成果が上がるチームに必要な枠割りを研究したのがメレディス・ベルビン博士の提唱する「チーム役割理論」 (Team Role Theory)。自身の役割とともに、「自分のチームには何が足りないのか」を考えるヒントになります。そして、この理論にまつわる限界も指摘します。
ベルビンのチーム役割理論 (Team role theory)
ビジネスは「チーム戦」。個人個人が頑張るよりも、チームとして成果が上がる仕組みを作る必要があります。その中でも重要なのが役割分担。スポーツの世界でも、「エースばかり集まったチーム」が勝てるとは限りません。では、どんな役割が、成果をあげるチームには必要か。実はそれが、研究結果によってまとまっています。ベルビン先生の「チーム役割理論 (Team role theory)です。
役割 | 行動 | リスク |
---|---|---|
1. プラント (Plant) | 創造力があり困難な問題を解決する | 問題に没頭しすぎてコミュニケーションを忘れる |
2. 資源探索者(RESOURCE INVESTIGATOR | チーム外の機会を探ったり、人脈を拡げる | 楽観的すぎ。飽きっぽい |
3. コーディネーター(CO-ORDINATOR) | 明確な目標を示し、役割の分担を促す | 独善的と見られる |
4. 形づくる人(SHAPER) | 挑戦的で、精力的に障害に立ち向かっていく | メンバーの気分を害する |
5. チームワーカー(TEAMWORKER) | 人の話をよく聞き、対立を避けながら協調して仕事を進める | 優柔不断になる |
6. 実行者(IMPLEMENTER) | 仕組みをつくってアイデアを実行に移す | ガンコで新しいものへの反応が鈍い |
7. 完成者(COMPLETER FINISHER) | 細かいところまでチェックして、完璧を目指す | 細かい。権限委譲が出来ない |
8. スペシャリスト(SPECIALIST) | 特定分野の知識やノウハウをもつ | 自分の専門分野しか興味を持たない |
9. モニター(MONITOR Evaluator) | 問題解決の選択肢を取捨選択する | 評論家的 |
自分のチームに足りない役割を考察する
私がビジネススクールに留学していた時は簡単な診断テストがあって、「あなたはどのタイプが向いている」なんてのが分かりました。その時の私の診断は、「形作る人」(シェイパー)。「挑戦的で精力的に生涯に立ち向かっていく」ですから、まあ、そうだよなと思います。
ご自身でも考えてみると参考になると思います。自分がどの役割が得意でどの役割が不得意かというのを。そして、次のステップに進んでみましょう。ここからが大事なのですが、ご自身の属するチームに足りていない役割は何でしょうか?もともとの問題意識が、「チームとして成果をあげるために必要な役割」だったじゃないですか?だとしたら、「この役割が足りないから、うちのチームは成果が上がらないんだ」という発想になります。
たとえば、ウチの会社で言うと、2. 資源探索者(RESOURCE INVESTIGATOR)が以前は足りていませんでした。「チーム外の機会を探ったり、人脈を拡げる」という役割。私自身、そんな得意な領域ではないです。ところが、この強みを持つ人がチームに入ってくると、やっぱりガラッと変わってくるんですね。これまで見逃していた、というか存在することすら気づかなかった社外のチャンスをつかめることが多くなりました。と言うことで、ベルビンのチーム役割理論、そんな足りない役割を見つけるために使ってみてください。
ベルビンの理論は実行指向チーム
最後に注意点を一つ。実は私は、ベルビンの理論には欠陥があると思っています。欠陥というか、ある前提条件の下では正しいんだけど、その前提条件が崩れてしまうと、意味がなくなってしまう、と言うことです。それが何かって言うと、ベルビンの役割は、「実行指向チーム」を無意識のうちに前提としておいているのではないかということなんです。
たとえば、1. プラント (Plant) 創造力があり困難な問題を解決する、4. 形づくる人(SHAPER) 挑戦的で、精力的に障害に立ち向かっていく、6. 実行者(IMPLEMENTER) 仕組みをつくってアイデアを実行に移す、7. 完成者(COMPLETER FINISHER) 細かいところまでチェックして、完璧を目指すとか、9つの役割の中に4つも実行系が含まれていることから分かります。
でも、時代は変化しています。最近は「実行指向チーム」から「学習指向チーム」へと、重きが置かれているとも言われています。要するに、やることが決まっていて「やりきる」のが重要だった時代から、そもそもやることは何だっけ?と探していくということですね。この「学習指向チーム」には別の役割も求められるはずです。そこだけ注意して、ベルビンのチーム役割理論を使ってください。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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