プレゼンテーションの際、「何を、どういう順番で言うか」という構成には悩むものです。ところがこれには解決策があり、それがP-COAT (ピーコート)フレームワーク。Purpose(パーパス)、Critical(課題の本質)、Option(解決するための選択肢)、Action(アクション)、Trigger (トリガー)からなるものです。誰もが簡単に、説得力のあるプレゼンテーションの構成を作れるその使い方を解説します。

プレゼンの最初は「背景と目的」

要するに、プレゼンの最初は、「背景と目的」です。なぜこのプレゼンをする必然性、もしくは、聞き手にとっては、なぜこのプレゼンを聞く必要性があるかを説明するのです。この観点では、同じPで、Problemと言いかえてもいいですね。プレゼンの聞き手の人に対して、こういうわけです。「あなたは、いま、こんなプロブレムを抱えていますよね。その解決策を、これからプレゼンします」。もう、これだけで聞き手は説得されますよね。

ところが、プレゼンが下手な人は、最初にこのプロブレムから入らないんです。「このプレゼンでは、当社のサービスを紹介させていただきます」みたいに始める。聞き手にしてみたら、「何それ?お前の話か。かったりーなー」となってしまいます。そうではなく、「このプレゼンではあなたの抱えている問題の解決策を紹介します」というのが成功の秘訣です。

では、次にいきましょう。P-COATの二つ目はCですが、これはクリティカルという英単語の頭文字です。これ、ちょっと難しく聞こえるかもしれないんですが、先ほどのプロブレムのつづきで考えると分かりやすくなります。要するに、問題の原因です。プロブレムで、「あなたの抱える問題はホニャララです」と言った後、「その原因はコレコレにあります」と指摘するのがこのパートです。

いかにもセールスっぽくならないプレゼン

では、次。P-COATの三つ目はO。オプションのオーです。何かというと、先ほどの原因を解決するためのオプション、つまり様々な打ち手の選択肢を並べるんです。

ちょっとこれ、実際にやってみますね。たとえば、当社の営業。ウチの会社は人材育成のための研修を提供していますが、その法人向けの営業の場面で考えてみましょう。まず、プロブレムから。ここから、プレゼンモードに入りますね。「御社は、成長業界にいながら、売上の停滞という問題に直面しています」。次が、クリティカル、原因ですね。「その原因は、営業マンに若年層が多く、スキルが十分でないためと考えます」。次、オプションいきますね。

「これを解決する方法は、様々です。上司・先輩が同行してOJTもありますし、社内でロールプレイングもいいでしょう。あるいは、最近では動画視聴という手もあり得ます」。「しかし、効果という観点では、私たちは集合研修で一気に営業の基本を身に付けることをお勧めします。考えてみれば、OJTやロールプレイングはこれまでも実施されてきたのに効果が今イチなわけですし、動画視聴はどこまで頭に焼き付くかという点で疑問が残ります」

はい、では、元の解説モードに戻りますね。これが、オプションです。つまり、OJT、ロープレ、動画視聴という、聞き手のプロブレムを解決するためのオプションを並べるんです。

と言うと、疑問に思う方、いるかもしれません。え?それ、必要?って。結論としては、必要です。なぜかっていうと、このオプションがないと、いかにも営業くさいんです。実際にやってみますね。もう一度プレゼンモードに戻って、オプションなしでいきます。

「御社は、成長業界にいながら、売上の停滞という問題に直面しています。その原因は、営業マンに若年層が多く、スキルが十分でないためと考えます。これを解決するのが、私たちの研修です」

はい、じゃ元の解説モードに戻りました。もうね、いかにも売り込みにきたって感じじゃないですか。ウチのサービスを買って下さいって。聞き手も警戒しますよね、これでは。そうではなくて、様々なオプションを並べた中で、「それでもウチのサービスが一番ですよ」と言うことにより、説得力が増すんです。

論理で動かない相手を心理で動かす

では、P-COATに戻って、4番目の英単語、A、つまりアクションに行きましょう。これ、もう分かりやすいですね。お客様に、「こういうアクションをとって下さい」と提示するんです。つまり、「当社のサービスを導入して下さい」となります。

そして、P-COAT最後のTは、「トリガー」のTです。実は先ほどのA、アクションまででも十分なのですが、最後にダメ押し的に、聞き手の心理面を刺激して、「これを今やるべきだ」と思ってもらうための仕掛けです。トリガーってね、英語ではピストルの引き金のことです。それこそ、鉄砲玉が飛び出すようにやる気になってもらうセリフです。

はい、ということで、P-COATと言う順番にすれば説得力のあるプレゼンの構成ができることを紹介しました。ちなみにですけど、前回との関係性も紹介します。前回は、プレゼンのスライドにワンポイントイラストを入れないという話だったんですけれど、これはどちらかというと枝葉の話です。

一方で、今回のP-COATは幹です。ですから、プレゼン上手になりたかったら、P-COATをマスターしていただくのが先です。「イラストを使わないようにしよう、イラストを使わないようにしよう」と努力するよりも、「P-COATをマスターしたら、自然とイラストを使う必要がなくなっていた」というのがあるべき姿だと思います。

 

前ページ
プレゼンのワンポイントイラストは「逃げ」の証拠。意外に深いそのわけとはを読む
1DayMBAのページに戻る 次ページ
ビジネス書を読まない管理職は生き残れない。ちょっと意外な本の読み方を読む

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中