上司にとって、部下のモチベーションアップは難しいもの。これを解決する3つのアプローチをこの動画では紹介します。第1が欲求刺激アプローチ。これは、比較的多くの人が知っているでしょう。ところが、第2のコミュニケーションアプローチ、第3の仕事アプローチはあまり知られていません。様々なアプローチを使い分けて、部下の動機を高める方法論を紹介します。

部下のモチベーションアップには欲求刺激

では、本題。部下をお持ちの方ならば、そのモチベーションアップにいろいろと工夫されていると思います。ただ、私の感覚ですけれど、そのための手法をあまりご存じない方が多いかな、という印象です。一番分かりやすいのは、部下の欲求を刺激してやる気をかき立てる方法論。これ、多くの方が実践されていると思います。部下の心の中を考えながら、この人は何によって動かされるのかなって考える。

ただ、その際、「マズローの欲求段階説」みたいなユルいフレームワークを使っているとうまく行きませんね。だって考えてみて欲しいんですが、人間の欲求を5段階で説明できるわけないじゃないですか。もっと幅広いものですから。しかも、「自己実現の欲求」なんて、あまりにも漠然としていてどうやったらいいか分かりません。部下の中には、仕事はできるだけ楽してプライベートを充実させたい人もいます。じゃあ、自己実現のためにはプライベートで遊べるようにする?なんだかヘンな話になって、マズローの欲求段階説は実際の職場では使いにくいものです。

これを乗り越えるのが、エドワーズさんが考えたフレームワーク。これは、以前のライブ配信でお届けしました。そして、ここからが大事なんですけれど、今日は部下の欲求を刺激する以外のアプローチもぜひ知っていただきたいんです。

部下のモチベーションアップのコミュニケーション法

実は大きく分けて、他にも二つのアプローチがあります。まず一つ目。それがコミュニケーション・アプローチ。実はこれ、以前このライブ配信に出演いただいた山本一羊先生の専門分野です。詳しくはそちらの動画をご覧いただきたいんですが、面白いです。「自己動機づけ発言」、もしくはチェンジトークって言うんですが、「自分はデキる」、「デキたらこんな良い事がある」なんて発言を部下から引き出すことでやる気が高まるんですって。

しかも、この手法の素晴らしいのは、カウンセリングの分野で検証されていること。どっかの誰かが勝手に提唱しているわけではなく、ちゃんと理論的な背景とエビデンスがあるのが素晴らしいと思います。ただ、このチェンジトークを引き出すためには、上司の方に「問いかけ」の技術が必要です。理論を学んで練習を積み重ねる必要があります。

そして、部下のモチベーションアップのためのコミュニケーション・アプローチという話に戻ると、実は単に会話量を増やすというのもモチベーションアップに効きます。なぜかというと、上司と部下の信頼関係って言うのは、会話量が増えると良くなるから。もちろん質、つまり会話の内容もあるんでしょうが、実はそれよりも量だそうです。極論すれば、たわいもないことでもコミュニケーションをとれば、それだけで信頼感アップ、モチベーションアップです。

マネジメントに慣れた人には当たり前ですけどね。だから朝の挨拶から始まって、どうでもいいようなことも会話を交わすんだよ、って。でも、管理職になりたての方はピンとこないかもしれないので、ぜひこのコミュニケーションアプローチを実践してみてください。

モチベーションアップの進捗の法則

では、モチベーションアップのための第3のアプローチも紹介します。それが、仕事アプローチです。まずは、仕事の与え方。一部の作業を切り出して依頼するのではなく、全体像を見せる、様々なスキルが必要とされる難易度の高い仕事に取り組ませる、などによってもやる気がかき立てられます。

これ、理論的背景としては「職務特性理論」というのがあります。Job Characteristics Modelと言って、ハックマン先生とオルダム先生が提唱されたものですね。そして仕事アプローチでもうひとつ重要なのが「進捗の法則」です。これ、何かというと、進捗ですから、仕事がうまく進む、つまり進捗感を感じられると部下のモチベーションがアップするという話です。要するに、仕事が進む→「私はやればできる人間だ」と自己効力感が高まる→内発的動機アップ。外発的動機(馬ニンジン)ではないモチベーションアップです。

ということは?ということは、上司は部下が進捗を感じられるように工夫をするべきと言うことなんです。たとえば、仕事を割り振るとき、アウトプット(最終成果物)だけを示すのではなく、個々の作業にブレークダウン(分解)て、要所要所にチェックポイントを設けてあげる。そして、進捗確認をするわけです。「お、ここまでデキているね」って。これだけで部下のやる気が高まります。何も工夫しないと、進捗を感じられない部下もいるわけじゃないですか。なので、そこは上司がサポートしてあげて、進捗感を得られるようにしてあげましょう、と言うことです。

実際の仕事の現場では、部下に任せた仕事の進捗管理もできて一石二鳥です。なお、念のためですが、本当の進捗管理のときとモチベーションアップを狙うときでは、言葉のかけ方が違います。モチベーションアップのためには、「なぜ進捗が遅れているのか」、「遅れを取り戻すためにはどうしたらいいのか」は話す必要がありません。むしろ進捗があったことを部下に認識せしめるのが大事です。

ちなみにこの進捗の法則を提唱しているのが、テレサ・アマビール先生です。HBSの先生だったかな?しっかりとした研究に裏打ちされていますので、こちらもぜひ管理職になった方には実践いただきたいですね。と言うことで、部下のモチベーションアップのための3つのアプローチを紹介しました。第1が欲求刺激アプローチ、第2がコミュニケーションアプローチ、第3が仕事アプローチです。ぜひ、様々なアプローチを使い分けて、部下の動機を高めるきっかけにしていただければ幸いです。

 

前ページ
MBAの経営者育成手法、ケースメソッド。欧米と日本ではあまりにも違うその扱われ方とはを読む
1DayMBAのページに戻る 次ページ
学び方には個人差があった。デビッド・コルブ教授の提唱する学習スタイルとはを読む

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

ブログには書けない「ぶっちゃけの話」はメールマガジンで配信中