内田洋行の寺田さん言えば、屋台大学を主催しているファシリテーションの第一人者。当然のことがながらランチをご一緒した時にも、「ファシリテーションは大事ですよね」という論調。ところが、そこに寺田さんの後輩がジョインすると、流れは一変。「ファシリテーションっすかぁ…」。「言葉は知っていますけど、ビジネスマンには関係ないッスよねぇ」。

えぇっ!

ファシリテーションって、実務的にはメチャクチャ「使える」、もしくは「使っている」スキル。プレゼンよりもよっぽどビジネスにも直結しています。でも、一般的なビジネスパーソンの認識は違うんですね…。考えてみれば、ファシリテーションに関する本は売れないとの定説が出版業界でもあるみたいですし(※)、個人向けのスクールでも企業研修でも、人気コンテンツとは言いがたいですね。

これ、人材育成にたずさわっている人間としては不思議だったのですが、「あ、なるほどな~」と気付かせてくれた本を最近読みました。それが、野村先生の「イノベーション・ファシリテーター」。野村先生いわく、イノベーションファシリテーターとは、

新しいアイデアやプロダクトを新しい方法で世の中に提供して、社会に変革を起こそうとする人々を支援し、うまく事が運ぶように舵取りする人

そして、ファシリテーションを行う心構えとして、

質問するときのポイントは、相手が困っていることに心から共感することです

とのこと。たしかにこれだけ読むと、ファシリテーションは社会的な変革を目指す人のためのものと読めてしまうかもしれませんね。さらに、

中盤でとくに大事なのは、「参加者自身に決めてもらう」ということです。…そこでイノベーション・ファシリテーターは、ここからの決断を参加者にゆだねながら、参加者の主体性を高めていきます

となると、ファシリテーターは客観的な、第3者的に見えてしまいますよね。

でもね、じつはこれ「だけ」がファシリテーションじゃないと思うんです。マネージャーとして、

  • 部下の意見を引き出す
  • 会議の場で合意を形成する
  • お客さまの期待値をコントロールする

なんて側面、すなわちビジネスの「当事者」としてありとあらゆる場面で使えるスキルなんですよ。もちろん、野村先生もそこはちゃんと分かっていて、たまたま同書では「社会変革」という切り口でファシリテーションを解説されただけだろうし。

なので、ファシリテーションのスキルそのものとその応用分野は分けて考えてもらって、社会変革だけでなく、ビジネスにも使えるんだ、とファシリテーションが見直されるといいな、と思っています。そういえば、出版業界ではファシリテーションの本は売れないと言いつつ、谷先生の「リーダーのための! ファシリテーションスキル」は売れているような気がするので、一部の人は既に気付き始めているのかもしれませんが。

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