将来を予測するのは難しいものですが、実は米国で研究された「超予測」という方法論を使えば、思い込みを避け精度高く考えることが可能なのだそうです。そのポイントは、過去を振り返ること。たとえば、たとえば、昨今のウクライナ情勢に関しても、「プーチンが…」、「ゼレンスキー大統領は…」という個別の事象の前に、「過去100年間振り返ると、戦争は何ヶ月続くのか」を目安にする考え方です。この方法論を使って考えると、終結までには2年かかると考えました。その理由を解説します。

過去のデータから未来を超予測

ウクライナの今後、とても気になります。個人的には、母校ロンドン・ビジネススクールで仲良くしていたお友達のマルタさんという女性がいるのですが、彼女はウクライナ出身だったので、テレビの映像を見ていると胸が痛みます。しかも、マルタさんは既婚者だったのですが、旦那さんはロシア人。当時はぜんぜん違和感ありませんでした。もともとがウクライナもソ連の一部だったわけで。

でも、今こんな状況になると、そういう人間関係もたいへんなんだろうな、と思うわけです。いったいいつまで続くんだろう、とやきもきして。私の読みでは、この情勢、かなり続くと思います。直感的には2年ぐらい。だから、2024年2月ぐらいには解決の道筋が見えるんじゃないかなって。

え~、そうなの?って思った方もいると思いますが、実はまったくの当てずっぽうではないんです。というのは、この手の世の中の変わり目を推測するとき、精度高く当てる方法があるんですって。それが「超予測」と呼ばれていますが、過去のデータを参考にすることです。

つまり、ウクライナ情勢にしても、プーチンの野心が、ゼレンスキー大統領による国際社会へのアピールが…と個別の話から見始めるんじゃないんです。むしろ、過去のデータ。別に、「歴史は繰り返す」みたいな詩的な、ポエムではなく、データです。

アメリカで確立された未来の予測法

過去100年間で大きな戦争は33回あったそうです。そして、平均的な継続期間は32ヶ月間。ここがスタートポイント。ここに、今回の個別の事象を当てはめるわけです。私の読みとしては、国際的な経済制裁によってロシアの弱体化が早く進むだろうと考えています。

しかも、さっきのデータでは、平均継続期間が32ヶ月でした。これ、平均って微妙で、たとえばベトナム戦争なんか15年とか20年間続いたって話もあるみたいですからね。そうすると、240ヶ月、つまり、ベトナム戦争がかなり平均値を引き上げている可能性があります。こういう場合は平均よりも中央値をとった方が妥当じゃないかって気はしますね。

ただ、いずれにしても、このように過去のデータから始める方が精度が上がるんですって。

…と聞くと、ホント?って思う方もいるかもしれませんが、ホントです。アメリカの公的な取り組みでIARPAってあるんですけど、これはIntelligence Advanced Research Projects Activity。その中の一環で、予測トーナメントって言うのがあるんですって。そこで、圧倒的な成果を上げているのが、先ほどの過去から学ぶアプローチだそうです

実は、このアプローチは本にまとまっていて、それが『超予測力——不確実な時代の先を読む10カ条』というものです。この本、すごく面白いんで、ご興味がある方はチェックしてみて下さい。それこそ、予測トーナメントで好成績を上げている人、「超予測者」ですね。英語ではSuper forecasterって言っていますが、そんな人の特徴も述べられていて、なるほどなぁ、と思います。

超予測者の見解は?

そして、ここまで来ると、さらなるアイデアが思いつきますね。予測に関して。いやね、自分で予測する必要はなくて、超予測者と認定された人はどう思っているかをチェックすればいいんじゃないの?って

実は先ほどの本の著者、テトロック先生っていうんですが、ウェブサイトを運営しています。そこに、「超予測者たちはこう言っているよ」というのを掲載しているんです。

たとえば、ウクライナ情勢。こんな予測があります。「プーチンは、2023年1月までに大統領の座を降りるか」。はい、超予測者たちは、この質問に対してどう答えているでしょうか?

答は、6%だそうです。つまり、プーチンが今年中に大統領の座を降りる確率は6%。なんだか、日本のメディアでは、健康不安も含めて「プーチン、そろそろ危ないんじゃないか?」っていう論調がありますが、超予測者たちは否定的ですね。少なくとも今年中には何も起こらなそう。

そうすると、最初の方に私が立てた、ウクライナ情勢は2年ぐらい続く、と言う見通しも、わりといい線いってるんじゃないかな、難敵がしますね。

もっとも、本当の超予測者たちは、けっこう謙虚な性格の人が多いそうですけどね。つまり、自分が間違っていると思ったら、その考えに固執することなく柔軟に変えていける人たちだそうです。その意味では、私も自分の予測力を高めるためにも、柔軟でありたいと思っています。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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