経営学で提唱される理論の中には、「ねつ造」もあります。たとえば、プレゼンの最近朝刊を解くというパワーポーズ。アメリカのうら若い女性研究者によって提唱され話題になったのですが、他の研究者による再現性が確認されず、「ねつ造」とされてしまいました。まるでそれは、STAP細胞をめぐる騒動のようなもの。他にもある様々なねつ造を紹介しつつ、それらにだまされないための方法論を紹介します。

ねつ造のパワーポーズ

一昔前のSTAP細胞の騒動っておぼえていますでしょうか?小保方さんという研究者の方が、STAP細胞という研究結果をねつ造したというもので、ずいぶん話題に、悪い意味でね、なりました。

実はこのような話、経営学の世界でもあるんです。ちょっとビックリですけどね。一番有名なのがパワーポーズ。ある研究者の方が、言い出したわけです。「みなさんね、プレゼンの時緊張するでしょ?でも、それを解消する方法があるんですよ。プレゼン前にパワーポーズって言うのをとってみて下さい。緊張しませんよ~」って。

そのパワーポーズというのがこんな感じです。腰に手を当てて、ちょっとこう、かっこよく決めるみたいな感じでしょうか。こうすると、エストロゲンという男性ホルモンが体内で出て、緊張感が亡くなるという話なんです。研究結果として発表しただけじゃなくて、TED、例のプレゼンイベントにも登壇して話題になりました。これは面白い発見だって。

ところが。ところが、他の研究者が同じような実験をしてみると、そのエストロゲンの血中濃度の上昇が見られなかったんです。それで、「再現性がないぞ。これはおかしいんじゃないか?」と悪い意味での話題になりました。最終的には、共同研究者の人もさじを投げて、「私はこの件についてはコメントしない」みたいに言い出したんです。まあ、勝負から降りたわけですね。もうこの時点で、パワーポーズはウソ、ねつ造だったって言う結論になりますよね。いかがでしょう?STAP細胞とよく似ているというのがお分かりいただけたのではないでしょうか。ちなみに、研究結果を発表したのが若い女性だったという観点でも、なんだか小保方さんを彷彿とさせますね。

ねつ造で儲ける人、キャリアを棒に振る人

その研究者の方、パワーポーズを提唱したときは、ハーバード・ビジネススクールの助教授だったんですけど、その後辞任されたみたいですね。これも不思議でね。せっかくのいいキャリアを棒に振って、いったい何をやりたかったんですかね。パワーポーズの研究よりも、むしろ研究者の心の闇の研究の方がよっぽどおもしろそうに感じてしまいます。

で、実はこのようなねつ造系、経営学の世界でもけっこうあるんです。もう一つ有名な例が、「エクセレント・カンパニー」。1982年にアメリカで刊行された本でベストセラーになりました。いわく、長年にわたって成長を続けている会社をエクセレントカンパニーと定義して、60社以上の会社を分析して、特徴をまとめたんです。たとえば、会社の価値観を明確に謳って、それに基づいて組織文化を構築することの重要性が指摘されたわけです。

一部、抜粋して読んでみます。「自社の価値体系を確立せよ。自社の経営理念を確立せよ。働く人の誰もが仕事に誇りを持つようにするために,なにをなしているかと自問せよ。10年、20年先になって振り返ってみるとき、満足感をもって思い出せることをしているかと自問せよ。」

おぉー、カッコいいなぁ。なるほどなぁと感じます。ところが。また例によって、これがねつ造。いや、ねつ造というか、後になって著者が言い出したわけです。「ごめんごめん、あのエクセレントカンパニーの分析、けっこう適当だったんだよ」って。

え?どういうこと?著者いわく、コンサルティング会社のサービスを売りたかったんで、話題になるような発表したかったんだって言い出すわけです。実際、その本、エクセレントカンパニーで取り上げられていた会社は、その後どんどんエクセレントじゃなかったことが分かって、業績も落ちていってしまうんですね。

これまた、ずいぶんいいかげんな話だなぁ、と私なんかは思います。まぁ、この本のおかげで組織文化に対する注目が集まって、この分野の研究が進んだっていう、怪我の功名って言うんですかね?副次的な効果はあったんですけどね。おかげで、1980年代は経営学では、「組織文化の10年」なんて言われています。

健全な批判意識<クリティカル思考>を持つ重要性

いずれにしても、このようなねつ造系、たくさんあるんで、経営学の理論は要注意です。新しい理論が提唱されたときには、ちゃんと裏をとって、その理論は研究に基づいているのか、そしてその研究はちゃんと再現性があるのかっていうのを確認しないと、あやまった話を人に広めてしまうので、危険ですね。

もっとも、経営学の難しいのは、理論が全てではないところですけどね。というのは、研究によって裏付けられていない、でも、会社の好業績を支えているというビジネス慣行、社内のしくみ、特殊なカルチャーっていうのはあるんです。

だから常に、「本質は何なんだ?」って問いかけなければいけないですね。ちなみに、私はツイッターで「MBAの心理学」というシリーズを配信していますが、できるだけ気をつけています。

この記事を書いた人

MBAの三冠王木田知廣

木田知廣

MBAで学び、MBAを創り、MBAで教えることから「MBAの三冠王」を自称するビジネス教育のプロフェッショナル。自身の教育手法を広めるべく、講師養成を手がけ、ビジネスだけでなくアロマ、手芸など様々な分野で講師を輩出する。

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