部下の育成においては、こっちの部下は順調に成長しているのに、そっちの部下はいつまでたっても変わらない、と言うことが起こりがち。これを乗り越えるのが個人ごとにある学び方の違い、学習スタイルを理解することです。1970年代にデビッド・コルブ教授が提唱した学習スタイル(LSI: Learning Style Index)に沿って1.適応型、2.収束型、3.発散型、4.同化型の4つのタイプの解説と、それへの批判を紹介します。
コルブの学習スタイルの判断軸
では、コルブ先生の4つのスタイルを詳しく解説しましょう。まずは適応型から。具体的経験と能動的実験により学ぶ傾向にあり、計画を実行したり、新しいことに着手することが好きである。環境に対する適応力が強く、直感的な試行錯誤によって問題解決をする場合が多い。気楽に人と付き合うが、忍耐に欠け、でしゃばりと思われがちである。
ん?なんかよく分からないぞ?と感じた人も多かったでしょう。実は、それぞれのタイプの解説に行く前に、コルブ先生が考えた分類の軸を紹介した方が分かりやすいと思います。まず縦軸には、具体と抽象です。具体的にやったことから学びを得るのが得意なのか、抽象的に考えることによって学びを身に付けるのかの違いですね。そして横軸は、能動的と熟考的です。積極的にやってみるのか、内省するのかの違いですね。そして先ほどの適応型は、ここ。つまり、具体的と能動的の二つの組み合わせなのです。何かやってみて学ぶ、と言うことで、ちょっと言い方は悪いですけど、中小企業の社長的な、勢いがある人です。それを踏まえて、先ほどの説明をもう一度読んでみます。
具体的経験と能動的実験により学ぶ傾向にあり、計画を実行したり、新しいことに着手することが好きである。環境に対する適応力が強く、直感的な試行錯誤によって問題解決をする場合が多い。気楽に人と付き合うが、忍耐に欠け、でしゃばりと思われがちである。今度は、なんとなくピンと来た方が多いのではないでしょうか。
コルブの学習スタイルにおける収束型
では、次。収束型です。抽象的概念、及び能動的実験により学ぶ傾向にある。問題解決、意思決定、アイデアの実践に優れ、感情表現は少なく、対人的問題よりも技術的問題に取り組むことを好む。軸で言うと、ここ。能動と抽象です。能動的にアクションを起こすんだけど、でも具体と言うよりは抽象的に考える。なんとなくイメージで言うと、エンジニアっぽい感じでしょうか。
は、次は、発散型。具体的経験と熟考的観察から学ぶ傾向にあり、想像力旺盛で、価値や意義について考えることが多い。状況を様々な角度から見、行動よりも観察により適応する。人との関わりを好み、感情を重視する。軸で言うと、具体と熟考です。具体的な経験を、様々な角度から見る感じ。イメージとしては、サザエさん。たとえばマスオさんの帰りが遅いときに、「仕事が伸びてるのかしら?いや、ひょっとしたら駅前でお父さんと会って飲み行ったかも?だとしたら夕食の準備は…?ねえ、お母さんどう思う」なんて、人とワイワイやりながら学んでいくタイプ。
では、最後の同化型。抽象的概念と熟考的観察を好み、帰納的に考え、理論的モデルを構築する傾向にある。人より抽象概念や理論に興味があり、実践的よりも理論的な考えを重視する。軸で言うと、抽象かつ熟考です。研究者タイプでしょう。と言うことでまとめてみると、具体と抽象、能動と熟考があって、中小企業のオヤジタイプ、エンジニアタイプ、サザエさんタイプ、そして研究者タイプ、となります。
コルブ以外の学習スタイルと批判
ちなみに、このような学習スタイル、コルブ先生だけでなく、世の中様々な人が唱えています。軸で言うと、論理的←→感覚的、独立的←→依存的、みたいな軸の取り方もあって、これはこれでピンときます。あるいは、これはNLPの分野で良く言われますが、VARKと言う4つのタイプ分け。Visual、つまり視覚優位、Audio、聴覚優位、Read、文字認識優位、Kinetic、感覚優位、なんて言われるのもあります。
ところが。ところがですよ。実はこの学習スタイルに対して、疑問が呈されています。とくに最近ですかね。2000年代に入ってから、検証がされているのです。たとえば、2014年にはロンドン大学のフランク・カフィールド教授が13の有名な学習スタイルについて検証を行ったそうです。結論としては、各学習スタイルに十分に科学的根拠があるわけではないと。ちょっとビックリですね。黒が白に変わった、みたいな感じで。ただ、個人的には学習スタイルってあるだろうなって思っています。感覚的にね。なので、あらたな研究によって「やっぱり学習スタイルはあった」ってなるんじゃないかって気がしますね。考えてみれば、コルブ先生が学習スタイルを提唱したのは1970年代ですからね。それがどんどん進化して、ときには批判を受けながらも、よりよいものにつながっていく、そんな過程に今いるんじゃないかと感じているところです。
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この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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