世界には様々な国がありますが、それぞれの国で国民性が異なるのは直感的にも感じるところがあるでしょう。これを理論としてまとめたのがヘールト・ホフステード先生です。具体的には、下記6つの軸の強弱でその国の文化を説明できると説きました。権力格差、個人主義、性別による役割の違い、不確実性の回避の度合い、長期志向、享楽的か。この「ホフステードの6次元」を解説します。

ホフステードの6次元で国民性をチェック

ホフステード先生はもともとオランダの方ですが、IBMを対象に研究されたそうです。つまり、同じIBM会社といえども各国のオフィスごとに雰囲気が違うことに興味を持たれたんでしょう。それをベースに6次元、つまり6つの判断軸を提唱されました。

一つ目が、権力格差(Power Distance)です。要するに、ペイペイの平社員と社長の間に、格差はあってしかるべきか、それとも格差はできるだけ少ないべきか、という考え方です。世界の100カ国ほどの中で、日本は49位。中くらいで、まぁ、そんな感じかな、と思います。ちなみに、私の持ってるデータはちょっと古いかもしれませんが、1位はマレーシアだそうです。

お次は、個人主義の度合い (Collectivism vs. Individualism)。日本は35位。ちょっと意外かもしれませんが、日本は世界的に見ると比較的個人主義な国だそうです。イメージとしては、「和を以て貴しとなす」ですから、集団に貢献するのが良いとされているし、「滅私奉公」的な印象があります。一方で、自分と関係ない人、つまり「村」の外の人には冷たいみたいなところがあります。実際、街中を歩いていても、大きな荷物でヒーフー言っていると、外国だと「手伝おうか?」みたいに声をかけてくれる人います。ところが日本ではまず持っていないですからね。個人主義の表れなのかもしれません。ね。ちなみに、この分野で1位はアメリカ。これはもう、分かります。ただ、アメリカ人も街中では親切な人が多い印象ですから、ちょっと先の例は適切ではないのかもしれません。

ホフステード先生のもともとの定義をみると、集団主義は「職務より人間関係を重視」となっています。うん。これ、日本の場合には、そんなことはないでしょう。「大義滅親」なんて言葉もあるぐらいですから、職務のためには人間関係は抑えられる傾向。これが、どっちかというと個人主義と言うことなんでしょうか。

ホフステードの説く性別による役割の違い

では3番目の軸。性別による役割の違い。これ、翻訳が難しくて、男性性と女性性の違い、と言う方が適切かもしれません。元の英単語はfemininity (フェミニニティ)とmasculinity(マスキュリニティ)なので。これは、日本は何と2位。日本にのいて女性の社会進出が進んでいないのもうなづけます。

これも、もともとのホフステード先生の定義をみると、たとえば「仕事より家庭」は女性性と捉えられて、「家庭より仕事」は男性性になるそうです。まぁ、そうなると日本は世界有数の男性性が強い国となりますよね。一方で、「良い上司」とはどんなものかを考えると、女性性が強い国では「関係構築力があり、意見をまとめることに長けている」。男性性が強い国では「決定力があり、アサーティブ」と定義されています。これはちょっと、違和感ですね。自分で買って木決めるタイプの上司というのは、日本ではあまり歓迎されないでしょうから。そうすると、最初にも言ったんですが、「性別による役割の違い」という方がピンとくる気がしますね。日本では、「男らしく」、「女らしく」と言うことが言われていて、そういう刷り込みがなされるので。

4番目の軸は、「不確実性の回避の度合い」です(Uncertainty Avoidance)。日本は11位で、やっぱり高いですね。リスクをとるのを避けるというのは分かります。ちなみに1位はギリシャだそうで、そうなんですかね。そう言われてみれば、昔欧州債務危機というのがあって、その当時ギリシャは財政破綻に瀕していました。なんでも、ギリシャって公務員が多いらしいんですよね。その給与の支払い、おそらくは、年金なんかの支払いがかさんで、国家財政を圧迫していた気がします。この、公務員が多いというところも、不確実性回避と関係あるんでしょうか。

一方で、日本の場合、公務員の数は国際的にみても多くはないそうです。OECD諸国の中でみると、最下位ぐらいに公務員の数自体は少ないそうです。となると、単純に公務員の数の多さと、このホフステード先生の「不確実性回避」の軸は関連付けない方が良さそうですね。

長期志向の国の面白さ

では、5番目の軸。長期志向か短期志向か、です (short vs long-term orientation)。日本は3位。つまり、長期志向の国です。1位は韓国、2位は台湾、4位は中国ですから、東アジアの国が並んでいます。これも、ホフステード先生の定義をみると面白いですね。短期志向の国においては「唯一絶対の真理」がある傾向にあるんですって。一方で長期志向的な国では「いくつもの真理」があると。宗教にしても、日本では一神教ってなじまない気がしていて、これも長期志向の表れなのかもしれません。

もちろん、お隣の韓国では一神教のキリスト教が盛んであるという話はありますが、アレはなんだか、世俗的な付き合い上、キリスト教を信じていると便利だから、みたいな説があるみたいですしね。中国も、宗教事情はどうなんだろう?昔ながらの儒教や道教?そうなると、あまり一神教的な臭いは感じませんね。

では、最後の6番目は享楽的か禁欲的か (Indulgence vs. Restrain)。つまり、「パリピ度合い」ですね。日本は51位なので、世界の中位。上位には、ベネズエラ、メキシコ、プエルトリコと中南米の国が並んで、なんとなくイメージが湧きます。ちなみに今話題になっているウクライナは90位で。ほぼ最下位。なんとなく、テレビの画面からも真面目なイメージが伝わってくるのは気のせいでしょうか。

もちろんホフステード先生が全て正しいと言うつもりはありません。いろいろな批判もあるし、あるいは別の軸を提唱している経営学者もいます。有名なところでは、エリン・メイヤー先生のカルチャーマップとか。ただ、こういう風にひとつの判断軸で世界の各国を横並びで比較するというアプローチはホフステード先生がはじめたはずです。その観点において、とても参考になります。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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