ビジネスパーソンにとって重要だが意外と見過ごされがちなのがライティング、すなわち文章作成の技術です。大げさな報告書でなくとも、メールやSNSの投稿などで日常的に使う技術ですが、会社で教えられたという人は少ないしょう。実際、送られてきたメールを読んで「何を言っているか分からない。もっとわかりやすく書いてくれないか…」という経験は誰にでもあるものです。

では、どうやってライティングのスキルを上げるか?お勧めが下記の4つです。第1は、本多勝一氏の著書、「日本語の作文技術」を読むこと。40年以上にわたって読み継がれるベストセラーにしてロングセラーで、文章書きの必読書と言うべきものです。第2は、良い文章/悪い文章を研究することです。良い文章の見本は、たとえば作家の故司馬遼太郎氏。それも、表面上をなぞるだけでなく、文章作成の背景にある命を削るような推敲方法まで目を配って研究すると参考になります。そして第3は、「型」に沿って書くこと。たとえばホームページであればPASoMANAの法則で、メールだったら結論→根拠という「型」です。そして第4が、英作文をすること。単純に日本語を英語に置き換えようと思ったらうまくいかないのは、そもそも「日本語ですら、何を言いたいのか分からなかった」から。これを乗り越えることで言いたいことを言葉にすることができるようになります。ただし、残念ながらライティングスキルは短期間では向上しないものです。一歩一歩着実に身に付ける必要があります。

ライティングスキルアップその1は「日本語の作文技術」

文書を書く能力は、見逃されがちですがビジネスパーソンにとって重要な能力です。だってそうじゃないですか。メールは毎日のように使うし、SNSだって投稿します。私なんかはそれに加えて、ホームページ、メルマガなど。

たとえば、セミナーや勉強会のホームページの文章を書くじゃないですか。面白いんですけど、文章一つで申込率が変わってくるんです。つまり、読み手の興味をかき立てて、申し込んでもらうにはいい文章が必要なわけです。

では、どうやって文章力を高めるか。まず基本中の基本ですが、「分かりやすい文章」をかけるようになりましょう。そのためのお勧めがこちら。日本語の作文技術。もうね、40年以上にわたるベストセラーですから、読んだことがある方も多いでしょう…っていうか、読んでいない人はモグリと言ってもいいですね。たとえば、文章の受けと係。「曖昧な日本の私」みたいな文章だと、「曖昧」は「日本」にかかるのか「私」にかかるのか分からないよね、という例、そしてその直し方がたくさん載っています。

ライティングスキルアップのその2は良文・悪文を読む

ではお次の文章上達法。これも当たり前なんですけれど、いい文章を読むことです。そして、できれば、悪い文章も読む。つまり、その比較から、いい文章とは何かと気づくわけです。いい文章のお手本は、いろいろありますね。たとえば私だったら、司馬遼太郎先生の文章は、もう、読んでいて心地いいですね。

まあ、「竜馬が行く」を除いて司馬遼太郎ファンなので、そのせいもあるんでしょうけれど。どのくらいファンかというと、大阪に司馬遼太郎記念館ってのがあるんですよ。大阪市内からだと、30分ぐらいかかるのかな。そこに行くぐらいあるいは、四国の松山に行ったときには、「坂の上の雲」の登場人物である秋山兄弟の生まれた家に行くぐらい。そのせいもあって、司馬遼太郎先生の文章は、もう、読みがながら頭にすっと入ってくる感じ。

ところが。実は私すごい誤解していて、司馬遼太郎先生クラスになると、さらさらっと書いて、ああいう文章になるんだろうなって思っていたんです。でも実際は、そうじゃない。サラサラどころか、ものすごい推敲をしています。それが、これ。司馬遼太郎記念館に行ったとき、買いました。「二十一世紀に生きる君たちへ」というもの。

これを見たとき私は、あぁ~って思いました。あの司馬遼太郎先生ですらここまで推敲するんだから、自分が文章を書くのに苦労してウンウン言っているのもしょうがないなって。いい意味で諦めがつきました。

で、さらに面白いというか、悲しい話があるんですけど、司馬遼太郎先生の文章は、最晩年は乱れるんですよ。「この国のかたち」っていうエッセイ集があって、それは亡くなる直前まで書かれていたんですが、最終刊のあたりはあれほど頭にすっと入ってきた司馬先生の文章が、「ん?」と読み返さないと分からなくなっていくんです。あぁ~、と思いますよね。あれだけの推敲をして、分かりやすい文章を生み出すのは、それこそ命を削るようなたいへんさがあったんだろうなって。

ということで、文章上達の方法論その2はいい文章を読む、そして悪い文章との違いから、こつを見つける、ということです。ちなみに、悪い文章に関しては、ここでは言わないでおきます。プロの作家でも分かりにくい文章の方、いますけどね。歴史物で有名なあの人とかね。こういうところで言っちゃうと炎上しそう。

ライティングスキルアップのその3は「型」を持つ

では、文章上達のコツその3は、「型」に沿って書くと言うことです。たとえば、ホームページ。いきなり書いてくださいって言われても、ええって感じじゃないですか。どこから手を付けたらいいか分からない。その場合の型は、PASoMANAの法則です。よくある英単語の頭文字をとったものですけど、PASoMANAの順番で書くだけで、説得力があって申し込んでもらえるようなホームページになります。

あるいは、メールだったら、件名を分かりやすいものに。本文は、まず結論、そしてその後に理由の説明。ときどき、結論を最後に書く人がいますけどね。あれ、困ります。いろいろ書いてあって、つきましては○日までに□□をお願いします、って書いてあっても、そこまで読みませんから。

ライティングスキルアップのその4は和文英訳

そして、最後の、意外な方法論が英作文です。日本語の文章を英語にしようというものです。これ、やってみると分かりますが、だんだんと「日本語で、何を言いたかったんだっけ?」となります。たとえば、ある翻訳の試験でこういうのがありました。「普通の人だったら、あんなことはしなかったはずだ。」

これをどのように英文に翻訳するかを考えますね。「普通の人だったら」って言うのは、Ifを使うのか?仮定法だから過去形にして?みたいに。そうすると、「日本語ですら言いたいことが固まってなかったのに、英語にできるわけないよな」というのが納得できて、じゃあ、日本語でも言いたいことを分かるように書こう、となります。

ということで、今日は「見過ごされがちだけど意外と重要、「ライティング」スキルを高める4メソッド」と題してライブ配信をお届けしました。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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