シリコンバレー発の人材マネジメント手法1 on 1(ワンオンワン)。その名の通り上司と部下が1対1で面談をすると言うものですが、上司にとっての負荷が高いため日本では浸透していないというのが実情でしょう。ところが、「インスタント1 on 1」という手法を使えば、リモートワークでも、手軽に、高い頻度で1 on 1を行い、部下の育成や不満の解消に繋がります。この手法を解説します。

忙しい人にお勧めのインスタント1 on 1

1 on 1はご存じでしょうか。もともとシリコンバレー発の人材管理手法で、上司と部下が1対1の面談を定期的に持つというものです。「何それ?昔からやってるよ?」と言いたくなりますが、頻度が違います。日本のヤフーさんでも採り入れられていて、一説によると、上司と部下が毎週1回、30分間話をするらしいです。ところが、これ、他の日本企業ではなかなか導入が進んでいません。たとえば、1週間に一度、30分の時間帯をとりましょうね、と言われたら、部下が5人いる人にとってはかなりキツいですよね。上司にとってはたいへんです。でも、実は簡単にやる方法があって、それが「インスタント1 on 1」と呼ばれるやり方です。

「インスタント」ですから、簡単です。上司の負担を最小にしながら、1on1のエッセンス、つまりおいしいところだけいただいちゃおうというものです。しかも、今のようなリモートワークの時代に適しています。え~?そんなオイシイ話あるの?と思うかもしれませんが、実はあるんです。まず、大前提ですが、リモートワークだと1 on 1はやりやすくなりました。だって、1対1のウェブミーティングとか、普通にやるじゃないですか。日常業務の中で。「ちょっとあの件で、いいですか?」みたいに。

その流れの中でやるのがインスタント1 on 1です。これね、逆に対面で働いていた時代には、けっこうめんどくさかったんです。だって、1 on 1やるとなったら、部下との日程を調整して、会議室を押さえて、会議室が空いていなければ日程再調整、みたいに。ところが、リモートワークではこれが簡単にできますからね。ただ、その時にコツがあるんです。それが、「ふだんしない話をすること」です。もちろん、とんでもないことを話せ、と言うわけじゃないです。

というのは、日常業務の話はするじゃないですか?普通。今頼んでいる仕事の進捗状況どうなった?あのお客様へのメールは出した?などなど。そういう、具体的・実務的な話ではなくて、一歩引いた視点を持ち出すのがインスタント1 on 1のポイントです。たとえば、仕事の話が一段落したところで、こんなふうに切り出してみましょう。「ところで、一歩引いた視点から、最近何か感じている問題意識ってありますか?」って。

もちろん、このセリフは状況に応じて変えて下さい。たとえば、「ところで、最近疲れているように見えるけど、それって私の勘違いかな?」とか、「ところで、最近すごく忙しそうに見えるけれど、業務量は多すぎますか?」などです。いずれにしても、ふだんの具体的・実務的なレベルではなく、抽象的・俯瞰的、というのは、上から見下ろしたような一歩引いた視点を持ち出すのがコツです。

インスタント1 on 1で部下のモチベーションUP

これ、やると何が良いかって、部下のやる気をアップさせることができます。あるいは、逆に言うと、部下のやる気を阻害している要因をキャッチ、つまり見つけることができます。さっきの、「ところで、一歩引いた視点から問題意識って…」と聞いてみると、たとえば部下が、「いや、実は、職場の他のメンバーとのコミュニケーションがうまく行かないんですよ」とか、「リモートワークだと仕事とプライベートの切り分けがうまく行かなくって…」のような話をしてくれます。

そういうのは、長期的には不満の要因になります。だとしたら、早い段階から不満の芽を摘むことができて、やる気アップに繋がります。あるいは、部下の育成にもいいですね。「他のメンバーとのコミュニケーションがうまく行かなくって…」って言っている部下に、「たしかに」と共感を示しつつ、「それって、みんな感じていることだと思うんだ。解決するにはどうしたらいいと思う?」と話を振ってみましょう

もちろんその際には、前回、前々回かな?このライブ配信で説明した、問題解決の4ステップを念頭におくわけです。

ときどき、いますからね。上司のくせに、まったく自分なりの仮説とか、問題解決の方法論を考えることなしに、部下に意見を聞く人ってね。いやね、それで、とんでもないアイデアが出てきたらどうするんですかね?たとえば、「やっぱりリモートワーク辞めましょうよ。私、嫌いなんですよ」って言われたら、それに対して上司も反論するの?そうすると結局、「この上司は聞いてくれないんだ」ってなっちゃって逆効果

そうではなく、問題解決の4ステップで、部下自身に様々な打ち手を出してもらうのが、上手に会話をするコツです。このようなやり方であれば、インスタントで、本当に簡単にできます。しかも、今言ったように不満の芽を早期に摘み取ること、部下の育成もできますから、お勧めです。

そうとう負荷が高い1 on 1

元に戻りますけれど、1 on 1自体は、本当にやった方が良いと私は思っています。今のような変化の早い時代上司と部下の面談が半年に1階、1年に1回というのはないわけです。

ただ、あまりにも負荷が高いと、上司の方がたいへんになっちゃうじゃないですか

裏話ですけど、1 on 1とgoogleでキーワードを入力するじゃないですか。そうすると、レコメンデーション、詰まりよく検索される語句が表示されるんですが、「話すこと」っていうのが出てくるんですよね。つまり、みんな、1 on 1 話すことで検索していて、苦労が忍ばれます。それを乗り越えて、手軽に・短時間で・高頻度でできるので、ぜひ取り組んでいただければと思っています。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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