イノベーションは難しいもので、実際に苦労している方も多いでしょう。じっさい、大手企業の中には「オープンイノベーション」に取り組んだはいいものの、成果が上がらずもんもんとしている担当者も少なくないらしいです。ところが、実はイノベーションには取り組みやすい方法論があり、それが他業界の成功事例を真似するというものです。ビジネスモデル転換と呼ばれるその手法を詳しく解説します。
様々な業界で使われているジレットモデル
有名なところで言えば、ジレットモデル。もともとはカミソリのジレット社が発案したのでこう呼ばれています。カミソリと言っても電動ではなく、ウェットシェービングの話です。ホルダーの部分は安く売って、替刃で儲けようという発想ですね。替刃って、だんだん切れ味が落ちてきますから、定期的に買い替えます。そうすると、継続的にお客様からお金をいただけることになり、まさにイノベーションです。
なので、最近は替刃がどんどん進化しています。5枚刃、とかね。別にこれは、5枚あるから5倍ひげがそれるわけじゃなくて、要するに替刃を高くしようという取り組みです。実際、5枚刃カミソリの替刃が10個入りで4,000円ぐらいでアマゾンで売られています。1個400円ですから、良い商売ですね。しかも、新しい替刃は、古いホルダーには合わないように作ってあるんですよ。ということは、一度ホルダーを買い替えたら、新しい替刃を使わなくちゃいけない。
そうすると、考えるわけです。他の業界の人も。あの商売のやり方、つまりジレットモデルをうちの業界に持ち込んだら、儲かる仕組みができるんじゃない?って。うまく言った事例が、プリンター業界。本体は安く売って、代わりにインクで儲けるんですね。さっきのカミソリと一緒で、インクカートリッジの値段は高くなっている印象がありますね。
ビジネスモデル転換の5パターン
この手のビジネスモデルっていくつも提唱されていて、その数なんと55パターンも有る、なんて言われています。ただ、それだと分けがわからなくなっちゃうので、私は5パターンぐらいに分けて考えています。それを紹介しましょう。
まずは外部とのコラボレーション。あるいは、外部リソースの活用って言ってもいいですね。自社のビジネスをフランチャイズやライセンスに出来ないか?、アフィリエイトを通して販売できないか?他社のアフィリエイターになれないか?みたいな発想です。
有名なところ、思いつきますか?たとえば、他社のアフィリエイトになるという観点では、Kakaku.comとか面白いですね。あれ、全部アフィリエイトリンクですから。結果として、販売した会社さんからフィーをもらって、ビジネスとしては上手です。
では、2つ目。価格/収入構造を変える。ジレットモデルみたいに継続課金もあれば、ひところ「フリーミアム」って言葉も流行りました。要するに、アプリ内課金みたいなのです。最初は無料つまりフリーだけれど、その後プレミアム、有料プランがありますよ、みたいな感じです。
では、3番め。顧客セグメントを変える。B2C(対法人)からB2B(対個人)に、(また、その逆)。有名なところでは、ベネッセさんとか。昔、福武書店って言った頃ですが、学校向けに生徒手帳を製作販売していたんですってね。でも、顧客セグメントを変える。学校がお客様じゃなくて、そこに通う生徒さんを直接お客様にしようと思ったら、あっという間に巨大ビジネスになった、という話です。
バリューチェーンでビジネスモデルを考える
4つ目は、バリューチェーンで考えるというものです。バリューチェーンって、もともとはハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター先生が提唱したものですけれど、原材料からお客様に届くまでの工程を機能で切り分けていきましょう、となります。
その川下、川上に進出できないか?バリューチェーンを統合できないか?バリューチェーンを分断して支配できないか?みたいに考えます。わかりやすいところでいうと、スマホ。iPhoneはハードウェア製造からOSまでバリューチェーンを統合しています。一方のアンドロイドは、OSに特化して、ハードは別の会社に任せてるので、バリューチェーンを分断しています。
最後の5つ目は、顧客への提供価値を変えるというものです。たとえば、モノ(製品)からコト(サービス)に変えることは出来ないか?有名なところでいうと、IBMとか、そうなんですかね。
ということで、かんたんにイノベーションを起こすための手法、他の業界の成功事例をパクる、というものを紹介しました。まとめると、外部とのコラボレーション、価格/収入構造を変える、顧客セグメントを変える、バリューチェーンで考える、顧客への提供価値を変える。
個人的には、バリューチェーンを一番使うかもしれません。たとえば、うちの会社で言えば、研修のような人材育成業界。うちは比較的バリューチェーンを統合しています。コンテンツも作成して、講師も養成して、フォローアップもして…。でも、分断、つまりどこかだけに特化できないか、見たいのは考えますね。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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