企業戦略の重要性は言うまでもないでしょう。ビジネスを取り巻く環境変化が激しい時代だからこそ明確な戦略を打ち立てる必要性があります。加えてエンゲージメントが低くなってることに対して企業の戦略を明確に示す、あるいは浸透させるとエンゲージメントが高まるということが言われています。

ではどうやって戦略を立てるのか。実は以前のライブ配信でもエフェクチュエーションというテーマで戦略立案の方法論はお話ししました。ただ、エフェクチュエーションというのは実は裏です。裏っていうのは王道的な戦略立案のアプローチではないです。なので今回は王道的な戦略立案のアプローチであるクロスSWOT分析を紹介いたします。

並列型フレームワークと関連型フレームワーク

まずはシンプルなSWOT分析。これはご存知の方も多いと思いますけれども会社の外部、内部的に分けてみて、それぞれの良いこと悪いことをマス目上で考えてみるものですね。内部の良い事がストレングス (strength)つまり強み。内部の悪いことがウィークネス (weakness)、つまり弱み。外部のいいことは機会、オポチュニティー(opportunity)。外部の悪いことはスレット(threat)、脅威です。

このように内部資源、外部環境を整理しようというのがSWOT分析。ところが実は、私はこの分析が嫌いです。なぜかと言うと、4つのものがわかるのはいいんですけれども、それらの関連性がよくわからないんですね。ストレングス、ウィークネス、オポチュニティー、スレットがバラバラと存在しているだけ。

実はこのようにそれぞれの要素の関連性がよくわからないフレームワーク というのは他にもあります。 例えばマーケティングの4 P 。 プロダクト(product)、プライス(price)、プロモーション(promotion)、プレイス(place)。マーケティングの実行段階におけるフレームワークですけれども、それぞれの要素間の関係性ってのは、あまり考えられていません。

逆に同じマーケティングのフレームワークの中でもよく関連性が考えられているのが3Cです。つまりカスタマー(customer)を奪い合う競合と我が社。英単語で言うとカスタマーを奪い合うコンペティター(competitor)とマイカンパニー(company)の関係性がわかりやすいので。私はこの方が好きです。整理してみると4 P は 並列型のフレームワークです。一方で3Cは関連型のフレームワークであると言えると思います。

組み合わせで戦略オプションを考える

そしてSWOTに戻りますけれども、SWOT自体は実は並列型のフレームワークです。先ほどのストレングス、ウィークネス、オポチュニティー、スレットこれの関係性がわかるわけではないです。そうすると私あんまり好きではなかったし、戦略立案なんかに使えるわけはないっていうふうに考えていました。

でもクロスSWOTの登場です。 SWOTの組み合わせですつまり外部の機会に対して内部の強みをどうぶつけるか。あるいは外部の機会を取り逃さないために内部の弱みをどう改善するか。同様に外部の脅威に対して内部の強みでどう対応するか。外部の脅威に対して内部の弱みが悪く働かないように何を対処しておくべきか。そんな風な使い方ができるようになると先ほどのフレームワークの二つのタイプで言うと関連型のフレームワークになって極めて使い勝手ことになります。

ちなみに戦略立案という観点でいうとクロスSWOTは戦略オプションを洗い出す、つまりできるだけたくさん検討するというために使うものです。実際の戦略においては洗い出した戦略オプションの中から優先順位をつけて、どれをやっていくべきかというのを考える必要があります。

そして当然のことながらその後には戦略戦術に落とし込んで実行プランまで立てるって事になります。けれどもその第一段階としてクロス分析は極めて有効であるということになります。

クロスSWOT4象限のネーミング

クロスSWOTは先ほど言ったように4象限があるわけですけれども、私は分かりやすいようにそれぞれの表現に名前をつけました。具体的には外部の脅威に対して内部の強みをぶつけてうまくいかせるエリアのこと順風満帆と呼んでいます。イメージとしては帆船ですねまさに追い風を受けて帆を膨らませて前にスムーズに進んでいくというイメージです。同じような例えを使って帆船で言うと、外部の強みに対して内部の弱みが交わり取り逃さないようにしようというところは、追風展帆という風に言っています。展帆は帆を張るという漢字ですね。まさに追い風をとり逃さないということです。

そして次は外部の脅威に対して内部の強みで立ち向かおうというエリア。こちらは逆風上等と呼んでいます 。先ほどの帆船の例えで言うと向かい風、逆風ですね。でも何とかやりようによってはその向かい風ですらうまく活かして船を進めることができるのではないかという考え方です。

そして最後の外部の脅威に対して内部の弱みが当たると最悪の事態になってしまうというエリア。これは沈没回避に呼んでいます。こんなふうに名前を付けるだけで分かりやすくなりますし、アイデアが広がりそうですよね。追風展帆?たしかに追い風が吹いていて、他者はうまくやっているな。じゃあ、ウチは…なんて考えが広がります。

ぜひ戦略立案の際には使って下さい。

 

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この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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