の入り口か?」って分かれば、「あ、そろそろ全社的にミスが出るだろうな」って想像できます。だとしたら、ミスが起こらない業務遂行のしくみ作り、つまりオペレーション・システムを構築しておくわけです。このシステムで、こんな運用しよう。そうするとダブルチェックが入ってミスが起こりにくくなるよね。

次も同じです。これまでバンバン売れていた製品の動きが悪い。これは成長期から成熟期へ入るのか?そうしたら、「そろそろ、『行き当たりばったり経営』だとマズいな。不満が高まりそう。ウチもちゃんと戦略を立てて戦術に落とし込む、マネジメント・システムの構築の準備をしておこう」ってなります。

このように、組織の問題を先読みして対応の手を打てるというのは、経営者としてもそうとうレベルが高いですね。

先読みした組織開発の実例

いや、そんなことできるの?って疑問はあるかと思います。でも、実際にできるんです。たとえば、私のマサチューセッツ大学の講義を受けてくれた人は、第3回で扱ったケースを思い出してください。エイペックスという会社のゴーシュさんという人が主人公でしたけど、組織構造を頻繁に変えていました。

あれ、最初は「何これ?」と思ったかもしれないんですが、まさに成長ステージに合わせて「成長痛」を予測して手を打っている事例です。

あるいは、この本。「」って書名です。ここにいろんな事例、成功例も失敗例も載っています。ものすごく分厚い本で、丁寧に解説してくれていますけどね。すごくリアリティがあります。

で、最初に戻ります。組織で人の問題が起こると、ついつい誰かのせいにしちゃうんです。「役員のあの人が」とか「そもそも採用が」とか。でも、今回紹介したようにパターンが決まっているとしたら、誰のせいでもないわけじゃないですか。

しかも、解決策は見えているわけです。だとしたら、もう淡々と、決められたとおりの打ち手を粘り強く導入していくしかありません。

で、ここからが重要なんですけど、打ち手の導入、けっこうたいへんです。たとえばオペレーション・システムの導入。それまで、みんなが自分なりのやり方でやってきた仕事を変えてもらわなければなりません。そうすると、現場の抵抗があります。「そこまでやらなくてもいいじゃないですか」って。

ところが、そういう声に推されて、今までの仕事のやり方を続けていると、結局ミスは頻発し続けて、せっかく成長期に入りかけたのに、そこで成長がストップしてしまいます。だから、先ほどは「淡々と」と言いましたけど、腹を括ってやる必要がありますね。実際のところは。

その意味では、こういう「組織の成長痛」という考え方を、経営陣に理解してもらうのが重要かもしれません。そうじゃないと、現場の管理管理職がいくら腹を括っても、はしごを外されて終わり、なんてなりかねませんからね。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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