最近流行のメタバース、研修やセミナーなどの教育目的にも使えるという論調がありますが、結論としては「ナシ」と考えます。なぜならば、ゴーグルを付けるのが煩雑だから。実際にハイテク業界の展示会、CEATEC (シーテック)での最先端の技術を踏まえ考察します。

ハイテク展示会CEATEC

まず、CEATEC。幕張で開催されたハイテク展示会です。ちなみに、幕張の会場って大きい方と小さい方があるのってご存じでしょうか?小さい方は、海浜幕張駅からちょっと近いところにある、ホール9番ってやつですね。これ、私は先週HR Expoってのに行ってきました。今回のCEATECは大きい方ですから、もう莫大な広さにたくさんの出展者が出ているわけです。

私の目的は、研修などの人材育成に使えるテクノロジーはないか、というものでした。いや、もちろんちょっと違うのは分かってます。CEATECはもっと産業よりです。いろんな部品メーカーとかも出展してたし、eインク、つまり電子ペーパーの技術なんかもありました。

ただ、そこにはヒントがあるかもしれないじゃないですか?ふだんの情報収集で、テクノロジーを研修にどう使うかはある程度見えているわけで、今までない情報があるかと思ってお邪魔したわけです。

研修にメタバースは「ナシ」

そのひとつがメタバース。バーチャル空間にアバターという自分の分身を登場させて、そこで他の人と交流できる、というものですね。CEATECの中にメタバースExpoと言うコーナーが特設されていて、そこでいろいろ見れました。

ただ、結論としては「ナシ」です。メタバースを研修に使うというのは、現実的ではありません。

あ、ちなみにこれ、あえて言い切っています。以前このライブ配信で取り上げた、パナソニックさんの新サービス、yohanaのときもそうですけど、あえて言い切る、ポジションを取ることによってやりたいのは、自分自身の商売人としてカンを研ぎ澄ますことなんです。

恥ずかしながら、私、このカンが鋭くなくて、ある商品が売れるか売れないかの予測、大外しなんです。たとえばウーバーイーツとか、ここまで流行ると予想できませんでした。だからこういう風に、あるサービスがアリかナシかを明確に考えて、それが後日あたったかあたらないかを検証したいんです。それによって自身の中に判断軸、つまりスキーマを構築したいんです。

で、メタバースに戻りますけど、ナシの理由は、めんどくさいから。だって、あのゴーグルをかけるわけでしょ?もちろんそれを上回るメリットがあればいいんですけど、Zoomで研修を行うのと本質的な差はないですからね。

もちろん、多少はメリットあります。研修に参加している他の受講者がどういう反応をしているかを見れる、みたいな。でも、そのメリットってごくごくわずか。ゴーグルによる面倒くささを解消するものではありません。

どんどん進化するメタバース用ゴーグル

ちなみに、ゴーグルもどんどん進化はしているみたいですけどね。それも2方向に分かれているって私は理解していて、高機能化と簡素化です。高機能で言うと、メタ、つまりフェイスブックの新しいゴーグルは20万円を超える値段で発売されました。

一方で、簡素化は、とくに軽量化が進んでいる印象です。250グラムぐらいのもあるそうで、そうなるとスマホより軽い、みたいな感じです。

ちなみに、簡素化の行き着く先がこれです。これ実は、アメリカの展示会、ATDで見つけてきたものです。これをかけて、スマホ上のVR動画を見るというのが、アメリカではもう実用化されているみたいですね。

で、元に戻りますけど、そうは言っても研修にゴーグルを付けて参加するのは、ちょっとキツいよな、と。もう、これだけでナシの理由になります。

産業用が面白いメタバース

ちなみに私は、メタバースそのものを否定しているわけではありません。利用法によっては、ものすごく便利だと思います。たとえば、先日日経に掲載されていた記事で、川崎重工さんが、新たなサービスとして、現実世界にある工場をメタバース上にコピーするというのがありました。

これなんか、面白いですね。現場では困難な実証実験とか、ロボットの不具合の検知とかをメタバース上でできるわけです。しかも、最近IoTで、リアルな工場にはモニターが設置されているじゃないですか。そうすると、まさに今の工場の稼働状況がメタバース上で分かる、なんてなったらすごく役立つと思います。

こういうのは、大賛成。そう言えば、さっきご覧いただいた簡素化されたゴーグル、これでどんな動画を見るかというのが、お医者さんの手術とか、自動車整備工場での作業風景とからしいです。

結局、リアリティは必要だけど、その現場に入ることが難しい、そういうものがメタバースにはマッチすると思うんですよね。となると、やっぱり研修とメタバースは相性が悪いだろうなって思うんです。

ちなみに、これメタバースに限らず、新たなテクノロジーが出てきたときはそうなんですが、ついつい民生用、つまりB2Cでどう使えるか、みたいな話が目につくじゃないですか。

でも、実際のところはB2Bに活かす、って考えた方が使い道は広がる気がしますね。今日話した話題で言えば、研修やセミナーじゃなくて、工場のコピーを作る、みたいなね。

B2Bを狙っている?ソニーのEV

そう言えばCEATECに戻りますけれど、今回の出展の中で注目を集めたもうひとつが、ソニーのブースだったんです。というのは、最近発表された、本田さんと共同でEV、電気自動車に参入するって話が合って、コンセプトカーが出展されていました。

わたしなんかもついつい、「今さら?テスラと比べるとずいぶん周回遅れじゃない?」なんて思っちゃったんですけど、ねらいは民生用ではなくてB2Bなのかもしれないですね。

たとえば宅配便などの配達用の設備を、全て自動運転にする、なんてなると、ソニーさんのこれまでの知見がいきそう。ソニーさんはカーナビのビジネスも持ってるぐらいですからね。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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