会社に対するエンゲージメント<貢献意識>が世界最低クラスの日本人社員。これを改善するために、まずは現状調査と言うことで、エンゲージメント・サーベイの導入を考えている人もいるでしょう。しかし、ちょっと待って。実は安易なエンゲージメント・サーベイ導入には、「ガッカリ感の罠」があります。これを避けるための逆算法、つまり、最初からエンゲージメントアップのための打ち手の仮説を持って、それを検証するためにサーベイを利用するという方法を、事例とともに紹介します。

利用が広がるエンゲージメント・サーベイ

エンゲージメント・サーベイを導入したい。そんな風に思われたことはないでしょうか?いわば、社員満足度調査のためのアンケートですね。最近はネットでできるので手軽だし、集計も楽ですし、正直それほどお値段も高くありません。

というか、まずそもそもとして、今の時代エンゲージメント、つまり貢献意識が重要です。それなのに、実は日本人は世界的に見ても最低レベルのエンゲージメントしか会社に対して持っていない。これはまずいよね、というのはこれまで動画で解説してきました。だったら、このエンゲージメントを改善しなきゃ。そのためにも現状の把握。じゃあ、エンゲージメント・サーベイだ…っていうのは極めてロジカルなんだけど、ちょっと待って。

エンゲージメント・サーベイ、「ガッカリ感の罠」

実は、エンゲージメント・サーベイを導入することにはリスクがあるんです。それが、「ガッカリ感の罠」。何言っているかというと、エンゲージメント・サーベイをやるじゃないですか?ネット上でアンケート形式で答えるわけです。「あなたは自分がやりたいと思っている仕事ができていると思いますか?」とか、「あなたは職場の人間関係が良好だったと思いますか?」とか。

そうすると、期待値が高まるんです。つまりアンケートに答えた社員はこう思うわけです。「こういう質問をしてくるってことは、会社側も何か手を打つんだろうな」って。まあ、当たり前ですけどね。

ところが、問題はその後。エンゲージメント・サーベイをやりっぱなし。結果がどうなったかの報告もないし、ましてや何か改善のためのアクションをとるわけでもない。そうすると、高まった期待値が、逆に下がる。それも、元に戻るどころか、もっと低下してしまうんです。「何もやらないんだったら、最初から聞くなよ」って、まあ普通思いますよね。これが「ガッカリ感の罠」です。なんだか皮肉ですけどね。エンゲージメントを高めたいという想いがあるからこそ始めたのに、かえってガッカリ感を煽る結果になってしまって。

エンゲージメント・サーベイ導入の逆算法

では、これを避けるためにどうするか?それが、逆算です。つまり、エンゲージメント・サーベイをとった後に、どんなアクションをとるかを最初から考えておくんです。ダンドリとしてはこんな感じですね。仮にね、エンゲージメント・サーベイを導入する人事部の立場に立ちますけど、「エンゲージメントを改善するためには、課長クラスの戦略説明力を上げる必要があるな」って、仮説でいいから打ち手を構想するんです。

ちなみにここでいきなり「戦略説明力」って出てきましたけど、実は、自分の会社の戦略に対して自信が持てると、エンゲージメントは高まるんです。要するに、「全体としては間違った方向に進んでいないよね」という安心感でしょう。

ところが。日本の会社で、課長クラスの人材で自社の戦略をわかりやすく説明できる人は少数派です。だとしたら、研修などによって課長クラスの戦略理解力、そして戦略説明力を上げるというのは、実は極めて妥当な打ち手です。ただ、そうは言っても仮説は仮説。ご自身の直観的な判断だけでは、実施するのは難しいでしょう。そこで、エンゲージメント・サーベイを活用するんです。つまり、社員の目から見て、戦略の説明が十分されているかどうかを検証するんです。

質問項目としては、おそらくこんな形になるでしょうね。「会社の方針や目標、業務に関する必要な情報は、適宜伝達され、共有しやすい環境が整っていると思いますか?」。でアンケートをとる。そして、このスコアが低ければ、「やっぱりそうでしょ?」と会社の上層部を説得しやすくなるじゃないですか。

実際に、こういう形でエンゲージメント・サーベイを活用している企業があって、有名なところではメルカリ。3ヶ月に1回サーベイをやっているそうですが、最初に導入したとき、人事の方の仮説はほぼハズレていなかった、と言う結果が出たそうです。

ここまで来ると、「逆算」というのがピンときていただけたのではないでしょうか。エンゲージメント・サーベイをやりました、問題が分かりました、打ち手を考えます、社内で承認を得ます…ではないんです。後ろの方、エンゲージメントを高めるための打ち手、社内で承認を得るためにはどんなデータの裏付けが必要か、から考え始めるんです。

もちろん、最初の仮説がハズレることはあります。注意しなければいけないのは、人事の直感的な仮説に無理矢理誘導しないことです。だって、主体は社員なわけですから。あるいは、現場の、つまりラインのマネージャーこそが、エンゲージを日々感じて悩みながら仕事をしている人です。

そういう人たちのホンネを吸い上げなければ意味がないんです。そして、そのホンネを数値によって見える化するのは極めて重要です。測定できないものは管理できないわけですからね。

測定できないものは管理できない

ちなみに、ちょっと余談ですが、人間の身体の健康も同じだと私は思っています。ってエラそうに言った割には、気づいたのは最近ですけどね、私も。例の、化学物質過敏症ね。治療するためにビタミン剤を大量に飲んだじゃないですか。あれ以来気になっちゃって、自分の身体の中では何の栄養素が足りていないんだろうって。実際、「質的栄養失調」って言葉もあるんですってね。カロリー量じゃなくて、何かが足りないという観点で「質的」。だから、栄養素のチェックをすることにしました。最近は、尿検査みたいので、ミネラルとかが測定できるんですってね。今週の月曜日に申し込んだので、そろそろ結果が出るんじゃないかな。来たらまた報告します。

で、ここで言いたいのは、測定できないものは管理できないってこと。で、エンゲージメント・サーベイに戻って、社員がホンネで思っていることを測定しましょう、というのがその意義です。だから、誘導ではない。

ただ、そうは言っても実務的には、打ち手の候補をいくつか最初から持っておくんでしょうね。A案、B案、C案。どれを実行するかを決めるためにエンゲージメント・サーベイを利用するという判断でもいいと思います。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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