昨日のメルマガで紹介したキリンホールディングスさんのAI面接官に反響をいただいたので、詳しく解説します。
キリンのAI面接官は満足度95%
キリンホールディングスさんでは、新卒採用でAI面接官が登場するそうです(まだ試験的)。エントリーシートの読み込みから第1次面接まで行うとのことで、合否判定まではしないものの、多面的に評価できるのがメリットとのこと。
審査のフレームワークには社会人基礎力をベースにした30項目です。おそらくはエントリーシートの文章やAI面接官との会話をデータとして取り込み、どのような強み(成果行動=コンピテンシー)を発揮しているかを探るというアプローチでしょう。
要するに、コンピテンシー・インタビューを人間に代わってAIが行ってくれると理解しました。確かに、30分ほどの面接では人間だと5-6項目しかコンピテンシーを発見できません。それがAI面接官は30項目チェックできるので、学生の強みを見つけやすくなりますね。
なお、そもそもですが、今どき面接はコンピテンシー・インタビューです。昔ながらの「志望動機は?」なんて効くだけ無駄。だって、いくらでも話を作れちゃうじゃないですか。しかも、どの学生も決まり切ったように、「社会的貢献をされている御社のビジネスモデルに感銘を受けました」みたいな答えをしてきて、採用者の選別にはなりません。
むしろ聞くべきは実績です。学生時代にどのような経験をしたかを深掘りして、そのエピソードから受験者の持つ行動特性(コンピテンシー)を探る方が、よっぽど精度高く選抜できます。もちろん、学生の場合は難しさがあって、「成果につながるエピソード」を語ってもらうのには工夫がいりますが、それでも新卒においても有効であると私は考えています。
Win-Winの人工知能面接官
で、キリンさんの人工知能面接官。既にテスト的に運用して、1,000人以上の面接のデータが蓄積されているとのことですので、それなりの精度は出るような気がします。しかも、面白いのは受験者(面接される側)の満足度が95%という点。今のような売り手市場においては、その後の合否にかかわらず面接において企業側も好印象を与える必要があります。昔は「圧迫面接」といって、わざと厳しい質問をして、プレッシャーかにおいて受験者がどのような反応するかを観察する手法がありました。でも、今どきそれはダメ。パワハラになっちゃいますからね。
ただ、好印象を与えようといっても、人間の面接官だと疲れてきたり、同じような回答を聞き飽きるとぶっきらぼうな受け答えになってしまいます。でもAIならばそこは無限に対応可能。面接官の負担軽減につながって、企業にも受験者にも面接官にもハッピーだと感じます。
AI面接官は長期でデータ蓄積がポイント
一方で気になったのが、面接の精度。合否は出さないとのことですが、そうは言っても二次試験に進むかどうかの目安にはなるはず。ちゃんと企業の成果につなげる強みを持った人材を選別できるか気になるところです。
特にキリンさんのように、本業のビール・アルコールが国内市場は頭打ちを迎えている業界では、これから新しいことへの取り組みが企業業績を大きく左右すると考えます。つまりは、既存社員が持っていないコンピテンシーを持つ学生を発掘する必要があるわけで、その評価が本当にうまくいくか興味津々です。
あるいは、もう少し長期的な視点かもしれませんけれど。2025年度の採用がどうこうではなく、AI面接で採用した人材が入社後5年、10年経ったとき、どのようなパフォーマンスをあげているのかをしっかりと検証するとのもくろみなのかもしれません。であれば、始めるのは早いに越したことはありません。それだけデータの蓄積が進むわけですからね。この観点で、キリンさんの取り組みは素晴らしいと感じました。
この記事を書いた人
木田知廣
MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。
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