マーケティングの3Cやポーターの五つの力などのビジネスフレームワーク。ときどき「マニア」と言いたくなるぐらい詳しい人がいますが、実は「知っているだけ」では意味がありません。むしろ大事なのは、仕事で問題にぶち当たった時、解決するためにビジネスフレームワークを「使える」ようになること。そのための4つの秘訣を紹介します。
ビジネスフレームワークは「比較」で使いこなせ
ビジネスフレームワークはご存じでしょうか。マーケティングの3C、つまり、Customer、Competitor、Companyやマイケル・ポーター教授の五つの力、なんかが有名です。これ、好きな人は好きですよね。「フレームワーク100選」のような本を買ってきて、こんなフレームワーク、あんなフレームワーク、と勉強するんですよね。
でもね、実はこの手のフレームワークは知っているだけでは意味がないんです。むしろ大事なのは、使いこなせるようになること。つまり、ビジネスで問題にぶち当たった時、フレームワークを手がかりにより良い解決策を考える、そして実行できることです。では、どうやってこのような本質的な理解を手に入れられるか。実はそこには秘訣があって、それが比較です。つまり、似たようなフレームワークと比較をして、「どっちの方が使いやすいか」を考えることなんです。
たとえば、前回からの続きで、ベルビン先生のチーム役割理論を考えてみましょう。これは、成果が上がるハイパフォーマンスチームには役割分担が必要であると言う考え方です。では、このベルビンのチーム役割理論、どうやって理解するか。先ほども言ったように、比較です。似たようなチーム内での役割の理論と比べてみます。
たとえば、コンサルタントの神田昌典先生が提唱している、桃太郎理論。鬼退治のときの桃太郎と三匹の家来ではないですが、全部で4つの役割で良いチームは構成されていると言われています。それが、起業家、実務家、まとめ役、管理者です。
ベルビンのチーム役割理論は全9つの役割ですから、それと比べるとシンプルで、実は神田先生の説の方が使いやすい可能性があります。逆に言うと、ベルビンの方が詳しい。たとえば、資源探索者(リソース・インベスティゲーター)という役割も提唱されています。そうすると、こんな発想も成り立ちます。神田先生の桃太郎理論は、どちらかというとチームの発足時のコアメンバーを表していて、チームが成熟してくる、あるいは大きくなるにしたがってベルビンの考え方が必要になってくるんじゃ無いか。
ここまで来ると、「と言うことは、今自分がいるチームは…」という発想になり、ビジネスの現場でフレームワークを使うことができるようになります。これが、フレームワークを使えるようになるための秘訣その1「比較」です。
関連付けでフレームワークの幅を広げる
そして、勘のいい人は気づいているかもしれませんが、ここでもうひとつのアプローチの「関連付け」にいってみましょう。というのは、先ほどチームの発展段階という話をしました。そして、発展段階といえば、当然タックマンの5段階理論が出てきます。これは、ひとつのチームが結成されてから、どのようなプロセスを経てハイパフォーマンスチームになるかを説明したものです。具体的には、形成期、激動期、規範形成期、実現期、終了期、です。
おそらくは、激動期を経て規範形成期までは神田先生の役割なんだろうな。でも、それを超えて実現期から、さらには組織が大きくなるとタックマン先生のチーム役割理論が必要になってくるのでは無いか。
と言うことで、ビジネスフレームワークを使いこなすための秘訣その2は「関連付け」です。同じ分野で別のフレームワークと関連付けることによって理解が深まります。
健全な批判でビジネスフレームワークを理解する
そして、秘訣その3は、もう前回やっているんですけど、「批判」です。前回のライブ配信で、私こんなことを言いました。ベルビン先生の9つの役割は、「実行指向チーム」に偏っているんじゃないかな、と。
シェイパー、挑戦的で、精力的に障害に立ち向かっていく。実行者(IMPLEMENTER) 仕組みをつくってアイデアを実行に移す。完成者(COMPLETER FINISHER)細かいところまでチェックして、完璧を目指す、ですからね。でも、今の時代求められているのは、実行指向チームよりも「学習指向チーム」。であると、ベルビン先生の説はちょっと物足りないところも出てきてしまうのではないか、と
そして、批判の次のステップとしては、「創作」です。では、「学習指向チーム」にはどんな役割が必要か考えてみましょう。そう。批判するだけなら誰でもできますからね。それだけにとどまらず、自分でフレームワークを考えるんです。
たとえば、学習指向チームには、「機会探索者」が必要です。学習には、「新たなことをやってみる」という側面があります。であれば、その新たなことを見つけてくるのが機会探索者です。
あるいは、体験したことを振り返ってみて、自分たちの学びに変える必要があります。いわば、「振り返り者」ですね。英語では振り返りのことを「リフレクション」なんて呼ぶので、「リフレクター」なんて名称が良いんじゃないでしょうか。
ここまで来ると、「よし、学習指向チームを作ろう」、「そのためにはリフレクターの役割に相応しい人を見つけてこよう」なんて発想が広がって、ビジネスフレームワークを使いこなすことができるようになります。
と言うことで、秘訣として、1. 比較、2. 関連付け、3. 批判、4. 創作、と言うプロセスを紹介しました。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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