いま、テクノロジーの進歩で私たちの学習法は変わりつつあります。たとえば、バーチャルリアリティ(VR)。VRのなかでスローモーションで練習することで、わずか5分でけん玉のワザを身に付けることができる、そんな時代です。

それを応用すると、商談や部下育成など、コミュニケーションもVR上で人工知能と会話をすることで、一気に上手になれる可能性があります。伊藤亜紗先生のご著書、「身体はゆく」をヒントに、これからのビジネス教育の流れを読み解きます。

1,000人が実証したVRによるけん玉のワザ

では、バーチャルリアリティを使ってけん玉がうまくなる方法です。例のゴーグルをかけて映像を見ながらコントローラーを保つんです。コントローラーがけん玉代わりで、VRの中でけん玉をやるんですが、動きがスローモーションなんですって。そうすると、けん玉のワザを簡単にマスターすることができるんですって。

それで、ここから。今度はゴーグルを外して、現実世界で本物のけん玉をやります。そうすると、できるようになっているんですって。それも、1,000人以上が体験して、96%以上の確率でできるようになる、と。それも、5分ぐらい練習しただけでですよ。もう、びっくり。くわしくはyoutubeの動画がありますので、後で概要欄にはり付けておきます。

https://ima-create.com/nup/#movie

もちろん、できるのはけん玉だけではありません。ゴルフのスイングだってできるし、もっと実用的なところで言うと、溶接する時の手の動き、あるいはお医者様の聴診器の当て方まで学習できるんです。

驚きです。こういう、身体の動きっていうのは、なかなか教えるのが難しい。それこそ、職人技を身に付けるにはウン10年、みたいな世界だと思っていたのがVRで一気に変わる可能性があります。

そういえば、ホリエモンこと堀江さんなんかも、寿司も天ぷらも職人技なんか要らない、みたいな発言をされていましたね。寿司学校で学べば十分じゃないか、と。でも、こういうVRとか見ると、それ以上に、あっという間に習得できるのかもな、なんて思います。

ビジネスコミュニケーションだってVRで学べる?

じゃあ、ビジネスにも応用できるんじゃないの?というのが私の問題意識。たとえば、コミュニケーション。私が教える管理職研修では、会議とか部下との会話では、心理的安全性を醸成するために相槌を打ちましょう、とお伝えしています。たとえば、相手の言葉の語尾を繰り返すような相槌の打ち方。

たとえば、お客さんとの会話で、こうなるわけです。「うちの工場では生産ラインが4台あるんですけど」、「4台ですね」、「それを一期に新式に移行したいんですよ」、「一気にですか」、「ただ、工期が限られていて」、「ほう、工期が」、まぁ、今のはちょっとやり過ぎですけど、要は相槌を打ちましょう、と。

ところが、これができない人っているんです。いや、頭では分かりますよ。ただ、現実の会話の中でできない。先ほどのお客様との会話でも、こんな感じでしょうね。

「うちの工場では生産ラインが4台あるんですけど」、「そうなんですか」、「それを一気に新式に移行したいんですよ」、「なるほど」、「ただ、工期が限られていて」、「あ~、厳しいですね」…

こういう会話をしていると、だんだんお客様は話す気をなくしていきます。「なんだかこの営業マンと話しているとイヤな感じだな」って。そうならないために、語尾を繰り返す相槌を打ちましょう。ただ、できない。私から見ると不思議ですけどね。いや、やればいいじゃん。繰り返すだけよ?言い換えじゃなくて、要約じゃなくて、単に繰り返すだけ。できないわけないよね。

余計なことを「言わない」ようにする指導

あと、別パターンとしては、余計なことを言う人。たとえば、先ほどのお客様との会話。「ただ、工期が限られていて」、「あ~、厳しいですね」、「そういうのは、前もって考えておかないとダメですよね」。いや、なんでそんなこと言うんだろう?余計な一言。もう、この商談パーです。こういうのも、余計なこと言わなければいいだけだよね?って思うんですが、できない人はできないんですよね。

じゃあ、どうしたらいいか。それは、現場での指導。細かいフィードバックになるわけです。もしも、私が上司で、お客様との商談で部下がそんなこと言ったら、商談の帰り道に話します。「さっきの商談、『そういうのは、前もって考えておかないとダメですよね』って言ったよね」、「はぁ、言いました」、「あれって、どういう意図だったの?」、「意図?いや、別に。単にそう思っただけですけど」、「私から見ていると、ああいう言い方されたら、お客様は不愉快になると思うよ」、「え?そうですか?」、「別に特別な意図がないなら、不愉快にさせるリスクをとる必要はないよね?」、「はい、まあ」、「じゃあ、これからは、商談の際には意図を持った発言だけしてもらえる?つまり、その発言をすることによって、受注につながるような発言だけにして」、「分かりました」

って、ここまで懇切丁寧に指導しても、できない人はできないんです。今度はね、社内で、余計な一言をポロッと言って、その部署の人を怒らせちゃう。上司の下にはクレームが来るわけです。「あの人がいると仕事がやりにくくてしょうがないです。何とかしてください」って。

これをですよ、これを、さっきのバーチャルリアリティで解決できるとしたら、すごくないですか?VRで人工知能と会話をするんです。そして、相槌を打っていなかったら、人工知能が指摘してくれる。あるいは、余計な一言を言ったら、「その発言の意図は何ですか?意図がないなら発言しない方がよいでしょう」、みたいに指摘してくれる

VRだから、色んな状況の設定できますよね。先ほどのけん玉の例のように、スローモーション的な、つまり簡単な環境で実行を促進したり、難易度が高いお客様を想定して、たとえどんな状況でも実行できるようにしてあげたり。

そう考えると、これからの人材育成がかわってくるかもな、というのを感じたんです。ちなみに、この元ネタは、伊藤亜紗先生のご著書、「身体はゆく」です。いまのVRの他にも、色んな研究成果が紹介されています。

先週のライブ配信ではChatGPTを取り上げました。あれ、学習用にもすごく便利です。たとえば、和文英訳で英語力アップなんて、もうかゆいところに手が届く感じで、素晴らしいです。そうすると、テクノロジーのおかげで私たちの学習環境は大きく変わるんだろうな、と思います。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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